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[MOM233]順天堂大MF長谷川竜也(2年)_進化した“トリックスター”が「怖い」存在に

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[大学サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[5.18 関東大学リーグ1部第8節 流通経済大0-0順天堂大 味フィ西]

 “トリックスター”が進化を印象づけた。順天堂大のMF長谷川竜也(1年=静岡学園高)は登録164cm、54kgと小柄なものの、静岡学園高3年時にU-17日本代表に選ばれ、昨年は1年生ながら全日本大学選抜に選出された実力の持ち主。技巧派揃う静岡学園でも一際目立つ存在だったMFは豊富なアイディアと足裏、かかとなどを駆使して相手の股間やボールをDFの頭上へ浮かして抜き去るなど多彩なドリブル、パスでDFを翻弄していた。

 それでも華奢な身体がまだJ1レベルでは通用しないという判断がされてプロ入りは見送られた。また順大へ進学した昨年も会場を沸かせるプレーを見せていた一方で、違いを示すまでは至らず。本人にとっても学ぶことの多い日々が続いていた。ただ、この日の後半は怖さを十分に感じさせるプレー。体調不良で試合後はマスクをして話しているような状態だったが、存在感はピカイチだった。

「前半はチーム全体が良くなくて、相手陣内に行くことがあまりなかった。自分もこんなに芝が引っかかるとは思っていなくて、そこでしょうもないミスをしてしまっていた」という前半から「後半は楽しんでやろうと。自分らしく楽しんでやって、なおかつチームのためにやろうと思っていた。自由に楽しくというのは自分の持ち味。リラックスできたのが良かった」という後半は低い位置へ下がれば、相手の逆を簡単に取ってボールを運び、なおかつアタッキングゾーンに入ればテンポの速い仕掛けで流経大DFを攻略。体力の向上によって終盤までキレが落ちずにゴールへ迫り続けていた。

 DFの股間を抜くドリブルで右サイドを破って決定的なラストパスを出し、静岡学園時代からの先輩であるMF和田直己とのコンビでDFを置き去りにするなど魅せるプレーもあったが、派手な足技よりも印象的だったのはゴールへの迫力が増したこと。技術に頼ることなく、切り替え速くスピードに乗ってPAでの突破を図るなど、より相手にとって「怖い」プレーをすることに意識は傾けられていた。「高校の時は派手なプレーが多かったんですけど、それは1対1とか局面が自分とDFと対峙しているだけのシーンが多かった。普通のことで抜くよりもアイディア出して抜いた方が抜きやすかった。今はそういうプレーをするよりもはたいて、常に前に、前に。相手にとって怖いようにプレーして、相手を休ませる暇もなく行くことを意識している。高校の時は全然怖くなかったと思うんですけど、怖い選手になることが大事。その中で魅せるプレーを入れている。高校の時よりもスピードも速くなったし、ドリブルも抜ける気がするんですけど、サイドで勝負するんじゃなくて、中でドリブルで勝負したい。中で当ててワンツーとか、ペナの中で勝負したい。そのほうが効率がいいし、怖いし、そういう選手をどこのチームに行っても使っている。違うチームに行って生き残っていくためにはどれだけ速く攻めて、なおかつ停滞した時は止まらないし、そういう部分を上手く織り交ぜてやっていけたらいい」

 意識が変わり、戦うことのできる選手に変貌しつつある。試合を視察したJ1クラブの強化担当も「(Jであまりいないタイプで)面白い。前を向いた時にタイミングやアイディアでゲームをつくることができるし、(高校時代に比べて)打開する力もついてきている。今年も何試合か見ているけれど、いいプレーが続いている。(大学レベルでも小柄だが)大学は体格差を試す時期。ここでやれないと上では通用しない。いろいろチャレンジしてほしい」と語っていた。

 チームでは判断の速さ、守備力、戦う力など「基礎力向上」を重視。全員が個のベースを上げることに取り組んでいる。加えて自分の武器を磨くことに取り組んでいる。「きょうはペナ内へ侵入してシュートまで行けたところは良かった。あそこでバシッと決められる選手に。ここ何節かもあそこまでは行けている。ペナ内に入ってシュートチャンスにまで行けるんですけど、ペナ入って決定的な仕事ができれば、怖いと思うのでシュートの頻度も増やして、決定力も増やしたい」。大学2年目。国士舘大戦ではハットトリックも達成した。いいコンディションの中で結果を出しつつ、成長しようとしている長谷川。世代屈指の“トリックスター”は今後、どこまで怖い存在となるか。

(取材・文 吉田太郎)
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