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名古屋U-18が後半AT決勝弾で今季5度目の逆転勝利!14戦ぶり黒星の神戸U-18は戴冠を懸けた勝負のラスト2試合へ

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名古屋グランパスU-18は後半ATの決勝弾で劇的な逆転勝利!

[11.26 高円宮杯プレミアリーグWEST第21節 神戸U-18 1-2 名古屋U-18 いぶきの森球技場 Cグラウンド(人工芝)]

 きっと勝ちたい気持ちに理由なんてない。優勝が懸かっていても、あるいは残留が懸かっていても、そのどちらでもなくても、目の前の試合に全力を注ぎ込み、勝ったら喜び、負けたら悔しがる。お互いが勝利を目指し合うシンプルな姿勢が、この好ゲームを創り上げたのだ。

「ウチは今年4回逆転勝ちをしているので、今日で5回目なんですよ。ですから、0-1でもうろたえることがないというか、『まだまだ行ける』という感じで、1-1になったらもう以前の自信がオーバーラップすると思うので、そこは彼らの逞しさが凄く感じられたなと思います」(名古屋グランパスU-18・古賀聡監督)。

 優勝へと突き進む絶好調のクリムゾンレッドを止めたのは、意地の若鯱軍団。26日、高円宮杯 JFA U-18 サッカープレミアリーグWEST第21節、13戦無敗を続ける2位のヴィッセル神戸U-18(兵庫)と5位の名古屋グランパスU-18(愛知)が対峙した一戦は、前半に神戸U-18がオウンゴールで先制したものの、後半にDF西凜誓(3年)のPKで追い付いた名古屋U-18が、後半アディショナルタイムにFW遠山湧斗(3年)が挙げた決勝点で、2-1と今シーズン5度目の逆転勝利を収めている。

「安部(雄大)監督も『今の僕たちに勝てるチームはなかなかいない』と言ってくれていましたし、『自分たちは負けていない』という自信を持ってやれています」とキャプテンのDF寺阪尚悟(3年)が話したように、5月以降のリーグ戦で13試合負けなしを続けている神戸U-18は、この日も序盤からアグレッシブに立ち上がる。前半7分にはMF永澤海風(3年)の左CKに、MF坂本翔偉(2年)が合わせたヘディングは、名古屋U-18のGK北橋将治(3年)のファインセーブに阻まれたものの、直後のCKを再び永澤が蹴り込むと、最後はDF横山志道(3年)が押し込んだボールをDFも掻き出せず、記録はオウンゴールに。幸先良く先制点を奪う。



 神戸U-18が無敗期間に挙げた9勝のうち、8勝は先制したゲーム。「前半の立ち上がりは自分たちの思うようにできていて、先制点も獲れてという、いつも自分たちがホームで勝つ時はこういう勝ち方なんです」とはDF本間ジャスティン(2年)。繋ぐところと蹴るところをハッキリさせつつ、ドイスボランチのMF田代紘(3年)とMF安達秀都(3年)も果敢にセカンドを回収し、丁寧にサイドへ配球。右のFW蘓鉄航生(3年)が縦に突き進めば、左の永澤は時間とタメを捻出。「最終ラインの4枚でコミュニケーションが取れているというのが、守備の良いところだと思います」というDF村井清太(3年)、寺阪、横山、本間で組んだ4バックも安定したパフォーマンスを披露し、攻守のバランスも絶妙だ。

「前半は球際やセットプレーで競り合いの強さを見せられて、ちょっと怯んだ部分がありましたね」とは名古屋U-18の古賀監督。ただ、「前半は前線から良い形で前向きにボールを奪えて、ショートカウンターからゴールに迫れるシーンは何回かあったんですけど、そこで1点しか決められなくて、前半にもっと得点を重ねられていたら、後半はもっと落ち着いたゲーム運びができたのかなと思います」と安達が話したように、ホームチームにさらなるチャンスはありながら、1-0で終わった前半が勝敗の行方を混沌とさせていく。

 試合の流れを変えたのは1つの選手交代だった。後半12分。名古屋U-18は奮闘していたMF西森悠斗(1年)に代えて、U-17日本代表の海外遠征から帰国したばかりのFW貴田遼河(2年)を投入。「10番(貴田)が入ってきてからセンターバックとボランチの間に落ちてきて、そこでボールを受けて、上手くターンされて前を向かれてということが増えて、やりにくくなりました」(本間)。前線に明確なポイントができたことで、アウェイチームの攻撃に前向きの矢印が生まれていく。

 23分。MF牧嶋波亜斗(3年)のパスを起点に、FW杉浦駿吾(1年)が繋ぐと、エリア内へ積極的に侵入した右SB小嶋健聖(3年)がPKを獲得する。キッカーはキャプテンマークを巻く西。渾身のキックがゴールネットを揺らす。1-1。名古屋U-18の執念が、スコアを振り出しに引き戻した。

