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「3-4」“1年生軍団”城西国際大、関東まであと1点届かず・・・

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[5.20 千葉県大学サッカー選手権3位決定戦 城西国際大3-4中央学院大 明海大G]

 千葉県大学サッカー選手権大会兼総理大臣杯千葉県代表決定戦3位決定戦が20日に行われ、城西国際大は中央学院大に3-4で敗れ、3位以内が進出する関東予選出場権獲得はかなわなかった。

 ベンチ入り18名全員が1年生の“1年生軍団”にはまだ試合勘、経験値が足りなかった。今春38人の新入生を加えて再スタートした城西国際大は全国につながる総理大臣杯千葉県予選で千葉大に4-2、江戸川大に2-1でそれぞれ勝利。準決勝では、昨年千葉県1部リーグで優勝している明海大に1-2で敗れたものの、この日、関東予選への最後の出場権をかけて同1部の強豪・中央学院大戦に臨んだ。

 大一番のGKは初先発となる大野哲煥(1年=広島ユース)で、4-2-3-1システムの4バックは右から小倉周也(1年=千葉U-18)、佐々木祐介(1年=大津高)、呉島勝士(1年=広島皆実高)、重行拓也(1年=広島ユース)。中盤は橋本渉主将(1年=広島皆実高)と桑野淳史(1年=福岡U-18)のダブルボランチで2列目は米澤康太(1年=都城工高)、溝口大気(1年=室蘭大谷高)、井之元和之(1年=都城高)が配置され、1トップは寺田大輝(1年=浜松開誠館高)が務めた。

 試合開始から10分経ってもベンチから「半分寝てるぞ、まだ!」と声が飛んだように立ち上がりの入りが悪すぎた。関東進出がかかっている緊張感もあってか、体の動かない城西国際大を中央学院大がプッシュ。自陣でのミスも犯した城西国際大は完全に押し込まれてしまう。それでも城西国際大は前半11分、左サイドで寺田とのワンツーを通した重行が巧くスペースを見つけて中央へボールを運びパス。これを受けた溝口がドリブルで縦に切り裂くと、右サイドへ流れながらPAへ侵入する。ここで斜め後方からスライディングタックルに入った相手DFのプレーがPKの判定。キッカーの桑野が難なくゴール左隅へ右足シュートを流し込んでリードを奪った。

 だが直後の13分、城西国際大は左CKをファーサイドで合わせられて失点。15分のピンチは大野の好守で防いだものの17分、ディフェンスラインでボールを失うと、相手アタッカーと1対1となった大野の必死のセービングがファウルと判定されてしまい、レッドカードを提示されてしまう。試合後にコーチングスタッフと大会関係者がビデオ確認したところ、明らかにPA内でボールへ行ったプレーであることが認められたが、この場面では主審にPA外側で手を使って決定機を阻止したと判定されたため、城西国際大は70分間以上を残して10人での戦いを強いられることになってしまった。

 溝口に代わってGK平山優樹(1年=長崎日大高)が緊急出場したものの、準備時間が短すぎたか、29分に前線からチェイスされた平山がPAでボールを失い、勝ち越しゴールを決められてしまった。前線から果敢に相手ボールを追う城西国際大だったが、数的不利が影響して簡単にパスで剥がされてしまい、空いたスペースを突かれて決定機をつくられてしまう。最前線の寺田にボールが入れば相手をいなすようにボールをキープし、左サイドの米澤のダイナミックな突破も相手を苦しめていたが、ロスタイムに米澤の突破から迎えた決定機は井之元が合わせられず、前半を1-2で折り返してしまう。

 それでも、米澤が「人数が減った分、自分たちで補わなければいけない。いつも以上のプレーをしなければいけないと思った」と振り返ったように城西国際大はあきらめない。後半開始から小倉と井之元を下げて左FWに花本敏生(1年=米子北高)、右DFに佐藤正三郎(1年=海星高)を投入して4-2-3から3バックの3-3-3システムへ移行すると、わずか3分で同点に追いつく。寺田のポストプレーから左サイドを破った花本がラストパス。ファーサイドの米澤が落としたボールに走りこんだ橋本が「たまたま転がってきた。ブチ抜くだけでした」と右足を振りぬいて同点ゴールを叩き込んだ。

 前半と打って変わり、落ち着いてサイドでボールをつなぐ城西国際大は、米澤と花本の突破力をアクセントにチャンスをつくる。17分には左アーリークロスから、25分には右CKからそれぞれ寺田が決定機を迎えた。ただ、ここで勝ち越せなった城西国際大は25分、CBが相手FWに食いついたところを展開され、最後は右クロスから勝ち越し点を決められてしまう。

 28分にもループシュートで加点された城西国際は3ボランチの運動量を支えに巻き返しを図るが、ゴール前での崩しがやや雑になってしまい、無理な体勢からのシュートが相手DFにブロックされてしまう。それでも終盤、立て続けにシュートにまで持ち込んでいた城西国際大はロスタイム突入後の48分、寺田の強烈な右足シュートが相手DFに当たってゴールへ吸い込まれて1点差。だが、試合再開と同時に終了の笛が鳴り響き、“1年生軍団”の挑戦は幕を閉じた。

 敗戦後うなだれていたイレブンだが、すぐに前を向いていた。佐々木は「(先発した)センターバック2人が負けた原因。自分たちがもっとしっかりリーダーシップ取って、相手に蹴られた瞬間ダウンしたり、予測力だったりがあったらこんなに難しいゲームにはならなかったはず。もっとFWに強く行って、インターセプトを狙えるように、FWへのくさびに対する守りを意識していきたい」と成長を誓い、前線で存在感を放った寺田は「個での差はあまり感じない。でも、チームとしての声や戦術はまだ他チームとの差がある。課題ははっきりしたのでこれからもっと上げていきたい」とチーム力の向上を目標に掲げていた。

 札幌のチーム統括部長や横浜FMのゼネラルマネージャーを歴任し、2010年の南アフリカW杯で日本代表のチームコーディネーターを務めた小山哲司監督は「高校時代の経験はあるけれど、まだチームとしての経験がない。私はいつも『ゲームの中のゲーム』といつも言っているけれど、どこを締めてどこで点取るか。『ここ』というところがもう少し分かってくれたらな、と思った」と試合勘、経験値の向上の必要性を口にした一方で「まだまだやれると思うよ、この子たちは。消化不良な顔しているでしょう? これからトレーニングして強くなっていけば、またできるプレーの幅も広がってくると思う。まずは、これから半年でどのくらいできるか」と期待を寄せた。

 次の目標は9月開幕予定の千葉県2部リーグで優勝して同1部へ昇格すること。主将の橋本は「秋のリーグ戦で1部に上げないと、(今大会で敗れた)中央学院や明海と戦う機会はない。今年上がって来年倒したいと思います」。関東進出こそ叶わなかったがインパクト十分の戦いぶりを見せた城西国際大。今大会出場機会のなかった他の選手たち含めて全員で成長し、リーグ戦優勝へ全力を尽くす。

[写真]再三左サイドからチャンスをつくった米澤ら城西国際大は関東進出まであと一歩に迫ったが・・・
(取材・文 吉田太郎)

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