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[プレミアリーグWEST]「ガンバの黄金期を取り戻す」。アカデミーの総力を結集したG大阪ユースが粘って粘って今季リーグ初勝利!

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ガンバ大阪ユースは粘って粘って今季リーグ初勝利!

[7.3 高円宮杯プレミアリーグWEST第11節 G大阪ユース 1-0 名古屋U-18 OFA万博フットボールセンター グラウンドB]

 この日戦ったグラウンドの先は、トップチームの選手が躍動するパナスタのピッチへと続く道へ、間違いなく繋がっている。そして、この日の試合を見ていた12,3歳の若き青黒の少年たちの未来は、目の前で勝利を掴み取った“かっこいいお兄さん”たちがプレーするユースへと、同じように繋がっているのだ。

「今日はジュニアユースの1年生の子たちもボールパーソンや担架で手伝ってくれていて、試合後に本部の近くにいた子とハイタッチしたんですけど、そういう感謝も感じながらプレーできましたし、見に来てくれている保護者やサポーターの方もたくさんいたので、その前で勝てたのが本当に嬉しかったです」(G大阪ユース・桒原陸人)。

 アカデミーの総力を結集して、ようやく手にした今シーズンのリーグ初勝利。3日、高円宮杯 JFA U-18 サッカープレミアリーグWEST第11節、ガンバ大阪ユース(大阪)と名古屋グランパスU-18(愛知)が激突したゲームは、後半19分にFW鈴木大翔(3年)が先制点を叩き出したG大阪ユースが、最後まで高い集中力を保って失点を許さず、“ウノゼロ”勝ち。開幕から7試合目にして初めて勝ち点3を手にしている。

 開始早々に先制のチャンスを掴んだのはアウェイチーム。前半4分。相手のパスミスを拾ったMF牧嶋波亜斗(3年)がスルーパスを通すと、走ったFW貴田遼河(2年)がペナルティエリア内でG大阪ユースのGK張奥林(2年)と接触して転倒。主審はPKを指示する。キッカーは貴田自ら。左スミを狙ったキックは、しかし張が横っ飛びでワンハンドセーブ。絶好の得点機を逃してしまう。

 それでも名古屋U-18の攻勢は続く。9分にはMF野田愛斗(2年)を起点に、DF西凜誓(3年)が上げた左クロスを、ニアで合わせたFW遠山湧斗(3年)のヘディングは枠の左へ。18分にも牧嶋が右へ流し、上がってきたDF小嶋健聖(3年)は中央へ。貴田のシュートはDFに阻まれ、こぼれに反応したMF鈴木陽人(2年)のシュートはクロスバーにヒット。ゴールには至らない。

 ホームチームも徐々に攻撃のリズムが。21分にはMF安達晃大(3年)のパスから、左へ開いた鈴木のクロスに、久々にユースへ帰ってきたFW南野遥海(3年)のボレーは枠の上へ外れるも、好トライ。35分には鈴木が、44分には安達が、45分には南野が、それぞれ悪くないフィニッシュを。「PKを奥林が止めて、結果的に前半を失点ゼロで持ってこれたのは大きかったですね」とはキャプテンのDF桒原陸人(3年)。最初の45分間は0-0で推移する。

 後半も最初の決定機は名古屋U-18。10分。牧嶋を起点に、右からMF宇水聖凌(3年)が中央へグラウンダークロス。遠山が叩いたシュートはまたもクロスバーに弾かれ、こぼれに反応した鈴木の枠内シュートは張がファインセーブ。12分にも小嶋のフィードを貴田が落とし、牧嶋のミドルは枠の上へ外れるも、「選手たちは自分たちの戦いをしっかり貫き通して、前からしっかりプレッシャーに行き続けて、アグレッシブに攻撃していました」と古賀聡監督も言及したように、あと一歩というシーンを創出し続ける。

 ところが、先に歓喜の瞬間を迎えたのは青黒の勇者たち。20分。左サイドでのスローインをDF和泉圭保(2年)が投げ入れ、受けたMF大倉慎平(1年)は鈴木とのワンツーで左サイドを切り裂き、中央へ。ニアでFW日笠蓮康(2年)が潰れると、ボールは鈴木の前に転がってくる。

