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試行錯誤のビルドアップに浅野拓磨「優先順位を忘れちゃいけない」

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FW浅野拓磨(ボーフム)

 日本代表の新たなビルドアップへの取り組みはストライカーの役割にも大きな影響を及ぼしている。26日の練習後、報道陣の取材に応じたFW浅野拓磨(ボーフム)は「トライしないとどうにも言えないという段階かなと思う」と試行錯誤の現状を見つめた。

 日本代表は新体制初陣となった24日のウルグアイ戦(△1-1)で両サイドバックが中央に絞ってビルドアップに関わる形をテスト。新たに就任した名波浩コーチのもと取り組んでいるトライだが、1トップで先発した浅野は「ミーティングでもFWも含めてこういう動きをして、他の選手もどういう動きでこうしていこうという話はあったので、イメージは共有できている」と試合に臨んでいた。

 それでも試合が始まると、サイドハーフが低い位置を取らざるを得ない状況が頻発し、前線の攻撃は停滞。結局は浅野が裏に抜け出す形からなんとかチャンスをつくっていたが、そこに至るまでの全体のポジショニングにぎこちなさは残った。ミーティングの中では理解が広まりつつあるようだが、浅野は「それをピッチ上でどうやって出していくか」に課題があると指摘する。

「ミーティングで話してもらうことについてはまず選手が理解していて、やろうとしているという段階。ピッチの中で選手同士で要求はあるけど、結論が出ていない状態でもある。僕自身も前の試合でやって、何が難しくて何をどうしたらいいかを感じにくい試合であった。代表がやろうとしていることをやってみる、これの繰り返しでこれからどうなるかなという段階かなと思う」と、試行錯誤の最中であることを明かした。

 その上で浅野は「僕はあまり戦術とかどうこうというのはそもそもそんなに考えないタイプ。ピッチの中でどういう状況があって、どういう判断をして、サッカーはアドリブがモノをいう部分があると思う」と自身の特性について前置きしつつ、「決まり事があったとしてもその通りにいかないことのほうが多いので、練習をやっていても、こんなにうまくいかないだろうなとか、難しいなと感じながらやっている」と説明。「代表がやろうとしていることはまずやってみないとわからないので、そう(難しいと)感じながらも、トライしないとどうにも言えないという段階かなと思う」と現状を分析した。

 またゴールの形を持つストライカーにとって、ビルドアップへの関わりでプレーに制約がかかるのは難しい部分もあるようだ。

「自分のウィークポイントを伸ばそうと必死になるより、自分の特徴を100%出したいと思っている。いま代表がトライしていることは僕には苦手なことがピッチに出る。動かそうとするぶん、FWもボールに関わらないといけない。ただ自分の得意とするプレーはそういう部分ではなく、相手のスキを突いたり、1本でゴールを狙う、献身的にチームのために走るということだと思っている」。

 そうした自身の個性については「なくしちゃいけないのかなと」と浅野。「頑なに曲げない部分じゃないけど、強さであるぶん、そこは100%活かしてなくさないほうがいいのかなと思っている。それを評価して代表がどう動くのかは今後の話であって、自分は自分の得意とするプレーをどんどん伸ばして、そういうプレーで代表に貢献したい気持ちがある。変わらずにやっていけたら」と自身のプレーを貫く意識も垣間見せた。

 実際、ウルグアイ戦ではサイドバックが中に絞ること、サイドハーフが大外に張ることが目的化し、そこから停滞してしまう時間帯があった。状況判断よりも役割意識が先行すると、今後もそうした課題は浮かび上がることだろう。

 そこで浅野は「個人的に言えば勝つことが一番大事。どういう戦い方をするかというのも組み立てる部分、作っていくことは大事だけど、まず優先順位を忘れちゃいけないと思う」とも述べ、勝利を前提に置くことの重要性も強調する。「前の試合でも出たけどスペースに流れてゴールを狙う部分だったり、サッカーはあれが一番いいので、そういうところは忘れずにいながら、いま代表が成長しようとしているところをやっていきたい」。バランスを取りながら新たなトライを進めていく構えだ。

(取材・文 竹内達也)

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