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[選手権]夏の屈辱経て「変わった」堅守・市立船橋、5度目の日本一へあと2勝

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[1.5 全国高校選手権準々決勝 矢板中央0-2市立船橋 駒沢]

 名門・市船、5度目の日本一まであと2勝―。第90回全国高校サッカー選手権は5日、準々決勝を行い、駒沢陸上競技場(東京)の第2試合では09年度4強の矢板中央(栃木)と全国優勝4回の市立船橋(千葉)が対戦。市立船橋がDF小出悠太(2年)とFW岩渕諒(3年)のゴールによって2-0で勝ち、準優勝した04年度以来7年ぶりとなる準決勝へ進出した。市立船橋は7日の準決勝で大分(大分)と激突する。

 市船は堅かった。3回戦で清水商(静岡)との名門対決を3-0で制した市立船橋は、矢板中央の“要注意人物”左SB吉澤功三郎(3年)対策としてDF渡辺健斗(2年)を3ボランチの右サイドに先発起用。運動量と守備力のある渡辺によって相手の突破口に蓋をすると前半20分、2年生CBの2試合連続ゴールで先制点を奪った。市立船橋は左FKのチャンスを得るとMF菅野将輝(3年)のクロスボールを小出が頭で合わせて2試合連続ゴール。キーマンのFW和泉竜司主将(3年)が相手MF田畑喜行(3年)の密着マークを受ける中、今大会でゴールを連発しているセットプレーから貴重な先制ゴールを挙げた。

 守備から攻撃への切り替えの速い矢板中央は前半を0-1で折り返すと、後半開始から怪我で先発を外れていたJ注目FW石井涼斗(3年)を投入。181cmのFW菊地夏輝主将(3年)と185cmの石井を前線に並べて空中戦に活路を見出そうとする。だが、市立船橋は小出と種岡岐将の2年生CBコンビと、ともに元CBの左SB鈴木潤と右SB米塚雅浩(ともに3年)のディフェンスラインが隙を見せない。市立船橋は攻撃面ではシンプルなロングボールを失う回数が多く相手を圧倒するまで至らなかったが、試合の流れを渡さない。右ひざの故障で先発出場が危ぶまれながらも、「本人の気持ちがブレなかった。『出るんだ』という気持ちを伝えてくれた」(朝岡隆蔵監督)と先発を直訴した岩渕が前線で身体を張り、和泉が相手のマークを振り払って決定的なシュートへ持ち込むなど、矢板中央が押し返してくることを許さなかった。

 そして計11本のCKなどでプレッシャーをかけた市立船橋は後半35分、菅野の左CKをファーサイドの岩渕が技ありヘッドでゴール左隅へねじ込んで2-0。矢板中央はロスタイムにFW坂本佑記とMF福澤邦人(ともに3年)が決定機を迎えたものの、市立船橋はU-18日本代表候補GK積田景介(3年)が至近距離からのシュートをストップするなど2試合連続完封で国立切符を勝ち取った。

 11年夏の全国高校総体に前回王者として臨んだ市立船橋は初戦で桐蔭学園(神奈川)に1-1からのPK戦の末に敗退。勢いに乗って優勝した桐蔭学園を無念の思いで見ていた。和泉は「桐蔭戦が終わった後、本当に悔しくて・・・・・・。あれが自分達の『変わった試合』。決定的なチャンスはあったけれど決めきることができなくて、運動量が落ちた後にボールを支配された。守備のところではインターハイに比べて全然よくなった」と振り返る。まだ相手を封じ込む力がなく、王座から陥落した無念の夏。ただそこから伝統の堅守は磨きぬかれた。和泉は「どこも攻撃力があるけれど、ゴール前で身体を張ってくれる。成長したと思うし、感謝している」と口にする。

 怪我の影響で3回戦からの出場で、最終ラインを引っ張る鈴木は「(2年生CB)2人は凄く成長している。初戦はミスもあって失点。自分が入ることで変えられるかどうかは分からなかったけれど、無失点でいけている。自分たちが点を取られなければ負けない。(2試合連続完封で)自信がついたと思うけれど、これが過信にならないようにしたい」。この日先発した和泉と鈴木、米塚、菅野、そしてMF杉山丈一郎の5選手ら現3年生は昨夏開催されたナイキカップで優勝し、イギリス遠征を経験。鈴木が「向こうの選手は日本の2倍、3倍くらい強く当たってくる。自分たちも学ぶことができた」という強さを肌で知ることができた。イギリスでの経験に比べれば、それを上回るチームはない。後輩たちとともに積み重ねてきたことを最後の冬にしっかりと活かしている。

 日本一奪還まであと2勝。10年全国高校総体での日本一を経験している和泉は「インハイで優勝したチームはゴール前で身体を張る部分が強かった。相手よりも強い気持ちを持つことも必要。今までやってきたことを出せばできる」と言い切った。02年度以来9年ぶりとなる日本一へ国立進出はまだ通過点。伝統の堅守が成長し、「強さ」を示している名門がその輝かしい歴史に新たな1ページを加える。
 
[写真]前半20分、市立船橋DF小出(右)が先制ゴール

(取材・文 吉田太郎)

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