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[関東]1部昇格に導いた東海大主将は4年間公式戦未出場「チームのためにという思いが自分の原動力」

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涙を流す伊藤大晴主将

[11.26 関東大学L1部参入プレーオフ決定戦 駒澤大0-5東海大 味フィ西]

 試合後、ただ一人タイガージャージでイレブンの輪に交じり、号泣する選手の姿が印象的だった。「感極まったというか、感情的になってしまいました」。左腕にキャプテンマークを巻いたその人物は、今季の東海大で主将を務めた伊藤大晴(4年=山形ユース)だった。

 大学入学前から怪我に苦しんだ。高校時代はモンテディオ山形の下部組織に所属。最終学年はキャプテンを任されたが。しかし高校3年生は左膝前十字靭帯を痛めた影響で、公式戦の出場はわずか3分ほどにとどまった。

 大学入学後も学年主将として仲間の先頭に立って走ってきたが、3年生の秋に今度は右膝前十字靭帯を断裂。復帰を目指した今年秋にも重度の肉離れを起こすなど、不運が続いた。「ここ5年間はサッカーをした記憶がない」。仕方がないことだが、自分の運命を憎む。結局、大学4年間で公式戦の出場が叶うことはなかった。

 それでも「チームのために何が出来るか」を常に考えながら行動してきたという。誰もが認めるキャプテンシー。4年生になった時に主将を決める際も、満場一致で伊藤が選出された。「自分はチームのために動ける人間だと思っている。チームのためにという思いが自分の原動力になる。みんなが頑張っている姿をみると頑張れる」。水汲みなど、それまで下級生がやっていたようなことでも率先してやってきたという。

 そんな主将の思いに応えようと、イレブンも奮起。リーグ終盤は5戦負けなしで走り抜け、3位に滑り込むと、入れ替え戦を圧勝して14年ぶりの1部昇格を勝ち取ってみせた。

 試合には関わることが出来なかったが、間違いなく今年のチームには伊藤の存在が必要だった。「4年生は最高のプレゼントが出来たと思っている。来年は残留だけじゃなく、優勝する勢いでやってほしい」。想いは後輩たちへ託された。3年前は県リーグ降格の屈辱も味わった名門が、来季、1部に帰ってくる。

(取材・文 児玉幸洋)
●第96回関東大学L特集

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