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宇佐美貴史インタビュー(後編)「俊輔さんか宇佐美と言われ、うれしくなった」

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 名門・バイエルンに渡り、UEFAチャンピオンズリーグ決勝では日本人初のベンチ入りを果たす。夏にはU-23日本代表の一員として、ロンドン五輪にも出場。その後、ホッフェンハイムへ移籍し、ブンデスリーガで活躍。しかし、終盤はベンチ外……。ドイツへ渡った2年目も、MF宇佐美貴史は濃密な時間を過ごしている。日本の至宝は今、何を思っているのか。ゲキサカが直撃インタビュー。全3回の3回目となる後編では、スパイクへのこだわりを熱く語っている。

―2013年から新たに履く『adizero F50』がもたらすメリットはどこにありますか?
「ドリブルがしやすいですね。オレ、初めて履くスパイクって好きになれないんです。タッチの感覚がまったく変わるので。できればスパイクをまったく変えたくありません。でも、つぶれてしまうから、それは不可能なんです。このシューズはチャリティーマッチ(昨年12月26日)で初めて履いたのですが、タッチの感覚がすごく良くて驚きました。実戦で初めて履いて、タッチの感覚にまったく不安がなかったんです。ピッチが悪かったのに、トラップも足に付いて、ドリブルも足の前にちゃんとボールを置けたし、ボールタッチにもミスはなかったと思います。技術的なミスが出るのは嫌ですし、初めて履くスパイクのときは常にその不安があるのですが、そういう不安が途中でなくなるくらい良かったですね」

―アッパーもワンピース構造になったそうですが?
「アウトサイドでちょんと浮かしたり、ワンツーで崩す動きを使いましたが、ブレがなかったです。ボールタッチも滑ることがなかったですし、思い描いたボールタッチをすることができました」

―さらに馴染んだら大きな助けになりそうですね。
「完璧に馴染んだシューズを3か月くらい履くのですが、次のシューズを履く前に1か月くらい馴染ませるのに使います。1か月は言い過ぎたな(笑)。2、3週間ですね。3週間くらい、アップとか、ボールを使わないところで履いて、水に濡らしたりして、足に馴染ませます。それで『よし、実戦で使えるように馴染んでくれた』となるので、初めてのスパイクとか、2、3回しか履いてないシューズで試合に臨むことはあり得ないんです。でも、このシューズは初めて履いて問題なかったですね。だから、よっぽどですよ」

―黄色というカラーリングは?
「Jリーグのベスト・ヤング・プレーヤー賞を受賞したシーズンに黄色いスパイクでプレーしていたんです。最初のモデルが同じ色だったのですが、足下が派手な色が好きなんですよね。黒とかじゃなくて、派手な色の方がピッチで映えるから良いんですよ。パッと足下を見たときに、黒だと芝の緑に馴染んでいたりするので、瞬間的にどういうボールタッチを自分がしているか分からない。でも、黄色とか、こういう派手な色になっていれば、どこに足があるのかが一発で分かる。その上でこういう黄色の上に黒のラインがあれば、本当に分かりやすいので、色とかラインも好きですね。スパイクには、こだわりしかないから、いつもアディダスさんには迷惑をかけているんですよ(苦笑)。ワガママばかり言うので」

―どういうことを言うんですか?
「めちゃめちゃ言いますよ(笑)。見つけて言っちゃうんです。例えば足首の周りの皮はなるべく薄い方がいいとか。ここが薄い方がいいなんて言う人、他にいないと思うんですよね。F50は、ここが薄くて本当に自分に合っているんですよ。厚みがあると、履いている感覚が強くなってしまうんです。圧力が足首にかかるというか、ぽこっとした感覚になる。でも、薄いとなめらかというか。ボールタッチには関係ないのですが、足首の動きが変わってくると思うんです。それこそ、足の甲の部分の厚さが数ミリ変わっても、分かりますからね。それで一回、めっちゃ言いましたもん」

―それは細かいですね。
「でも、そのときはほめられたんですよ。『そんなところまで気付くのは中村俊輔か宇佐美貴史のどっちかだ』って。俊輔さんと並べてもらえたので、怒っていたのに『ホンマ? 次は気を付けてや』って気分良くなって、電話を切りましたね(笑)」

―このシューズを履いて戦う2013年の抱負を。
「試合に出て、ゴールを取って、充実させたシーズンにしたいです。試合に出ることができれば、絶対に充実したシーズンになるので。出るためにはいろいろな努力が必要になると思うし、ブンデスリーガで出られるようになれば、いろんなことを乗り越えて出るということなので、単純に試合に出るのではなく、全部乗り越えて試合に使ってもらえるようになりたいです」

(取材・文 河合拓)

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