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一緒に喜ぶのは決勝に勝った瞬間まで。躍進・出雲を撃破した立正大淞南は新たな戦いがスタート

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立正大淞南高イレブンが全国出場時恒例の『勝ちロコ』

[6.3 インターハイ島根県予選決勝 立正大淞南高 2-0 出雲高 浜山公園陸上競技場]

 令和5年度全国高校総体(インターハイ)「翔び立て若き翼 北海道総体 2023」男子サッカー競技島根県予選決勝が3日に行われ、立正大淞南高が出雲高を2-0で下し、3大会連続16回目の出場を決めた。

 試合は立ち上がりから、立正大淞南が右の山田涼斗(2年)、左の久島理功(3年)の両サイドハーフを中心にピッチを幅広く使う攻めでゴールを目指し、出雲がはね返してチャンスをうかがう展開に。出雲は前半10分過ぎから敵陣まで攻め込む場面を増やし、FW安部山侑作(3年)のロングスローでゴール前までボールを送るが、立正大淞南も西口大稀(3年)と坂本直太郎(3年)のCBコンビを軸に最終ラインが集中力を高く保ち、シュートを打たせない。

 立正大淞南は18分にFW永澤叶太(3年)が敵陣でボールを奪い、そのまま持ち込んで左サイドから左足で狙うも、出雲GK永見研太(3年)が好セーブで防ぐ。さらにセットプレーでも何度かゴールを脅かすものの、出雲の守備を崩せずにいた。

 だが30分、ついに先制点を奪う。左CKを山田がファーサイドに送ると、西口が相手にマークされながらも高いジャンプで優位に立ち、飛び出したGK永見の前でヘッド。これが鮮やかに決まり、均衡が破れた。

 1-0で迎えた後半、出雲は4分にゴール前右サイドでFKを獲得し、安部山が直接シュートを放ったが、ジャンプした相手の人壁に阻まれる。このプレーで右CKを得て、ニアサイドに送ったボールに複数人が飛び込むも、立正大淞南GK塚田喜心(3年)のパンチングに防がれた。

 その後は再び立正大淞南が攻め込む場面を作ると、9分に左CKを獲得。1点目と同じく山田が蹴ったボールに、西口が今度は中央に飛び込んでヘッドで合わせ、リードを広げた。

 出雲は11分、味方が戻した浮き球のパスをFW足立雄彌(3年)がエリア外から右足ボレーで狙うも、クロスバーの上へ。試合が終盤に入っても何とか勝機を引き寄せるべく、相手の鋭い寄せを回避してパスをつなぐ場面も見せるようになったが、チャンスを作るには至らず、そのまま試合終了となった。

 出雲は5月28日の2回戦で、2月の新人戦で優勝して3月の中国新人大会では3位に入り、今予選の第1シードだった大社高に3-2で勝利。勢いに乗って決勝まで勝ち上がり、インターハイ初出場、1993年度の高校選手権以来となる全国大会出場を目指したが、あと一歩及ばなかった。

 石田優介監督は、常にプレッシャーを受けながらも、パスをつないでボールを前進させる時間帯も作ったことについて「技術のある選手が多いので、このチームがスタートしたときから、パスをつなぐことを継続してやってきた。大社戦では余裕がなかったですが、今日はチャレンジできて、あの圧力の中でできたことは、すごくよかった」と評価。キャプテンの永見は涙で目を赤く腫らしながらも「試合に勝ち切ることが僕たちの課題でした。初戦で大社に勝ち、その後も勝ち上がって、勝ち切るところを見せることができて自信につながったし、チームが誇らしいです」と胸を張った。

 立正大淞南は、野尻豪監督が「決勝という舞台、両チームの応援もある中で、日頃やっていることが、どれだけできるかと思っていましたが、冷静にプレーしていた」と語ったように、ゴール前まで攻め込まれても落ち着いて対応。プリンスリーグ中国で1勝2分4敗と結果が出ない状況で迎えた予選だったが、全国切符は譲らなかった。

 一方で「このままでは、全国では勝てない」と、選手たちにさらなる奮起を促した。野尻監督が「止める・蹴るの技術レベルを上げなければいけない」と指摘する課題とともに期待を寄せるのが、この日はスタンドで迫力の応援を繰り広げたメンバー外の部員たちだ。

「今回は最高の応援で、試合に出ているメンバーを救ってくれました。ただ昨日、応援部員に『決勝に勝った瞬間は、チーム全員で喜ぼう。でもそれが終わったら、めちゃくちゃ悔しがってほしい』と話したんです。誰もが黄色いユニフォームを着て試合に出るために、覚悟を持ってウチに来ていますから」

 島根県予選は今回から、部員全員が大会に登録され、そこからメンバー20人が試合ごとに登録される方式となった。誰もが試合に出る権利がある状態で、試合中の応援部員はチームのためにピッチ上の選手を後押ししたが、試合が終われば、再び競争。野尻監督も「全員にチャンスがある。どんどんメンバーが入れ替わってほしいという思いしかありません」と強調した。

 試合後、太鼓やメガホンなどの応援グッズをバスへと運ぶ応援部員に決勝の登録メンバーが駆け寄り、ハイタッチで感謝の思いを示した。でも喜びを分かち合うのは、ここまで。インターハイのピッチに立つ権利を懸けた新たな戦いは、すでに始まっている。

(取材・文 石倉利英)
●【特設】高校総体2023

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