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東洋大1-0完封勝利、「非情通告」にエースが奮起(東洋大vs東京農業大)

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[6.19 関東大学2部第11節 東洋大 1-0 東京農業大 尚美大G]

 第84回関東大学サッカー2部リーグは13日に6試合を行い、埼玉・尚美大グラウンドでの第1試合は、ここまで4勝1敗5分で5位につけている東洋大が9位東農大と対戦。1-0で勝利し、順位を一つ上げ、前期リーグを4位で終えた。


 うだるような暑さの中で行われた今試合。東洋大は、主導権を握らなければならないはずの相手に対し、立ち上がりからミスが多く、なかなかゲームは落ち着かない。中盤でボールを失う場面が目立ち、東京農業大MF吉野喜貴(4年=浜名高)らのサイド突破を再三許してしまう。裏を取られ、スルーパスから決定的な場面を間一髪で防ぐという状況が続く。すると前半30分、指揮官の非常通告がなされた。

 
 「馬渡! 5分やる!」

 相手のファールで時計が止まった瞬間。静かなピッチ上に、指揮官の声が響いた。
立て続けに、右サイドの高い位置を相手に取られていたMF馬渡和彰(1年=市立船橋高)へ、異例の残り5分「交代宣告」が下されたのだ。

 「5分でダメなら交代というのと、暑さから締りのないチームへ喝を入れる意味もあった」(西脇監督)というこの一言が、チームへのカンフル剤となる。緊迫感が増し、全体の運動量、ボールへの執着心が高まる。左サイドのMF岡田将知(3年=武南高)、右サイドの馬渡がサイドからの攻撃を展開、守備にも奔走。セカンドボールも必死に拾い、自陣内でプレーする時間が増えていく。

 そして直後の同38分、中央のMF中里壮太(3年=大宮ユース)から馬渡へロングボール。右サイドでボールを受け、果敢にドリブル突破を仕掛けると、中央へと切り込み先制点。リミットは5分と言われ、焦っていた馬渡もほっとした表情をみせた。

 後半に入っても、サイド攻撃を中心に相手を押し込む東洋大。その後も、運動量を落とすことなく戦い抜き、1-0で勝利を挙げた。追加点を挙げられなかったことは課題だが、1-0でも確実に勝ちぬくチーム力は身に付いてきている。

 前期リーグを終え、5勝1敗5分でリーグ4位。勝ち点を20に積み上げた。順位は1部昇格を目指すチームとしては「もう一つ」といえるものだが、守備面ではかなりの成果を挙げている。

 ここまでの失点はわずか4。リーグ最少失点だ。加えて被シュート数も全11試合で60とリーグを通して、最少の数字。リーグ屈指の守備力には自信を持っていい。

 今年は西脇監督が東洋大監督に就任してちょうど4年目となる。「まずは守備からチームを作っていく」そこからスタートした東洋大の「西脇サッカー」が、ようやく形になりつつある。今節の「一言」でチームに流れを引き戻すことからも監督の意思が選手へと強く浸透しているのはよく分かる。

 守備面の強化に成功し、「東洋大サッカー」の基盤が見えてきた今、次の課題は何よりも攻撃力だ。後期リーグで1部昇格圏内に食い込むためには、得点力アップがカギになる。前期は「5分け」しているが、これをいかに「勝ち」に持っていけるか。この中断期間で、いかに攻撃面に磨きをかけられるかがポイントとなる。

 昨年度まで東洋大には、前期リーグで得点ランク首位に立つFWが2人いた。しかし、彼らが卒業した今、絶対的なエースFWはいない。今期は全員がゴールへの姿勢をみせ、戦っていくことが必要不可欠だ。堅守で奪って、きれいにパスでつなぐサッカーを目指しがちではあるが、まずは貪欲に、とにかくゴールを狙うといった泥臭さも必要となる。

 最少失点を誇る守備力に、攻撃力がついてくれば、もう怖いものはない。悲願の1部昇格へ。この夏に、是が非でも決定力不足を克服しなければならない。


<写真>1年生ながら先発に定着している馬渡(右)。監督の期待にゴールで応えた
(取材・文 片岡涼)

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