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梅崎が1G1Aで決勝に導く、涙の背番号7は「レッズに来て、ほんと一番うれしかった」

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[10.9 ナビスコ杯準決勝 浦和2-1G大阪 埼玉]

 試合終了の笛が鳴ると、浦和イレブンに満面の笑みが広がった。そして歓喜のサポーターの大声援をバックに、みんなで肩を組んで喜び合った。浦和レッズが準優勝だった2004年以来、7年ぶり4度目の決勝進出を果たした。Jリーグ首位で、なおかつリーグ戦とナビスコ杯を合わせて2007年8月15日の万博での1-0勝利以来、2分6敗と苦手にしていたG大阪を2-1で撃破してつかんだ。そこには、リーグ戦で下位に沈む姿はどこにもなかった。

「この準決勝という舞台で、点が決められて勝ててうれしい。レッズに来て、ほんと一番うれしかった。涙が見えた? なんか感極まって……。今日はサポーターに声援をしてもらって……、もっともっとしてもらえるようにプレーしていきたい」

 4年ぶりのG大阪撃破、決勝進出に大きく貢献したのは元日本代表MF梅崎司だった。得意としている左MFで先発し、1得点1起点と全得点に絡んだ。いや、2得点すべてを導いたと言っても過言ではない。まずは前半21分、FWエスクデロ・セルヒオのシュートのこぼれ球に反応して右足で丁寧に流し込んだ。「絶対にこぼれてくると思った」。ゴールへの執念が生んだ先制点だった。

 そもそもこの日、得意の左MFで先発したこともあり、ゴールにつながるプレーを随所に披露した。切れ味が戻ってきているドリブルで積極的に仕掛け、前半17分にも惜しいミドルシュートを打っていた。先制後、さらに勢いが増す。同38分、左サイドでパスを受けた梅崎は中に切れ込んで左足ミドル。これはエスクデロの腹部に当たって決まり、記録上はエスクデロのゴールとなったが、2-0と試合を優位にする得点をお膳立てした。

 エスクデロも「邪魔したかもしれない」と振り返ったが、結果的に両チーム最多8本のシュートを放った梅崎の積極姿勢が生んだゴールだった。それでも梅崎は「たぶん、いいところに居たからだと思う。あそこに居て、詰めようとしていたんだと思う。その結果、ああいうゴールを生んだ。チームで取ったゴール」と“みんなのゴール”だと強調した。

 この日はMF山田直輝を出場停止で、MF原口元気を日本代表で、DFスピラノビッチをオーストラリア代表で、DF高橋峻希とDF平川忠亮を怪我で欠いた。G大阪も同様に主力を欠いたとはいえ、日頃、出番のない選手たちの頑張りが大切な試合だった。そんな中、2008年に浦和に加入以降、相次ぐ怪我でどん底を味わったアタッカーが輝きを見せた。

「メンタルもそうですけど、技術的にも成長したと思う。正直、今は楽しくてしようがない。自信がついてきている。試合をこなして、今日も課題が見つかりましたけど、それを次に活かしてと、いいサイクルができている。ほんと楽しいんです」

 今季もリーグ戦は7試合1得点で、未だ先発がないなど出番に恵まれていないが、以前とは違って大きな怪我はなく、特に最近はリーグ戦は途中出場ながら3試合連続出場中。ナビスコ杯はこれで3試合連続先発と、試合勘が戻ってきている。「自分は常にスタメンで出たいと思っている。今年の8月くらいに、最後の方はこのチームで必ずスタメンになるという目標を掲げて決意を持ってやっている」と梅崎。前向きなメンタルが、大事な場面での活躍につながった。

 こういう気持ちになれたのも、過去の自分と決別できたからだという。以前は「昔の自分と、ワンプレーワンプレーを比べて集中できなかった」ようだが、3月の東日本大震災を経て心境に変化があった。「震災があって、すごくショックを受けたけど、昔の自分を捨て去ることができた。純粋に、走れたり、サッカーができることが幸せだと感じるようになった」。

 これまでは大きな怪我が続いたこともあり、前向きな気持になれなかった。今年に入ってからは、調子が良いのに試合に使われず、投げやりになる時もあった。だが、大震災を受けてサッカー観が少し変わり、より真摯な姿勢になれた。「もっと違う自分になって、成長したいと思うようになった」。過去の“幻影”を探すのではなく、未来の自分をイメージできるようになった。

 10月29日に鹿島と決勝を戦うが、梅崎にはその前に、再びチームでのレギュラー争いが待ち受ける。日本代表での活動が終われば、同じポジションのFW原口元気が帰ってくる。また攻撃的な選手には、この日は出場停止だったMF山田直輝ら有望な選手がいる。「みんなで高めあっていければ良いチームになるし、強くなる。それが優勝に近づく要因になると思う」と言葉に力を込めた。

「浦和にはタイトルを獲るために来た」。常々、そう語っている梅崎。競争は激しく、どういう結果になるかはわからないが、今の“新しい梅崎”なら今日のようにチームに貢献できることは間違いない。悲願のタイトル獲得に向け、不屈の精神で自らを高めていく。

(取材・文 近藤安弘)


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