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厳しい連戦、宿敵の存在も成長、日本一への糧に。神村学園が鹿児島6連覇達成

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後半35+4分、神村学園高はMF金城蓮央のゴールで2-0

[5.27 インターハイ鹿児島県予選決勝 鹿児島城西高 0-2 神村学園高 OSAKO YUYA stadium]

 神村学園が宿敵に雪辱し、日本一への挑戦権を獲得――。令和5年度全国高校総体(インターハイ)「翔び立て若き翼 北海道総体 2023」男子サッカー競技鹿児島県予選決勝が27日、南さつま市のOSAKO YUYA stadiumで開催され、神村学園高が6大会連続9回目のインターハイ出場を決めた。神村学園はU-17日本代表MF名和田我空(2年)とU-17日本高校選抜MF金城蓮央(2年)のゴールによって、鹿児島城西高に2-0で勝利。県新人戦、九州新人戦決勝でいずれも敗れていた宿敵から白星をもぎ取り、頂点に立った。

 神村学園は先輩たちが繋いできた連覇を達成。U-17日本代表左WB吉永夢希(3年)は、「昨日ミーティングで『3度目負けたら選手権もキツくなるぞ』と全員でしていたので、そこでしっかり勝てたので良かったと思います」と微笑み、FW西丸道人主将(3年)は「神村らしく粘り強いサッカーで勝ち切ろうと話していた。それで勝てて良かった」と頷いた。

 鹿児島城西はCB内田輝空(3年)が前日の準決勝終盤の怪我で欠場。CB福岡想太朗主将(3年)が長期離脱する中でチームを支えてきた守備の要を欠いて、決勝を戦うことになった。ボランチのMF坂上日向(3年)をCBへ落として対応。そして、右SH松永知寛(3年)を吉永、10番MF石内凌雅(3年)を名和田にマンマークでつけ、決勝を戦った。

 前半8分、神村学園は左サイドから一気にゴール前へ侵入してきた吉永が左足シュート。鹿児島城西も10分、藤枝内定のMF芹生海翔(3年)がDFをわずかに外して強烈な右足シュートを打ち込む。立ち上がりにチャンスを作りあったが、試合は神村学園がリズム良く戦う展開となった。

 鹿児島城西の新田祐輔監督は「ちょっとマジメにやりすぎたというか……守備の時はこうだけど、攻撃のところは出ていいぞと言っていました。しっかり守ってひっくり返そうと」と振り返る。それぞれが守備の役割を徹底。だが、相手の強力攻撃陣を警戒して守備に意識を傾けすぎたか、なかなか前に出ることができなかった。

 攻守に存在感を放つ芹生とMF谷口翔輝(3年)の鋭い仕掛けや松永のロングスローなどから攻めるも、なかなか攻撃に圧力がかからず、相手DF陣を飲み込むことができない。セカンドボールの攻防でも苦戦。神村学園は決勝でも抜群のスキルを発揮するU-16日本代表MF福島和毅(1年)やMF平木駿(3年)、名和田を中心にマイボールの時間を伸ばした。

 過去の敗戦では、縦パスを失ってカウンターを受ける形で失点も。だが、「きょうはサイドからちゃんと攻めようと言って話はしていたので、サイドで起点が作れてそこからの展開で縦行ったり中行ったりできた」(神村学園・有村圭一郎監督)。ショートパス、ロングフィードを交えてボールを動かし、サイドに起点を作って攻撃。セットプレーを含めて相手にプレッシャーをかける。

 そして27分、前日の準決勝で右サイドからスーパーゴールを決めていた名和田が、決勝でも衝撃的なゴール。DF長沼政宗(3年)のロングフィードから、右WB高橋修斗(3年、兄はOBで現町田のMF高橋大悟)が右エンドライン際へ切れ込む。高橋はDFと交錯する形で転倒。だが、鹿児島城西の選手の動きが一瞬止まったところを神村学園は見逃さない。

