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[大学MOM_1]慶應義塾大FW中川靖章主将(4年)_先制弾!

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[大学マン・オブ・ザ・マッチ]

[4.11 第83回関東大学サッカーリーグ1部リーグ第1節 国士舘大 0-4 慶應義塾大 西が丘]
 
 7年ぶりの1部復帰戦を4-0の大勝で飾った慶應義塾大のイ・ウヨン監督が、この試合のヒーローとして真っ先に挙げた名前はFW中川靖章主将(4年=静岡高)だった。「まずキャプテン。そして4年生がよくやってくれた」。開幕戦で昨年2位の強豪・国士舘大から勝利を挙げたチームにとって、チーム一の運動量で攻守に走り回った主将の存在は欠かせなかった。

 MF中町公祐(4年=高崎高)を中心に抜群の技術を持つ選手が揃う中盤の中で中川靖の存在はやや異端。特別な足技を持つ訳ではなく、スピードの速いパスが回る中でミスを犯すことも少なくない。だがチームにとっての必要性はこの日のピッチ上で改めて示された。
 守備時は届きそうにない距離でも懸命にボールを追って相手ボールに絡んだ。クリアするのをためらった選手には容赦なくその刃が襲いかかった。そしてボールを奪うとすぐさまDF裏に飛び出した。1回目がダメでも2回、3回とチェイス。応援団から「人間じゃない」という驚きの声も上がったほどの“超人的”な献身プレー。そして、無尽蔵なスタミナで走りまわったMFはこの日貴重なゴールで文字通りのヒーローになった。
 前半15分、DF黄大城(2年=桐生一高)の左クロスをファーサイドで頭で合わせる。するとシュートはゴールネットへと吸い込まれた。09年の関東大学1部リーグ初得点。静かに笑みを見せた中川靖にチームメートが集まった。この1点で序盤の緊張が完全に解けたチームは自在のパスワークで国士舘大を翻弄し、計4得点。前線を走り回った主将は2点目と4点目にも絡んだ。
 
 出身校は全国的に無名な静岡高。だが、高校2年、高校3年と2年連続で国体静岡県選抜に名を連ね、04年埼玉国体ではMF狩野健太(横浜FM)らとともに日本一。05年もDF内田篤人(鹿島)らとともに岡山国体で8強へ進出した。古豪・慶大でも1年生時から出場機会を得た。だが、第一線でのサッカーは今年が最後の覚悟で行っている。普段の平日、休日はともに就職活動のため練習に出られるのは現在2日に1回ほど。「コンディションは最悪だった」と振り返る。だが、就職活動で4年生が不在のところを3年生らに「助けられた」ことでチームはよりまとまり、試合で最高の結果を出した。
 チームの目標達成のために身を捧げる男は「今年の目標はインカレ出場と早慶戦3戦全勝。リーダーとして目標を達成させることができれば本望」。文武両道の慶大を泥臭く引っ張るリーダーはこれからもチームのために身を削って闘う。

(取材・文 吉田太郎)
 

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