 残り時間は20分強。潮目が変わる。攻める名古屋。守る神戸。「PKは仕方がない部分もありましたし、失点の後にまだ時間は十分あったんですけど、焦ってしまって、前に前に大きく蹴ってしまって、後ろから組み立てていくような自分たちのサッカーがあまり出せなかったです」(寺阪)。それでも厳しい試合も勝ち点1は重ねてきたホームチームも、水際での力強さは抜群。寺阪と横山を中心に、相手のアタックを1つずつ凌いでいく。

 39分。神戸U-18にFKのチャンス。スポットに立ったのは「『プロになる選手ってあんぐらいなんや』とは思われないようにはプレーしようと思っています」と語った、プレミアでチームトップの10得点を叩き出しているFW冨永虹七(3年)。右足で打ち込んだキックは枠を捉えるも、ここは北橋がビッグセーブで応酬する。

 激闘に決着を付けたのは、名古屋U-18の9番だった。45+1分。「最初はターンした時にサイドの健聖に散らそうと思ったんですけど、駿吾に出して自分で行けるなと思ったので、付けて入っていって、迷わず振れました」。杉浦からのリターンを受けた遠山が右足を振り切ると、相手に当たってコースの変わった軌道は、そのままゴールネットへ吸い込まれる。

「もう『頼むから入ってくれ』と思っていて、強く振ったからああやって前に転がりましたし、強気なプレーがゴールに結び付いたので、決まった瞬間はメチャメチャ嬉しかったです。今シーズンは点を獲ってもベンチに行くことが多くて、サポーターのところに初めて行ったので、それもメチャメチャ気持ち良かったです」。ファイナルスコアは2-1。神戸U-18は実に14試合ぶりの黒星。鮮やかな逆転勝利で名古屋U-18がサポーターと歓喜を分かち合った。



 実は後半戦に入って、名古屋U-18も好調を続けていた。「ちょうど今日のミーティングで話していたのは、後半戦の順位を直近10試合で計算して出していったら、神戸さんが7勝3分けの1位で、僕らが6勝2分け2敗の2位なんですよね。僕らはシーズンの優勝はできないですけど、後半戦で成長した証という意味で、『後半戦で優勝しようよ』ということで、勝手に都合の良いふうにデータを使ってモチベートしているんですけどね(笑)」と古賀監督は笑ったが、選手たちも確かな成長の手応えを感じていたのだ。

「前期のあの苦しい夏の時期だったり、連敗して勝てなかった時期に、あれだけオールコートでオールタイムで、アクションとプレスという、本当に走ることを諦めずに信じ続けて、やり続けた結果、この涼しくなってきた終盤の時期に、そういう力を全員が出せていることが、今のチームの強みになっているので、そこで自分たちのストロングが出せていることが勝てている要因かなと思います」(遠山)。苦しい時期を経てきたチームに、掲げてきた『All court all time ACTION, All court all time PRESS』は確実に浸透していた。

「自分たちは頂点を目指すことを掲げてきて、それは叶わなくなりましたけど、少しでも上の順位を狙い続けることと、後輩たちに少しでも良い実績を残してあげることが使命だと思うので、来週が最終節ですけど、全員で勝って終わりたいです」(遠山)。名古屋U-18はホーム開催の最終節、集大成の一戦に改めて全員で向かっていく。

「最悪引き分けだったらまだ全然希望もありましたし、もう後ろは失点なしで行こうという話はしていたんですけど、最後にちょっと甘かったのかなと思います」と寺阪も口にした神戸U-18は、5月15日の第7節・ジュビロ磐田U-18戦以来となる半年ぶりの黒星を、ホーム最終戦で突き付けられた。もともと30日に第5節延期分の東福岡高戦が組み込まれていたため、残り3試合をすべて勝てば優勝を引き寄せられたが、その目論見はいったん霧散した。

 ただ、すぐに次の試合はやってくる。「今日は自分がPKを与えたせいで負けたと思っているので、残り試合は自分がチームを勝たせてファイナルへ連れていけるように、もっと来週の練習からもっと生き生きとしたプレーができるように、心を入れ替えてやろうと思っています」(村井)「ラスト2試合は絶対勝ちたいですし、得失点差も稼がないといけないので、フォワードとして複数得点して、チームを勝たせられるように頑張ります」(冨永)「厳しい前半戦を経たことでファイナルは見えてきたものなので、それを掴み取ろうとしか思っていないです」(本間)。選手たちは既に気持ちを切り替えている。

「もう他力ではありますけど、そこは自分たちを信じてやるしかないと思うので、絶対にあと2勝できるように、全員で前だけを向いてやっていきたいなと思います」。寺阪の言葉も力強く響く。ここからのクリムゾンレッドの若武者に残されているのは、2試合か、3試合か。最終盤に差し掛かったプレミアリーグWESTの覇権争い、大混戦。

(取材・文 土屋雅史)
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