beacon

強烈なレギュラー争いは覚悟の上、FC東京内定DF岡庭愁人「乗り越えたら最高の景色が待っていると信じて」

このエントリーをはてなブックマークに追加

DF岡庭愁人(4年=FC東京U-18)

 強烈なレギュラー争いを勝ち抜かないといけないことは言われなくても分かっている。「勝たないと自分の人生もなくなる。壁が高い分、乗り越えたら最高の景色が待っていると信じています」。憧れだった明治大の先輩でもあるDF長友佑都やDF中村帆高を蹴落とさないといけない。FC東京のユニフォームに袖を通したDF岡庭愁人(4年=FC東京U-18)は決意を新たにした。

 入学前から実績は十分だった。FC東京の下部組織出身で、セカンドチームがJ3に参加するようになった高校2年生の時にJ3デビュー。16年に2試合、17年に14試合と“Jリーガー”としてのキャリアを積んだ。U-17、そしてU-18と日本代表としての実績も十分で、トップ昇格こそ叶わなかったが、大学入学時は同級生にも一目置かれていた。

 しかし明治大の入部初日、“事件”は起こった。高校生との練習試合に1年生主体チームの一員として出場した岡庭だったが、自分でも空回りが分かるほどの不本意なプレーを連発してしまった。そこで栗田大輔監督から雷を落とされたのだという。「メンタルをやられて、インフルエンザになって、1週間くらい休んだことを覚えています」。

 今では笑い話として振り返ることができるが、当時は理解するのに時間を要した。ただ栗田監督には実績に胡坐をかき、鼻が伸びているのが目に見えて分かったのだという。「過去の栄光を引きずるのではなく、ここからチャレンジするのだと伝えました。でもそこから4年間、彼は一度も逃げなかった」。岡庭も「逆に栗田さんには最初の段階で気付かせてもらった。ほかの選手とはまた違う覚悟が持てたのかなと思います」と感謝を口にした。

 一昨年は9人、昨年は12人のJリーガーが誕生した明大にあって、岡庭らの学年は下級生のころからなかなか出場機会を掴むことが出来なかった。それでも岡庭はただ一人、3年生で開幕スタメンを勝ち取るなど、存在感を見せ続けた。そして4年生の6月にFC東京への帰還が決まると、特別指定選手として登録された直後にはルヴァン杯で先発に抜擢。念願だったトップチームデビューも果たした。

 プロの世界に引き入れてくれた長谷川健太元監督への感謝の気持ちを忘れずにいる。「たまに親子みたいって言われる。笑った表情が似ているって」。FC東京や明大のチームメイトからも言われたことがあるという、自他ともに認めるそっくりさん。情熱的なサッカー感も合っていると感じていた。それだけに一緒のチームで出来なくなったことを残念がるが、活躍することが恩返しになると信じて、プロ生活をスタートさせるつもりだ。

 新監督の下でスタートできることをプラスに捉えたい。SBの定位置争いには長友、中村帆以外にも小川諒也、中村拓海、バングーナガンデ佳史扶、蓮川壮大だって回ってくる可能性があるが、「いい意味でフラットになると思っている。だからキャンプから開幕スタメンを奪えるくらいのインパクトを残したい」と強い決意を持って臨む。プロで活躍するために必要な負けん気の強さを持っていると栗田監督も認める名門・明治で強くしたメンタル面を武器に、弱肉強食の大海原に乗り出す。

(取材・文 児玉幸洋)
●第95回関東大学L特集

TOP