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「心は熱く頭は冷静に」京都DF井上黎生人が後半AT“神ブロック”で危機救う! J3、J2、J1から天皇杯4強の景色へ

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終盤のピンチを防いだ京都DF井上黎生人

[9.7 天皇杯準々決勝 京都2-1東京V 味スタ]

 2点差を守っていた京都サンガF.C.。後半45分に1点を返した東京ヴェルディの猛攻を浴びると、後半アディショナルタイムにヘディングシュートを打たれる。ゴール枠内を捉えていたが、阻んだのはDF井上黎生人。「ここに来るだろうなと思ったら本当に来た」。ヘディングクリアで大ピンチをしのぎ切った。

 序盤からボールを保持して攻勢を強めた東京Vに対し、京都は数少ない決定機を決め切る。前半21分、後半8分とFWパウリーニョが2得点。公式戦デビューのブラジル人FWの活躍で2-0と点差を広げた。

 しかし、その後は得点シーン以外は押し込まれる場面が続く。チームのコンディションは整わず、不慣れなポジションでプレーする選手もいる中、チョウ・キジェ監督と選手たちは覚悟を決めて乗り越えたという。「ここまで押し込まれる試合もJ1でもなかなかなかったですけど、これはこれで自分たちの次のステップにいけるようなひとつの材料したい」。チーム一丸でリードを守り切り、ベスト4進出を決めた。

 特に終盤は、2点差の怖さを思い知らされる。2-0で迎えた後半45分に失点。1点差に縮まると、東京Vから怒涛の攻撃を浴びる。そして後半アディショナルタイム1分過ぎ、サイドのクロスからFW佐藤凌我に強烈なヘディングシュートを打たれた。しかし、コースを狙った弾道に立ちはだかったのは井上。ゴールライン上から頭で跳ね返して、大ピンチを切り抜けた。

「どれだけ冷静になれるか、というところは自分の持ち味。それがうまくああいうクリアにつながったのかなと思う。クロスが上がってきたとき、ついみんなボールを見てしまうイメージがあった。ここに来るだろうなと思ったら本当に来た。どれだけ冷静になれるか、というところは自分の持ち味。心は熱く頭は冷静に、じゃないですけど、そういう考えが出たシーンです」

 天皇杯ベスト4まで上り詰めたことには「初めての舞台なのでたくさんチャレンジをしたい。見える景色が広がった。可能性がもう一つ二つ、広がったのはすごくうれしく思います」。快進撃の喜びを噛みしめていた。

 井上は鹿児島実高を卒業後、2015年から20年までガイナーレ鳥取でプレーし、21年はファジアーノ岡山、そして今季から京都に加入。J3からひとつずつカテゴリーを上げ、プロ8年目でJ1に到達した。「僕はそんなに身体能力も、身長も高くない」。自分のことを誰よりもわかっている分、どのカテゴリーでも冷静に戦う習慣を続けてきた。

「J1にはすごい外国人や大きくて速い選手がいっぱいいるので、そういう選手たちにどうやって勝てるかとなったら、それは考えて先を読む力。ボールを出させて取るとか、そういう工夫をしないといけない。ずっと意識していたんですけど、今年はより一層、研ぎ澄まされている感じがある」

 J1リーグに加えて天皇杯も勝ち残り、挑戦のシーズンは続く。「出られる試合は出たいし、いろんな選手とマッチアップして自分の成長につなげたいと毎試合思っています。その中で、無失点に抑えるとか試合に勝ちたいという強い気持ちを持って、一試合一試合臨めば、自ずと結果はついてくる」。ステップアップを続ける25歳。いま充実のときを迎えている。

(取材・文 石川祐介)
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