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[MOM97]駒澤大DF金正也主将(4年)_日本一軍団の中心

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[大学サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
 
「2失点しても焦りはなかった。相手より走れる。走りきれると信じていた」。総理大臣杯・決勝戦の駒澤大の戦いぶりは、主将・金正也(4年=神戸科学技術高)のこのコメントに集約されているといってもいいだろう。確かに、チームとしての攻撃力は、同大会三連覇を果たした頃のチームには及ばないかもしれない。だが、11試合で12得点というスコアながら、失点わずか6で関東リーグ2位で折り返した堅固な守りは、当時のチームに勝とも劣らない。常日頃から秋田浩一監督が繰り返す、「粘っこく守る」強さを体現しているといえるだろう。

 その堅固な守りの中心的な存在が金正也だ。CBとして、当たり負けしないフィジカルの強さはもちろん、ディフェンスライン全体のカバーリング能力や展開を読む力にも長け、1回戦の環太平洋大戦では怪我上がりのボランチ・笠井雄太(4年=駒澤大学高)を休ませるためにボランチもこなした。秋田監督も「(ディフェンスラインで)計算できる選手」と、絶大な信頼を寄せる。それだけに、中京大に先制点を許したシーンでは「相手の10番、齊藤はスピードもあるし身体能力も高いので、動き出しを自由にさせないように気をつけていた。失点シーンで対応したのは山崎(紘吉)と濱田(宙)だったが、自分がそれをカバーしきれなかったのがもったいなかった」と悔やむ。

 終盤には、パワープレーで前線にあがり、疲れの見える中京大に強烈なプレッシャーをかけた。実は「本当は前線にあがるのはボランチの笠井で、自分がボランチの位置に入る予定だった。自分の勘違い」と笑うが、結果的に金の気迫あふれるプレーが駒大の前線に活を入れ、勝利を呼び寄せたことは間違いない。

 スタメンの中では唯一の関西出身選手。決勝進出が決まって、「ちょっと恥ずかしかったけれど」地元の友人たちにメールを送ったという。スタンドで応援する彼らの前でふがいないプレーはできないという思いが、最後の1分1秒まで金を奮い立たせ、駒大を劇的な逆転に導いた。「細かい部分では修正すべきところはたくさんある。でも、内容が悪い試合でも最後まであきらめずに戦える。それが、この大会としてチームとして成長したところだと思う」。それこそが強豪・駒大の最大の武器だということを、金はチームを束ねる主将として、改めて実感したに違いない。

(取材・文 飯嶋玲子)

総理大臣杯全日本大学サッカートーナメント特設ページ
連載:大学マン・オブ・ザ・マッチ

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