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「プレミアリーグに上げた代」へのリスタート。帝京は東京Vユースに4発快勝でプレミアプレーオフ進出権獲得!

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帝京高は4発快勝でプレミアプレーオフ進出権を獲得!

[11.27 高円宮杯プリンスリーグ関東1部第17節 帝京高 4-0 東京Vユース 帝京大学グループ千住総合G]

 選手権という最大の目標を失ったのだ。そんな簡単に切り替えられるはずがない。それでも、次の試合はやってくる。ならば、自分たちにできることを、自分たちが残せるものを、みんなで、最後まで、全力で。

「プリンスリーグに上げてくれた三浦颯太さんたちの代のことも、自分たちに関わりはないですけど、『プリンスに上げた代だ』とちょっと違う目で見る部分はあるので、それなら僕たちが『プレミアリーグに上げた代』と言われたいなって。自分たちはその舞台でできないかもしれないですけど、最後に帝京のためにできることをやって終わりたいなという想いはありますね」(帝京高・伊藤聡太)。

 ここからの戦いは、歴史に残る『プレミアリーグに上げた代』へのチャレンジ。27日、高円宮杯 JFA U-18 サッカープリンスリーグ関東1部第17節、2位の帝京高(東京)と3位の東京ヴェルディユース(東京)が激突した一戦は、帝京が4ゴールを奪い切って快勝。リーグ2位以内を確定させ、プレミアリーグプレーオフへの進出権を力強く手繰り寄せた。

 この試合前の勝点は帝京が32で、東京Vユースが30。既に首位の昌平高は2位以内を確定させているため、関東には2枠が与えられているプレミアリーグプレーオフを戦うための切符は、あと1枚のみ。「今日は痺れる試合ですから」と口にしたのは帝京の日比威監督。ラスト2節で巡ってきたビッグマッチだ。

 序盤は東京Vユースのパスワークが冴える。MF山本丈偉(1年)がボールを動かし、MF新鉄兵(3年)とMF小高大知(3年)がインサイドでパスを引き出しながら、攻撃のリズムを創出。前半7分には高い位置でのボール奪取から、新が枠内シュート。ここは帝京のGK川瀬隼慎(2年)がキャッチしたものの、「前半の最初の方はあまり試合に絡めないというか、ボールを受ける回数が少なくて、自分の中のテンポも作れなかったですね」とは帝京の心臓部を担うMF押川優希(3年)。順位逆転を狙うアウェイチームがリズムを掴む。

 17分は帝京に決定機。ジュニアユースまでは東京Vのアカデミーに在籍し、「小中の6年間で育ててもらって、いろいろなことを教えてもらって、今の自分のサッカーの軸になっているのは間違いなくヴェルディでの時間です」と言い切るFW伊藤聡太(3年)の浮かせたパスからFW齊藤慈斗(3年)が独走。1度目のシュートは東京VユースのGK磐井稜真(2年)のファインセーブに阻まれ、2度目も枠を越えたが、このチャンスが試合の流れを反転させていく。

 31分の衝撃。帝京はスローインから右サイドを粘り強く運び、押川が優しくパスを送ると、「相手が誰も来なかったので、ここのポジションだったら振れるなと」伊藤はゴールまで30m近い距離から左足一閃。完璧な軌道が左スミのゴールネットへ吸い込まれる。「足に当たった瞬間、震えました。『来た!』と思って」と笑った10番のキャプテンが、古巣相手に意地の先制弾。ホームチームが1点のアドバンテージを握って、最初の45分間は終了した。

 後半開始から東京Vユースは、今シーズンのJ2リーグでもピッチに立っているMF橋本陸斗(2年)を投入して反撃態勢を整えるも、大きな流れは変わらない。すると、後半10分にはセットプレーから帝京に追加点。右CKを蹴ったMF田中遥稀(3年)がこぼれ球を再びクロス。ニアで合わせたDF大田知輝(3年)のヘディングがゴールネットを揺らす。「久我山戦は本当に悔しかったですし、自分は特に最後のワンプレーを重く感じていたので、今日は決められて良かったです」と選手権予選での悔しさをぶつけるセンターバックの一撃。カナリア軍団のリードは2点に広がる。

