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恩返しではなく、チャレンジ! G大阪から古巣へ12年ぶり復帰の山口「新たなチームで、という思いのほうが強い」

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 頼もしい男が帰ってきた。新体制会見に集まったサポーターから、最も熱い視線&拍手が注がれたのが、G大阪から12年ぶりに古巣復帰を果たしたDF山口智だった。ファンの質疑応答コーナーでは「お帰りなさい。期待しています」とエールを受けたCBだが、本人も想いに応える覚悟ができている。

「ジェフが苦しんでいる、J2でいいところまでいきながら最後、J1昇格を逃しているという現状を踏まえ、社長をはじめ、神戸さん、木山さんに熱心に誘っていただき、チャレンジしたいという思いがだんだん強くなった。J1に昇格するという、はっきりとした目標があるし、その先につながる土台というか、それを作る中で力を貸して欲しいと言われた。僕の中で、そこが一番大きかった」

 G大阪から完全移籍してきた理由についてファンから問われた。最初は「1時間以上かかる」と冗談ながらに言いながらも、山口がはっきりとした口調で説明した。市原ユース(現千葉U-18)出身で、1997年から2000年まで市原(現千葉)でプレー。その後、G大阪に移籍して11年間プレーした。J1屈指の強豪で、リーグ優勝、アジアチャンピオンズリーグ(ACL)制覇、クラブW杯3位、日本代表選出など輝かしい実績を残し、今年もACL出場権があるチームから、J1復帰を目指す古巣へ……。簡単な決断ではなかった。

「高校時代からお世話になっているクラブで、移籍してからも気になっていた。こういうタイミングで話をいただいたのは、すごく大きい。とにかくこの1年で結果を残すことだけしか考えていない。必死に1日1日大事にやる。グラウンドで表現して、言葉ではなくて、逆に何かを感じ取ってもらえるような1年にしたい。その先につながるような一年にしたい」

 当然、古巣への思いはあったが、今回の決断はよくある“恩返し”という単純なものではなかった。『やりがい』を重視して千葉を選んだ。「古巣に帰ったきたというよりは、本当に大きな決意を持って、チャレンジしに違うチームにきた意味あいのほうが大きい。古巣への意識というのは、そんなにないですね。当然、ないことはないけど、新たなチームでやる、という思いのほうが強い。古巣に帰って来たというのは、僕の中ではそんなにないです」

 G大阪は今年、10年間指揮を執った西野朗監督が退任し、新たに新監督を迎えた。チームは若返りを狙ってMF橋本英郎らを放出。山口に対しても年齢面の問題などがあり、一部報道などによると、減俸提示だった。また日本代表DF今野泰幸(F東京)の獲得報道もあり、G大阪において、自身の役割や期待は薄れつつあるとも感じていた。そんな中、純粋にJ1昇格への戦力、そして常勝軍団への土台作りのため「力を貸して欲しい」と高く評価されたのが千葉だった。古巣でなくても、心が大きく動く言葉だった。

 12年前は、練習は市原市内の公営グラウンドを借り、クラブハウスも公営施設で、芝が根付かない時期は、いろんな場所を転々として練習していた。スタジアムも、フクダ電子アリーナはなかった。今ではフクアリの横に専用クラブハウスと練習場ができ、スタジアムもサッカー専用。たしかに、古巣と言われてもピンとこないかもしれない。山口も「全然違いますね。メンバーも環境も違う。誰かも言っていたけど、施設はJ1でも通用する。J1でもトップクラスだと思う」と口にした。

 恵まれた環境は市原時代、山口自身も望んでいたもの。サッカーにおいてより良い環境で、より強いチームでレギュラー争いをし、J1で優勝する-。これらの思いがG大阪への移籍を後押ししたが、今は設備面は問題がない。ならば今度の仕事は、経験を活かして自ら強いチームにすることだ。「(施設の良さなど)そう考えると、チームが上(J1)でやらないといけないなと改めて感じた。それを求められているし、それに応えるだけの力(実力と環境)がある」。練習場などを訪れ、より気持ちが高まった。

 あとはグラウンドで表現するだけだ。昨年はMF佐藤勇人が主将を務めていたが、山口は、木山監督から要請されれば、キャプテンマークを巻く覚悟も持っている。「やれと言われたらやります。やらなくても、自分の役割は大きいものだと思っている。そういうところで、自分が少しでも力になれればと思う。このタイミングで移籍してきて、今までとはちょっと違う責任がある」と口にした。

 肩書きはなくても、行動と言葉でチームを牽引する。「言葉でいうものではないですね。僕はいろんな経験をさせてもらった。それをうまくチームに還元できればいい。試合の中でも(プレーで)伝えたい。試合は生き物なので、やりながら伝えたい。当然、時には厳しいことも言わない。それには自分も責任を負わないといけないけど、目標に向かってやっていきたい」。今度は千葉を常勝軍団にする-。山口の新たな挑戦が始まる。

(取材・文 近藤安弘)

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