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[早スポ]早稲田大、砕け散った名門のプライド・・・2年連続で慶大に完敗

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[早稲田スポーツ ゲキサカ版]
[6.25 第61回早慶サッカー定期戦 早稲田大 0-2 慶應義塾大 国立]

 国立競技場に12,230人の大観衆を集めて行われた伝統の早慶定期戦(早慶戦)。完敗に終わった昨年の雪辱を期す早稲田大だったが、序盤から圧倒的にボールを支配して攻め込む慶應義塾大の前に成す術なく、0-2で敗れた。ワセダはこれで、第4、5回大会以来、実に56年ぶりとなる早慶戦2連敗。昨年まで30勝18分12敗とワセダ優位で推移してきた伝統の一戦の力関係は、完全に逆転した格好だ。

 ワセダ はここ1ヵ月ほど固定されている4―4―2のダブルボランチの一角に、CBが本職のMF岡根直哉主将(4年=初芝橋本高、清水エスパルス加入内定)を置く布陣をこの日も踏襲した。リーグ戦では結果に結びつかなかったものの、連携面での積み重ねにはチーム全体で手応えを感じ始めていたはずだった。しかし、キックオフとともに期待は失望に変わる。立ち上がりから鋭い出足の慶大に対し、ワセダの動きはもどかしさを感じるほどに重い。「ディフェンスラインと中盤の間にスペースがあった」DF野田明弘副将(4年=広島ユース)。強力な慶大攻撃陣はこの隙間を見逃すはずもなく、FW河井陽介(3年=藤枝東高)が起点となってバイタルエリアに効果的なボールが次々と供給され、ワセダは完全に後手に回ってしまう。そして29分、ゴール前約25mで与えたFKはカベをすりぬけ、GK菅野一弘(4年=早稲田実高)が懸命に伸ばした左手も届かず先制を許してしまった。

 流れを変えられないまま迎えた後半。開始早々の5分に大きなプレーが訪れる。ゴール前に放り込まれたボールに競り合ったDF幸田一亮(4年=横浜FMユース)が倒されたかに見えたが審判の笛は鳴らず、こぼれたボールをフリーで受けた慶大・MF加美義人(4年=済美高)がそのままゴールに流し込んだ。幸田へのファールを主張するワセダの猛抗議にも判定は覆らず。試合の大勢を決する1点が電光掲示板に灯った。失点直後、MF中野遼太郎(4年=F東京U-18)、FW皆川翔太(4年=ヴェルディユース)、MF柿沼貴宏(3年=大宮ユース)と攻撃的な交代カードを立て続けに切って得点への執念を見せるワセダだったが、最後まで見せ場すら作ることができず試合終了。エンジのユニフォームが次々と崩れ落ちる様は、まるで昨年のリプレイを見ているかのようだった。

 屈辱的な敗戦である。ワセダは慶大に何もさせてもらえなかったと言っても過言ではない。まず運動量で優位に立たれ、中盤を制圧されてしまった。相手のプレスが厳しく、苦し紛れのパスはカットされ、単発のドリブルもボールロストを繰り返す。核となるべきボランチの岡根主将は精彩を欠き、攻撃の起点に成り得なかった。ワセダが放ったシュート数はわずか2本、これでは勝負にならない。

 一方の守備陣は、河井を自由にさせ過ぎたことが大きい。もちろん十分に警戒はしていたはずだ。しかし、幅広い視野で慶大の攻撃を自由自在にコントロールする背番号10は役者が一枚上だった。もう一段階激しくプレッシャーをかけにいってもらいたかったというのが正直なところ。後期リーグ戦に向けてフォーメーションの抜本的な見直しも含めて、チームとして目指すべきサッカーの形を再確認する必要があるのではないだろうか。

 国立に響き渡る『若き血』の大合唱を、優勝トロフィーを誇らしげに掲げる慶大イレブンの姿を、選手たちは悔恨の涙に暮れながら見つめた。「出られなかった人たちに申し訳ない」(幸田)。試合後の通路で発せられた言葉からは、『ア式』の名を背負う者の矜持までは失われていなかった。ならば、彼らがやるべきことは明確だ。来年1月、大学サッカー日本一を決める決勝戦のピッチに立つこと。舞台はもちろん聖地・国立。絶対に戻ってくる――このままでは終われない。

(記事 塚本一成、カメラ 千葉太一)

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