「最初は『ファーに打とうかな』と考えていたんですけど、相手の足が出てくるのが見えて、それで『ニアが空いているな』と思って」右足でニアサイドを狙った軌道は左スミのゴールネットへ力強く転がり込む。「もう嬉しさしかなかったです」と笑ったストライカーは、これがプレミアリーグ初ゴール。G大阪ユースが1点のリードを手繰り寄せた。

「攻めている時間が多かった中で、一発を決められてしまった」(GK北橋将治)名古屋U-18は、交代カードも切りながら一段階アクセルを踏み込む。23分には遠山が右サイドへ振り分け、小嶋のクロスから牧嶋が放ったシュートは、張が懸命に弾いたボールが三たびクロスバーを直撃。41分にも西の左スローインから、カットインで中へ切れ込んだ貴田のシュートはわずかにゴール右へ。どうしても1点が奪えない。

 45+1分。右サイドで相手のドリブルに食らい付いたDF小幡季生(3年)は、果敢なスライディングタックルでマイボールのゴールキックを勝ち獲る。45+3分。途中出場のFW池田怜央(3年)が懸命に前からプレスを掛け、相手の前進を阻止してスローインに逃げる。45+4分。エリア付近に侵入してきた相手のドリブルを、DF井上秀悟(3年)は間合いを見極め、きっちりクリアする。

「今日はセカンドボールを拾うところや、中盤での球際で戦うところで、五分五分のボールをマイボールにできましたし、3年生を中心に『戦うぞ』という気持ちは見せられたのかなと思います」と口にしたのは桒原。そして、タイムアップの笛が耐え続けた選手たちの耳に届く。

「やっぱり勝つのって難しいですし、相手も必死で、簡単には勝てる試合はないですけど、このチームでのプレミア初勝利というのが凄く嬉しかったです。ホンマにやっと勝ったなと」(桒原)。爆発した青黒の歓喜。1-0。粘り強く、逞しく戦い抜いたG大阪ユースが、とうとう今シーズンのリーグ初白星をもぎ取る結果となった。

 試合後。おそらく担架要員を担当していた少年が、興奮気味に語っていた言葉が偶然耳に入ってきた。「ホンマにメッチャ特等席で試合見れたし、真ん中にいたおかげでキャプテンの人とハイタッチもできたわ!」。

 この日の運営を手伝っていたのはジュニアユースの1年生たち。彼らにしてみれば、目の前でこのレベルの試合が見られた上に、感動的な勝利まで味わうことができたわけで、とりわけ桒原とハイタッチまでしてしまった少年にとっては、あるいは一生忘れられない経験になったかもしれない。そのことを伝え聞いた“キャプテン”の言葉が、冒頭のそれである。
 
 決勝ゴールを叩き出し、ヒーローとなった鈴木もこのアカデミーでプレーすることの意義を問われ、次のように答えている。「このエンブレムを背負っていることには凄く責任がありますし、周りからもそういう目で見られるので、常に行動や言動も見られていると思って、そういう部分は意識してやっています」。

 もちろんガンバのエンブレムが縫い付けられたウェアに袖を通しているアカデミーの選手は、ジュニアであっても、ジュニアユースであっても、誰もがパナスタのピッチに立つ瞬間を夢見て、日々のトレーニングに向き合っている。だが、その過程にはこの日の人工芝のグラウンドで、かくも熱い、かくも心を揺さぶるゲームを戦うことのできるユースの選手たちが、間違いなく身近な目標として捉えられているはずだ。

「僕らが考えているのは何人があのスタジアムで活躍できるかで、(坂本)一彩が今ああやって頑張っていて、彼にどれだけのヤツが続いていけるか、なんです。片野坂さんがトップチームに来てくれて、ああいうふうにやってくれているところに、僕らもたくさんの選手を出していって、ガンバの黄金期を取り戻せるようにしていきたいんです」(森下監督)。

 パナスタに敷き詰められた、鮮やかな天然芝のピッチの“1つ手前”。憧れの舞台のすぐ真横にある人工芝のグラウンドを、ユースの若武者たちがこの日のような熱量でどれだけ覆い尽くせるか。それが、そのまま指揮官が口にした『ガンバの黄金期を取り戻す』ための大きなカギになることに、疑いの余地はあるまい。

(取材・文 土屋雅史)
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