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[プレミアリーグWEST]「速さの貯金」に上限額はなし。C大阪U-18は7ゴールを奪い切って清水ユースに大勝!

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ゴールを決めて喜ぶFW木下慎之輔セレッソ大阪U-18は7発大勝!

[7.2 高円宮杯プレミアリーグWEST第11節 C大阪U-18 7-1 清水ユース セレッソ大阪舞洲 天然芝グラウンド]

 重ねた7つのゴール。いろいろなパターンはあれども、彼らがみんなで意識してきたキーワードが、共有された結果であることは間違いない。『速さの貯金』をどれだけ貯められるか。それがこのスタイルを推し進める上で、より重要になってくるわけだ。

「技術が正確になればなるほど、1人1人のプレーと正確さが速くなって、チーム全体としての“貯金”が増えるから、最終的にゴール前になった時にどれだけフリーの選手ができるかというのも、それがもう“貯金”の積み重ねなので、そう考えると『みんなでどんどん“貯金”を出し合っていきましょう』と」(C大阪U-18・島岡健太監督)。

 さらなる成長を求め続ける、飽くなき向上心が導いた大勝劇。2日、高円宮杯 JFA U-18 サッカープレミアリーグWEST第11節、セレッソ大阪U-18(大阪)と清水エスパルスユース(静岡)が対峙した一戦は、前半だけで4ゴールを奪ったC大阪U-18が、後半も攻撃の手を緩めずに3点を追加。7-1というスコアでリーグ5勝目を挙げている。

 立ち上がりは清水ユースの出足が上回る。前半1分には高い位置でボールを奪い取り、FW斉藤柚樹(3年)のシュートはC大阪U-18のGK春名竜聖(3年)にキャッチされたものの、2分にもDF渡邊啓佳(3年)のパスから、MF仲野丈翔(2年)が枠を越えるフィニッシュまで。5分にも仲野が枠内シュートを打ちこみ、春名がファインセーブで凌ぐも、ゴールへの意欲を前面に打ち出していく。

 だが、先制点はセットプレーから。C大阪U-18は13分に右サイドでCKを獲得すると、「キーパーがちょっと前に出ていたので、上手く風に乗ってくれました」と振り返ったMF皿良立輝(2年)のキックが、GKも弾き切れずに混戦からゴールラインを割ってしまう。記録上は皿良の得点。意外な形で試合は動く。

 以降は均衡状態が続いた中で、終盤にホームチームが一気に牙を剥く。37分。FW木下慎之輔(3年)がFKをクイックで始め、ボールを受けた皿良は左へ流すと、FW末谷誓梧(3年)の左足シュートは確実にゴール右スミを捉えて2点目。39分。MF清水大翔(2年)を起点に、今度は末谷のスルーパスから皿良が右足ループで確実に3点目。

 45+2分。MF伊藤翼(3年)、清水、MFエレハク有夢路(1年)とスピーディーに回ったボールを、「前を向いた時にディフェンスがちょっと下がっていたので、これは行けると思って」皿良はそのまま左スミのゴールネットへ鮮やかに突き刺す。12番のアタッカーは前半だけでハットトリック達成。ホームチームが4点のリードを手にして、ハーフタイムを迎えた。

 後半はねじを巻かれた清水ユースに開始早々の決定機。1分。FW田中侍賢(2年)とのワンツーで右サイドを抜け出した渡邊のグラウンダークロスに、MF加藤大也(2年)が合わせたシュートは枠の右へ逸れるも、惜しいシーンを創出すると、5分にはDF石川晴大(3年)のスルーパスから、再び訪れた絶好のチャンスを今度は加藤がきっちりゴール右スミへグサリ。4-1。アウェイチームも意地を見せる。

 嫌な流れを断ち切ったのは、守護神のアグレッシブなトライ。8分。「今年に入ってから、自分の中でアシストを1年間通して目標としていて、『今日はチャンスだな』と思っていたので狙ってみました」という春名はゴールキックを素早く前線へ。裏へ抜け出した木下のラストパスを、エレハクがゴールへ流し込む。「ロングフィードも僕の特徴です」という春名のキックから、1年生アタッカーがプレミア初ゴール。再び点差は4点に開く。

