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[MOM827]阪南大DF高田椋汰(4年)_孝行息子の恩返し、これから先もずっと…

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DF高田椋汰

[大学サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[10.9 関西学生L後期第5節 関西大1-2阪南大 皇子山陸上]

 5勝1分5敗と調子に乗り切れなかった前期とは違い、後期開幕からは5連勝。首位の関学大と勝点差1の2位まで浮上しているのが、阪南大だ。

 好調を支える原動力となっているのは、7月にブラウブリッツ秋田への加入内定が発表されたDF高田椋汰(4年=日章学園高)。関西大と対戦したこの日も、前半7分に攻撃参加からFW松原大芽(4年=作陽高)の先制点をアシスト。以降も堅実な守備と積極的なオーバーラップを繰り返し、攻守で存在感を発揮した。

「昨年にインカレと関西選抜を経験したのは大きくて、凄く自分に自信が付きました。プレーに余裕ができた」のが今年、好調を維持する要因。「暇な時に昨年の動画を友だちと見るのですが、自分でも若いなって思う」と笑みを浮かべるほど落ち着いてプレーできている。

 今でこそJ内定選手としての違いを見せているが、大学に入ってからは決して順風満帆なキャリアとは言えなかった。MF工藤蒼生(4年=仙台ユース)やMF原耕太郎(4年=西尾高)が入学直後の4月に開幕スタメンを掴む一方、高田のAチームデビューは9月までかかった。

 2年目はAチームに絡めず、主戦場はBチーム。「同期が1年目から活躍しているのに、Aチームに上がれないのが辛かった。同期が活躍するのは嬉しいんですけど、どこかで“活躍するな”みたいな気持ちもあった」。

 1年目から主力として活躍するという入学時に描いていた未来予想図とは違ったが、高田は諦めない。「プロになるというのは、どんな状況でも、カテゴリーを落とされた時も絶対にぶらさなかった。みんなが遊びに行く中でも、僕は遊びを断って、サッカーに集中していた。オンとオフをハッキリすれば良いのですが、そこをぶらしたくなかった」。

 努力の甲斐あって、昨年10月に右SBとしてAチームの試合に出場した高田は、そのまま定位を掴み、今年7月には秋田への加入を決めた。念願のプロ入りを果たした今は喜び以上に安堵の気持ちが強い。

「親に恩返しがしたかったんです。4歳からサッカーをしている。ずっとサッカーしかしていなくて、大学卒業後にサッカーができかったら就職もできないと思っていた。それぐらいの覚悟を持っていました。宮崎から大阪に出てきて凄くお金もかかっているので、絶対にプロになって恩返ししてやるという気持ちはずっと持っていました」

 7月に来季からの加入内定が決まってからは、2か月に渡って秋田の練習参加を経験。プロのスピードにも慣れ、8月7日の水戸ホーリーホック戦では初のベンチ入りを果たしたが、出番は訪れなかった。

 2度目のチャンスは翌週の岩手グルージャ盛岡戦。1-0のリードで迎えた試合終盤にピッチに送り出された高田は、わずか1分の出場時間ながらもJデビューを果たした。

 本人以上にJデビューを喜んでいたのは、これまで支えてくれていた宮崎の家族だ。

「出たのは90分から。今日も出られないと思っていたタイミングだったので、みんなびっくりしていました。一緒に暮らしているおじいちゃん、おばあちゃんもテレビを見ながら泣いていたみたいです。それが一番嬉しかったですよね。僕がプロのピッチに立っているなんて、親からしたら考えられない。ここからですけど、現時点でできる一つ恩返しが出来たかなって」

 9月25日のFC町田ゼルビア戦ではフル出場を果たし、着実にサッカー選手として成長を遂げているが、現状に満足していない。

「1年目から試合に出ないと恩返しにならないし、自分自身もっと上に行きたいという想いもある。試合に絡まないと何も始まらないので、まずは秋田が求めているサッカーを自分自身が理解して、そこのクオリティーをどんどん上げていきたい」

 孝行息子の恩返しはこれから先も続いていく。

(取材・文 森田将義)
●第100回関西学生L特集

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