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[MOM804]明治大FW田中禅(2年)_2戦連続決勝弾、「3年後に“帰った時”に…」

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[大学サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[6.21 関東大学L1部第11節 明治大2-0筑波大]

 3試合ぶりに先発したFW田中禅(2年=鳥栖U-18)は前半20分、MF熊取谷一星(2年=浜松開誠館高)の左クロスに反応。前にいた相手に当たってタイミングが取り辛かったが、上手く頭で合わせたボールがゴール右隅に吸い込まれていった。

 田中は途中出場した前節の流通経済大戦でも、後半アディショナルタイムに劇的弾を決めて、明治大を勝利に導いていた。2試合連続となる決勝弾。ボールに触れれば入るようなクロスへの入り方はずっと練習していたという田中は、「一発で終わりたくなかった。2試合、3試合続けて活躍することが評価に繋がると思っていた」と充実の表情で話した。

 鳥栖の下部組織時代は中学、高校とエースとして活躍。大会得点王を獲り、日本一も経験した。トップ昇格こそ叶わなかったが、4年間で力をつけて、4年後に必ず戻ると決意して大学に進学してきた。当然、1年目から試合に出て結果を残すつもりでいた。

 しかしそんな田中をもってしても、現実は甘くはなかった。入学して何より驚いたのは、上級生のレベルの高さ。特に同じポジションのFW太田龍之介(3年=岡山U-18)には、「この人がいたら一生試合に出られないんじゃないかと思った」というほどの衝撃を受けたという。

「太田さんはこれまで自分が観てきた中で間違いなく一番のFW。自信がなくなるくらい凄かった。練習中でもずっと点を決めるし、足下にも収まる。でもライバルと言われるくらいの存在になっていかないといけないと思っていて、越さないといけない人だと思っている。だから身近に龍之介さんがいるのは、大きなことです」

 そんな太田は今月11日の法政大戦で左ひじを負傷。終盤2試合の欠場を余儀なくされていた。代役として起用された中で、田中がしっかりと結果を残したという点でも大きな価値がある。「この一戦はこれからの自分を示すためにも重要な試合だったので、連続ゴールが決められて良かったと思います」。

 1年目のリーグ戦出場はわずか3試合。出場時間は合計しても30分に満たなかった。それでも2年目は第8節の国士舘大戦で初先発を果たすなど、前期リーグは5試合に出場して3得点という結果を残した。「1年のころは活躍する自分を思い描くことも難しかったけど、2年生になって前期で3点取れたのは、1年生の時にブレずにやり続けていた結果だと思います」。追加点を決めたのが同じ悩みを共有したFW馬場惇也(2年=磐田U-18)だったことからも、言葉に説得力を持たせている。

 トップ昇格が叶わなかったころは悔しさもあったと振り返るが、今では明治大に進学して良かったと心から思えているという。「上がれなかった仲間たちと4年間でプロに行った選手より成長しないといけないという話をしています」。そして「ここに来てもやれたんだぞというところは、3年後に“帰った時”にみせてやりたい」という言葉が口をつく。夢を掴む日まで、ブレずにやり続ける。

(取材・文 児玉幸洋)
●第96回関東大学L特集

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