 桜のラッシュは止まらない。9分。左サイドを抜け出した皿良が中央へ折り返し、末谷を経由して、飛び出したGKを浮き球で左にかわした木下が、角度のない位置から蹴り込んだボールがゴールラインを越える。11分。MF木實快斗(1年)が縦パスを打ちこみ、木下のパスを引き出した皿良は右に持ち出しながら右足一閃。DFをかすめたボールは右スミのゴールネットへ到達する。「右足も一応ユースに入ってからは練習しているので、その成果が出ているのかなと思います」というレフティは、これで自身4得点目。チームにも7点目が刻まれた。

 C大阪U-18はディフェンス陣も安定した守備を披露。「1人1人が守る幅も以前よりは少しずつ広くなっていると思います」と話す、この日のキャプテンマークを巻いたDF和田健士朗(3年)とDF白濱聡二郎(2年)で組むCBコンビを軸に、攻撃的な交代カードを切り、反撃態勢を整える清水ユースのアタックも、丁寧に潰していく。

 ファイナルスコアは7-1。「練習の中から3年生中心で声を掛けることは去年と比べると多くなってきて、去年7連敗をした時に試合に出ていた選手も今の3年生には多かったので、自覚を持っていろいろなことに取り組んできた中での成果が出てきていると思います」と春名も口にしたように、下級生の躍動を促しながら、要所を3年生が引き締めたC大阪U-18が勝ち点3を積み上げる結果となった。

 決して両者の間に、スコアほどの実力差があるようには見えなかった。最終ラインでチームを束ねた和田も「点が入ったシーンに関しては、自分たちのやりたいことというか、『速いサッカーで、正確に』というのはできていました」と手応えも口にしながら、「他のところでも、もっと正確にやっていたら、もっと点が入っていたと思いますし、そういうところがまだまだだと思います」と言葉を続ける。

 この『速いサッカーで、正確に』ということが、最近のC大阪U-18がより深化させたいポイントだ。島岡監督は冒頭でも触れた『速さの貯金』の真意をこう語る。「余計なタッチ1個するだけで、『ああ、貯金がなくなった』と。次の味方に余裕を持たせるための技術が“速さ”であって、もっと“貯金”がたまってくるとどうなるかというと、相手が引いて守るとかじゃなくて、相手がずっと押し込まれた状況を作れるはずなんですよ。まだまだそこまで行っていないというのは、正確な部分が足りていないということだと思います」。

 今年のチームには“速さ”を象徴する選手がいる。ストライカーの木下だ。常にゴールを奪うための最適な位置を見極め、そこへ最短距離で向かい続ける。指揮官が明かした試みが興味深い。「木下は最前線でその“速さ”を、ボールが出てこないにしてもやっていると。いつの試合だったかの時に、『一番速くゴールを目指すことをできているのはシン(木下)や。そこにボールが出ていく回数が少ないから、もっとシンにボールが出ていくような状況を作らないとダメだ』と。一番速い者に付いていかせようとしたんですよね」。

 この日の5点目のシーンは木下が動き出すのとほぼ同時に、GKの春名がゴールキックを相手ディフェンスラインの裏へ、正確に送り届けている。そこから皿良の得点へ繋がったわけだが、「今まではキックの飛距離が出なかったんですけど、そこもどんどん出るようになってきて、アシストが現実的になってきたので狙ってみました。シンが決めたらアシストだったんですけど(笑)」と笑った守護神でさえも、攻撃での“速さ”を意識しているからこそ、このゴールが生まれている。

「まだまだ時間と場所を使い過ぎるから、その2つがもっと狭くなれば、その“速さ”ももっと速くなると思うんですけど、去年だともっとゆったりした感じで始まったところから、今年は『ああ、これが“速さ”なんだ』ってみんながわかっている分、その“速さ”がちょっと自分の頭の中に描けるようになって、そこを目指し始めていますし、そういう意味では、いろいろな“速さ”は出てきているかなと。でも、まだまだできていないところも多いので、もっと本気でそこに挑まないといけないと思います」(島岡監督)。

『速さの貯金』に上限額はなし。貯めて、貯めて、それを一気に使い切る「ここぞ」というタイミングの先には、きっと彼らも見たことのない“高価”な景色が広がっている。

(取材・文 土屋雅史)
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