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一瞬の隙などが生じて対神村学園3連勝ならず。鹿児島城西は個人、チームでより力を身に着けて冬こそ全国へ

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鹿児島城西高は本来ボランチの坂上日向(左)がCBとして先発。相手の攻撃によく食い下がっていた

[5.27 インターハイ鹿児島県予選決勝 鹿児島城西高 0-2 神村学園高 OSAKO YUYA stadium]

 全国切符を懸けた戦いで勝ち切る力を身に着けて戻ってくる。鹿児島城西高は今年、県新人戦決勝で神村学園高に勝利し、その連覇を3でストップ。九州新人大会決勝でも宿敵に連勝していた。

 これまでの戦いは対策もハマっていたこともあり、自信を持って臨んだインターハイ予選決勝。16年大会以来の全国大会出場を目指したが、一瞬の隙を突かれて失点するなど、0-2で敗れ、神村学園に6連覇を許した。

 連勝している相手の挑戦を受けるのではなく、「(自分たちも)本当に『やるぞ』という感じはあった」(新田祐輔監督)。選手たちは全国出場への思いをぶつけ、自分たちの良さも表現していたが、細部の差がタイトルから遠ざけた。

 CB内田輝空(3年)が前日の準決勝で負傷。決勝を欠場することになった。攻守に渡って高さを発揮し、チームにエネルギーを加える内田は、強力CB福岡想太朗主将(3年)離脱の穴を埋めてきていた存在だ。その欠場は大きな痛手に。鹿児島城西はボランチのMF坂上日向(3年)をCBへ落として決勝を戦った。

 そして、SHの石内凌雅(3年)が中盤の底の位置へ落ち、相手のU-17日本代表MF名和田我空(2年)をマンマーク。右サイドにはMF松永知寛(3年)が先発し、同じくU-17日本代表の左WB吉永夢希(3年)をマンマークした。坂上や抜群の高さを発揮していた右SB浮邉泰士(1年)らを含めて、新田監督は「よう抑えていました。(浮邉は)ヘッド相当頑張っていた」と頷く。

 ただし、前半28分の失点は、鹿児島城西の選手がセルフジャッジをして動きを止めてしまい、また名和田への寄せが一瞬甘くなってしまったことが要因。坂上も「相手の選手はああいう隙とかを突いてくる。一瞬の隙や甘えが出たと思う。(個人的に)新人の時は対人が苦手だったんですけれども、きょうは金城選手とか何回か止められたのでなかなか手応えはあったけれど、一発の隙とかが勝負を左右すると痛感しました」と反省していた。

 攻撃面は藤枝内定のMF芹生海翔(3年)が慌てずにボールを収めるなど存在感のある動きを見せていたものの、坂上は「そこに甘えてしまっている。芹生に入ったら何かでできるからってサポートが少し甘いですし、一人ひとりが他人に甘えることなく、一人ひとりの力でも突破できるとか、守れるという自信をつけられればなと思います」と成長の必要性を口にしていた。

 この日は守備で頑張りすぎてなかなか攻撃に人数をかけることができず、失点後も攻めたいという気持ちとDFラインの守らなければという気持ちが噛み合わなかったという。注目の芹生は守備面含めて力を示していたが、2度チャンスがあっただけに決め切る選手になることが求められる。最後はオープンな展開となった末に失点し、万事休す。選手たちはピッチに倒れ込んで悔しがった。

 新田監督は「坂上はもう一列前でやらせてあげたかった。石内と坂上が中盤もう少し前にいかないと」。彼らが本来のポジションでプレーすることによって、チームに推進力が生まれる。ただし、想定外のアクシデントも乗り越えられる力、目指している「誰が出ても同じサッカーをする」力を身に着けていかなければならない。

 近年、プロサッカー選手や年代別日本代表選手を立て続けに輩出してきた神村学園に対し、今年は鹿児島城西も芹生がプロへ。また、昨年のエースFW前田隼希が“プロ予備軍”の明治大へ進学し、FW大石脩斗(1年)がU-16日本代表に選出された。「確実に選手は育っている」(新田監督)というチームはさらにその力を磨いて選手権へ向かう。

 坂上は「きょうの戦いは(登録の)20人というか、今日いたサッカー部90人とあと全校生徒と力を合わせての戦いだったけれど自分たちの力不足だったので、夏乗り越えて一人ひとりが日本代表とか関われず、チームとして選手権を戦えられたら良いと思います。冬はやっぱり3年間の集大成なので、自分もですけれどもチーム全体で神村はライバルなので、(勝ってして)ライバル関係に終止符が打てれば。(個人としては中盤で)競り合い、空中戦、足元のところでも圧倒して次の試合は完封したい」。内田の怪我は幸い大事に至っていないとのことで、福岡も選手権予選には戻ってくる。次回は宿敵を圧倒して鹿児島制覇を果たす。
 
(取材・文 吉田太郎)
●【特設】高校総体2023

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