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[大学]新スタイル不発も慶大が早慶戦制す(慶應義塾大vs.早稲田大)

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[4.17 関東大学1部第2節 慶應義塾大 1-0 早稲田大 西が丘]

 第84回関東大学サッカーリーグ1部は17日、第2節第1日の2試合を行い、国立西が丘サッカー場(東京)の第1試合は最多25回優勝の早稲田大と同7回の慶應義塾大とによる伝統の一戦、早慶戦。両チーム無得点の後半41分に、U-19日本代表MF藤田息吹(2年=藤枝東高)が決勝ゴールを決め、慶大が1-0で勝った。

 試合後、慶大のイ・ウヨン監督は「受け身でパスは安全なところばかり。いいところがなかった」とばっさりと斬り捨て、キャプテンマークを巻いたCB三上佳貴(4年=藤枝東高)も「内容はひどかった。相手に引かれて対応できなかった」と首を捻った。攻撃面での良さを出せなかった慶大は、早大の司令塔・MF中野遼太郎(4年=F東京U-18)や中盤を自由に動き回る07年U-17W杯日本代表MF奥井諒(3年=履正社高)を起点に右SB野田明弘(4年=広島ユース)らにサイドを突かれて再三クロスを放り込まれ、CKは試合を通して10本献上(慶大は1本)。それでも早慶戦を制したのは慶大だった。

 セットプレーでの野田の高精度キックとCB小川諒(4年=柏U-18)の高さは慶大にとって脅威となった。ゴール前での混戦から押し込まれそうになる場面もあった。だが、「DFラインは昨年からずっと一緒にやっている。きょうは危険なところに入って対応できていたし、ゼロではいけるかなと思っていた」と三上が振り返ったとおり、昨年と同メンバーの最終ライン(この日はケガの田中奏一に代わり右SBは金房拓海)で今シーズンに臨んでいる慶大DF陣が肝心なところを締めて得点を許さない。

 ただ、後半5分にSB黄大城(3年=桐生一高)の放ったヘディングシュートがクロスバーを叩き、13分に左サイドから切れ込んだ藤田のラストパスに開幕戦2ゴールのFW深澤良(4年=清水東高)が飛び込むが決定機を活かせず0-0のまま試合は進み、残り時間もわずか。「(試合全体の内容が悪く)引き分けでもいいと考えていた」という選手もいた慶大。それでも後半41分、劇的な決勝ゴールが生まれた。右クロスのこぼれ球を途中出場のFW風間荘志(3年=暁星高)が粘ってつなぐと、同じく途中出場のFW森田達見(2年=川崎F U-18)が右サイドから絶妙なクロス。これを逆サイドからPAへ入り込んでいた藤田が右足ダイレクトで決勝ゴールを叩き込んだ。

 昨年は抜群のテクニックと判断力を兼ね備えた中町公祐(現福岡)と織茂敦の両ボランチが卒業した慶大は今年、サッカースタイルが変わった。両選手と清水エスパルス特別指定選手のトップ下・MF河井陽介(3年=藤枝東高)のトライアングルが織り成す緩急自在のパスワークとサイドチェンジなど常に高いポゼッションで試合を支配していたが、今年は2トップのスピードを活かした縦に速い攻撃が主体となった。3ボランチやDFラインからロングボールを配給できる選手も多く「昨年とは全然違うサッカーを目指している」(イ・ウヨン監督)。だが、この日は早大の堅守の前にスペースを消されて前線でキープすることができず、頼みの河井もなかなか前を向けない状況。それでも交代出場した2トップの仕事から年代別代表のホープ・藤田の決勝弾で勝ち点3をもぎ取った。

 チームは昨年勝ち点4差で5位に終わり、全日本大学選手権の出場権を逃していた。勝ち点の重みを痛いほど感じているだけに河井も「この内容で勝ち点3獲ったのは大きい」と胸を撫で下ろしていたが、選手間の目標も昨年以上に高い位置に置かれている。三上は「目標は高く日本一。日本一になるためには全国大会出場の4位までに入らなければならない。簡単なことではないけえど、関東で4位以内に入る実力があれば全国優勝できる実力があると思う。それを目指しつつも、足元を見ながらしっかりとやっていきたい」。新スタイルでまずは関東4強入りを目指す

 一方敗れた早大だが、古賀聡新監督は試合後、選手たちに「下を向く内容ではない。次の試合で勝つために切り替えよう」とメッセージ。昨年は7位、一昨年は10位と日本一に輝いた07年度の後苦しいシーズンが続いていたが新指揮官は「トレーニングの取り組みには満足している。4年生を中心に積極的に作り上げようとしている。前向きな姿勢が出ているし、内容もよくやっている」と評価。この日は敗れたものの、圧倒したセカンドボールの攻防戦や切り替えの速さなど表現していた良さを活かして次節以降の試合に臨む。

(取材・文 吉田太郎)

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