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執念の守備と攻撃でもハードワーク。帝京を支えたメンバー外の選手への思い

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帝京高は仲間のために走り、身体を張った。(写真協力=高校サッカー年鑑)

[7.30 インターハイ決勝 帝京高 0-1 前橋育英高 鳴門大塚]

 後半アディショナルタイムの失点によって敗れたが、帝京高(東京1)は19年ぶりの決勝で素晴らしい戦いを見せた。この日は、注目エースFW齊藤慈斗(3年)と司令塔のMF押川優希(3年)がともに怪我のために先発を外れ、先発MF藤崎巧士(3年)の負傷によって前半21分に押川を緊急投入するアクシデントも。加えて、帝京は対戦した前橋育英高(群馬)よりも1試合多い今大会6試合目だった。

 試合を通してより多くボールを保持していたのも、チャンスを作っていたのも前橋育英の方だった。その攻撃は日比威監督も「これが全国大会で優勝するチームの技術」と賞賛するほど。相手の1タッチでパスを差し込む技術と判断力に押し込まれ、決定機も4度5度と作られた。

 だが、疲労感もある中で帝京は良く走り、身体を張った。PAへパスを通されても、2人、3人が素早く戻ってシュートコースを消す。GK川瀬隼慎(2年)は準決勝に続いて決定的なシュートをストップした。また、前半にはCKからの相手シュートが2度ゴールを捉えたが、いずれもDFがゴールライン上でクリア。後半には相手のカットインシュートを逆サイドの左SB島貫琢土(3年)が身体を投げ出してブロックしたほか、怪我を抱える押川が鋭いアプローチを連発していた。

 非常に気持ちの込もった、執念とも言える守りは快進撃の要因の一つ。DFリーダーのCB大田知輝(3年)は「まずは色々な応援してくれる方とか、サッカー部でメンバーに入れなかった人への思いが一番強くて、ここに来れていない人の分も結果で見せていて、本当に良い思いをさせてあげたいなとか、悔しい思いは自分たちが引き取って責任持ってプレーしたいと思っていた」とその理由について説明する。

 仲間への思いに関しては、FW伊藤聡太主将(3年)も準決勝後に「(東京に残っているメンバー外の選手たちは)下級生で出ていたりとか、もう少しで入れそうだったり、色々な気持ちがあると思いますし、その気持ちを背負って戦わないといけない」と語っていた。

 仲間のために、という責任感は攻撃面でも表現されていた。前半35+5分、帝京は相手セットプレーから自陣PA付近でボールを拾った伊藤が一気に前進する。この段階で3対2の状況。前橋育英の選手たちも必死に戻るが、帝京は伊藤と大田、MF山下凜(3年)に加え、FW橋本マリーク識史(3年)も後方から60~70mの距離をスプリントした。

 そして、伊藤の絶妙なスルーパスでGKと1対1となった大田が左足シュート。相手GKに止められた大田は「ああいう1点が勝負決めると思うと本当に悔しくて。ああいうところをもっと磨いていきたいです」と悔しがったが、帝京は交代出場で身体を張った齊藤らを含めて攻撃面でもハードワークする姿勢が印象的だった。

 それでも、後半アディショナルタイムに失点して0-1で敗戦。大田はそのシーンについて、「最後の最後で守備の弱さが出たなと。ただただ悔しいです」と唇を噛み、「前線の選手の動き出しとかに自分たちが上手く対応できていなくて、そこでの守備での強さとかコーチングができていなくて、そのままシュートを打たれてしまった」と分析した。

 チームはプレミアリーグ昇格、選手権優勝へ向けて再スタートを切る。大田は、「今大会出た悪かったところをもう一回チームで修正したいです。(決勝で敗れるという)一番悔しい思いをしていますし、この気持ちをただやるのではなくて、悪かったところはどこなのか、これからどうしていくのかを明確にして、本当に冬の選手権では1位を取りたいと思っています」。仲間のことを思って戦った帝京は、6試合を通して特に守備面での際の強さなどで成長。この力をベースに、依然課題の守備、また自信を持つ攻撃でもよりレベルアップして冬は全員で優勝を喜ぶ。


(取材・文 吉田太郎)
●【特設】高校総体2022

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