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横浜FC・山口監督の下で成長する大卒ルーキー・中里

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 今シーズン、横浜FCに加入し、ルーキーながらボランチで定位置を獲得しているMF中里崇宏。元日本代表MFである山口素弘監督が就任してからも、第9節の京都戦(2-1)で初めてスタメン出場し、シーズン初勝利に貢献。その後はスタメンに定着し、9節以降の7試合で5勝2敗と歯車が噛み合いだしたチームで、攻守のつなぎ役として奮闘している。

 中里は、中学2年のときからボランチでプレーしてきた。大学4年時には、チーム事情から最終ラインに入ることも多かったが、それゆえボランチというポジションへのこだわりも強くなったという。だからこそ、日本代表の中盤に君臨していた指揮官の教えは、響くものがあるという。

「ボールを受けることを求められています。最終ラインに限らず、前の選手がボールを持った時も、どういう風にサポートに入るか、細かく指導してくれるので、自分の中で意識が変わった部分もありますね。今まで自分がダメだと思っていたことでも、実は良かったんだという発見がありますね。

 たとえば、これまでは止まってボールを受けると、次のプレーに移行するときのプレースピードが遅くなるから、良くないと思っていたんです。でも、素さんには『一瞬の動きで敵のマークを外して、止まってからボールをもらった方が、動いていない分、ミスが少ない』と言われました。そういうことは新鮮でしたし、実践してみたら、その方が良かったです」

 ボールを受けたら、そこで終わりではない。

「ここでボールを受けたら、次はどこに展開できるか。一本のパスで局面を変えられるような場所でボールを受けられるように、常に考えるように言われます。今までも、考えながらプレーしていたつもりだったのですが、より考えるようになりましたね」

 就任直後から、山口監督は「ボランチの選手への要求は、自然と厳しくなると思う」と語っていた。中里も「結構、怒られます」と苦笑するが、その目は輝いていた。

「話をしていて共感することが多いというか、こんなことを言うと失礼かもしれませんが、考えていることが似ているのかなと感じることはあります。ボランチは技術もそうですが、経験がすごく大事になってきます。その経験を素さんは、オレよりもっともっと積んでいるし、深いところまで知っているじゃないですか。ボールの受け方、パスを出す方向、角度とか。オレが今、持っていることよりも、もっと有効な手段とか方法を持っていると思うので、練習のときとか、どんどん引き出して自分のものにしていきたいなと思います。本当にやっていて面白いですし、充実感がありますね」

 充実感を得られているのは、チームが結果を出せているからでもある。

「チームがうまくかみ合ってきているから、ボールがボランチに集まってきている感じがするんですよね。FWは点を取れば、試合に負けても評価されることがありますし、DFも無失点に抑えたら0-0でも評価されることってあるじゃないですか。でも、ボランチはチームが勝ち始めたときに、初めてチームと一緒に評価されるものだと思うんです。チームが勝って初めて『あいつがいるから』ってなると思うので、ボランチとしての評価を高めるためには、チームが勝たないといけないなと思います」

 次の鳥取戦には今季初の4連勝がかかっている。自身の評価を高めるためにも、勝つことが一番。そう話した直後に、ルーキーは「でも、サッカーは、お互いが勝ちたいと思っている中で、どちらかが負けてしまうスポーツですから。もし負けてしまったとしても、切り替えて、次に頑張ればいいんですよ」とクールに言い、「もちろん、勝ちに行きますけどね」と不敵に笑った。

(取材・文 河合 拓)

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