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大躍進の夏…“楽しさ”“厳しさ”大阪学院大はJリーグ実績十分のスタッフに導かれ急成長

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[9.4 総理大臣杯決勝 国士舘大2-1大阪学院大 西が丘]

 一瞬、時が止まったようだった。1-1で突入した後半アディショナルタイム、延長戦決着も十分に考えられた時間帯に一つのミスが起こる。大阪学院大をプレーで引っ張ってきたGK梅田陸空(4年=大阪学院大高)が、ハイボールの処理でまさかのファンブル。これをMF東條敦輝(4年=鳥取U-18)に拾われて、決勝点を決められた。

 まさかの結末に實好礼忠監督もすぐには現実を受け止められない様子。ただ、「今までに持ったことのない感情」と素直な気持ちを吐露するも、「清々しい思い。まだまだ力をつけている過程なので、いいトライはしてくれたのかなと思います」とサッカー部の歴史に新たな1ページを記したイレブンを労った。

 まさに快進撃だった。開幕前から新監督に實好礼忠氏、GKコーチに松代直樹氏を迎えたことで話題を集めた大阪学院大だったが、リーグ開幕戦で同志社大に0-7で大敗を喫するなど、スタートで大きく躓いた。しかしそこからわずか半年たらずで総理大臣杯予選となる関西選手権を準優勝、そして本戦の総理大臣杯では明治大や駒澤大を連破するなど、関東の強豪校と互角に渡り合えるチームに仕上げてみせた。

 そこには實好監督以下、松代コーチや大学OBで21年から同職を務める石櫃洋祐コーチといった指導者の存在を感じさせる。当然、Jリーガーとしての実績もあるが、大きいのは3人の人柄。この日も石櫃コーチは試合後の写真撮影で率先して声を出し、沈みがちな選手の表情を和らげていた。

 實好監督も初の大学チームの指導について聞かれると、いつも「楽しい」と答えるが、その想いが選手たちにも伝わり、信頼関係が自然と構築されている。主将MF國分龍司(4年=G大阪ユース)は春先から、「チームの雰囲気的にはめちゃくちゃいい」と話していた。そこに結果が伴ってきたことで、信頼関係はより強固なものになっていくはずだ。

右から實好礼忠監督、石櫃洋祐コーチ、松代直樹GKコーチ

 ただ實好監督は「楽しさ」と同時に「厳しさ」も求めていきたいとする。練習では基礎の基礎の部分と考える「止める蹴る」のところに最も時間を割き、その上でJクラブの監督時代も求めていたような戦術や相手をはがす立ち位置といったロジカルな部分を説明するようにしているという。「みんなプロを目指しているので、受けて入れてやってくれていると思います」。

 決勝で敗れたことで、日本一という目標がより明確になった。当初、「今までに持ったことのない感情」と振り返っていた實好監督も、「分からない感情から悔しさが生まれてきている」とインタビュー中のわずかな時間でも、次へ向かう感情が沸々と湧き上がってきたようだ。

 冬の大学選手権(インカレ)に出場するためにはリーグで4位までに入る必要がある。そのためには10位で折り返すリーグ戦の巻き返しが必要になる。「切り替えていくパワーが生まれてきています」。後期リーグの開幕は10日。次なる戦いはすぐにやってくる。


(取材・文 児玉幸洋)
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