 負ければ3位が確定する東京Vユースも、23分には直接FKを新が狙うも、軌道は枠の上へ。27分には山本と途中出場のFW河村楽人(1年)が絡み、ヴェルディらしい中央突破を見せるも、FW白井亮丞(2年)のシュートは枠の左へ。「ウチが一番やられたくない形で、1週間あの守備の練習はやってきたんですけど、アレをやってくるのはヴェルディだけですよ」と日比監督も唸るアタックを披露したが、得点には至らない。

 39分にはカウンターから、齊藤のパスを受けた途中投入のMF山崎湘太(2年)が完璧なカットインシュートを叩き込んで3点目。41分には果敢なドリブル突破から押川が獲得したPKを、齊藤が冷静に沈めて4点目。「今日は全員が気持ちが入っていましたね」と日比監督。帝京の勢いが止まらない。

 守っても右からDF島貫琢土(3年)、大田、DF梅木怜(2年)、ようやくスタメンに帰ってきたDF入江羚介(3年)の4バックが安定感を発揮し、終盤にはDF藤本優翔(3年)もゲームクローズに貢献。「橋本選手のような交代選手が出てきても、ある程度チームとして対応して守り切ろうという意識はあったので、後半も大きな変化はなかったですし。自分たちのやることをやれたかなと思います」とは大田。ゴールに鍵を掛け続ける。

「守備陣も最後まで本当に集中力高く守ってくれましたし、それで繋いでくれたボールを攻撃陣がフィニッシュまで持っていけたのが、今日は本当に良かったなと思います。本当に嬉しいです」(伊藤)。終わってみれば4-0というスコアで帝京が快勝。これでリーグ2位以内を確定させ、来月に広島で開催されるプレミアプレーオフ行きの切符を逞しく掴み取った。

 前述したように、帝京は選手権予選東京Aブロック準決勝で國學院久我山高に2-3と逆転負けを喫し、冬の全国という常に掲げてきた目標へと続く道を閉ざされた。「久我山戦が終わってから、正直ちょっとキツくて、次のプリンスの鹿島学園戦に切り替えないといけないのはわかっていたんですけど、どうしても引きずってしまって、そんなにすぐ切り替えはできなかったです」とは押川。この感情を彼だけが抱えていたわけではないことは、容易に想像できる。

 ただ、このチームには頼もしいキャプテンがいる。「もう選手権がなくなった時点で、残っているのはプリンスリーグしかないわけで、『ここで負けたらもっと嫌な雰囲気で終わってしまうよね』ということで、『何としても勝って参入戦(プレーオフ)に行こう』という話をしていた中で、ほとんどの部員が最後までやり切ろうと同意してくれたので、『やるなら本気でプレミアリーグに向かって進んでいこう』と決めたんです」(伊藤)。

 チームは再び前を向く。「鹿島学園戦が近付くにつれて、自分の中でも『やらなきゃいけないな』と思いましたし、みんな切り替えて、プレミアに行こうという気持ちでやっていたので、それに影響を受けて、『このままじゃダメだな。もう1回切り替えて頑張ろう』と思えたんです」と続けた押川の言葉も、おそらくはみんなの共通認識。アウェイに乗り込んだ鹿島学園高戦に5-2で快勝し、この日のホーム最終戦でもきっちり白星をもぎ取ってみせる。「今週もポジティブにプレミア参入のためにという気持ちで練習をやれたかなと思っていて、その参入戦を今日で決められたので良かったです」(大田)。新しい目標のために、彼らは最後まで戦い抜く覚悟を決めたのだ。

「全員に選手権の悔しさはあると思いますし、正直サッカーを続けるのもキツい人もいると思うんですけど、それでも続ける人が多いのは今年のチームの強みだなって。全員で意思統一して、また次に進めるというか。最後までやり切れるのは良いことだと思います」とチームメイトに想いを馳せた伊藤は、このグループの力を信じている。

「参入戦に行けただけでは意味がないですし、そこで勝って、プレミアリーグに上げることで初めて価値があるというか、自分たちが何かを残せたということになるので、良い試合をしに行くわけではなくて、強い帝京を見せに行きたいです。どのチームも手強いチームばかりですけど、自分たちも今日のようなパフォーマンスが出せれば絶対に良い結果にはなると思うので、また全員で士気を上げて、広島に乗り込みたいです」。

 みんなで切った『プレミアリーグに上げた代』へのリスタート。2022年のカナリア軍団が広島で奏でるラストソングのフィナーレは、果たしていかに。



(取材・文 土屋雅史)
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