 セカンドボールを金城が拾い、サポートした名和田へパス。PA角付近でボールを受けた名和田は右前方へ持ち出すと、角度のほとんどない位置から右足を振り抜く。「(角度はなかったが)得意なコースでしたし、昨日のイメージがあったので。きょうは落とすことを意識して打ちました」という一撃はGKの頭上を越えて落下。ファーのサイドネットに突き刺さった。
 
 会場にどよめきの声を起こるほどのスーパーゴール。過去2度の対戦で完封負けを喫していた神村学園がゴールを奪い、リードして前半を終えた。鹿児島城西は後半、FW岡留零樹(3年)とFW矢吹凪琉(3年)を相次いで投入。6分には矢吹の左クロスを岡留がバックヘッドでゴールネットを揺らしたが、オフサイドの判定となった。

 神村学園は吉永のプレースキック、仕掛けや西丸、金城の裏抜けなどを活用してチャンスを創出。12分にはカウンターから福島、西丸がスペースへのパスを繋ぎ、金城が抜け出す。だが、鹿児島城西はGK橋口竜翔(3年)が1対1をストップ。また、急造のCBで奮闘する坂上や抜群の高さを発揮していた右SB浮邉泰士(1年)らDFラインが粘り強く守った。鹿児島城西は、飲水タイム明けのタイミングでU-16日本代表FW大石脩斗(1年)を投入。DFの枚数を減らして攻めに出た。

 終盤はオープンな展開に。鹿児島城西は27分、ゴール前のこぼれ球に芹生が反応したが、神村学園はGK川路陽(3年)とDFが距離を詰めて阻止する。鹿児島城西は終盤、岡留、大石をターゲットにロングボールやロングスローを入れ続けるが、神村学園は長沼、DF新垣陽盛(2年)、DF難波大和(3年)の3バックが競り負けない。有村監督は「きょうはだいぶ戦ってくれていたので。セカンドボールの回収のところも集中してやっていた。相手に流れがいきそうなところでやらせなかったので集中してやってくれたと思います」と評価。DF陣の奮闘が大きな勝因となった。

 そして、35+4分に神村学園に歓喜の瞬間が訪れる。クリアボールを福島が絶妙なトラップ。ここから名和田を経由し、左の吉永が一気に縦へ抜け出す。そして、ラストパスをニアの金城がスライディングシュートで決め、2-0。ゴール裏の神村学園部員が一気にスタンドから飛び出し、今大会初ゴールに涙を光らせた金城らピッチの選手たちを祝福する。間もなく試合終了の笛。新人戦の敗戦を糧に成長した神村学園が、6連覇を達成した。

 神村学園の選手たちは試合後すぐに会場を出て移動の準備。優勝から20分ほどでチームバスに乗り込み、翌28日のプレミアリーグWEST・神戸U-18とのアウェー戦へ向けて鹿児島空港へ移動した。対戦相手の都合もあってスケジュールの変更が叶わず、20日のプレミアリーグWESTのアウェー・名古屋U-18戦から9日間で7試合の過酷なスケジュール。選手たちはチームメートたちとゆっくり優勝を喜ぶことができなかった。

 それでも、有村監督は「明日ももちろん勝つためにやる訳ですから、本人たちも妥協せずに頑張らせたいと思います」と語り、吉永は「インターハイ勝って、ヴィッセルも勝って良い形で終わりたい。やるだけですね」と前を向いた。

 この後、九州大会、プレミアリーグを挟んでインターハイへ。神村学園は昨年度の選手権で過去最高タイの3位に入り、初参戦のプレミアリーグWESTでは現在2位、また次々と年代別日本代表選手やプロサッカー選手を輩出するなど鹿児島のサッカーを盛り上げている。有村監督は「僕らはできることを精一杯やるだけなので。少しでも誰かの役に立てればいいと思いますし、勇気を与えられるんであればそれが一番大事なことだと思う」とコメント。選手たちは成長と結果の両立へ全力だ。西丸は「(インターハイでは)神村学園らしい攻撃的なサッカーで日本一を取りたい」と宣言。ライバルたちの存在、厳しい連戦も成長と目標達成への糧にする。

涙の金城を神村学園のチームメートたちが祝福

(取材・文 吉田太郎)
●【特設】高校総体2023

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