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Jを目指せ! by 木次成夫

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第154回「全国社会人選手権北信越大会」
by 木次成夫

 冒頭の写真は左から

松本山雅FW栗山裕貴(20歳、前・鳥栖)

ツエーゲン金沢DF園田清次(20歳、前・徳島ヴォルティス・2nd←V・ファーレン長崎=東京Vからレンタル←東京V)

ツエーゲン金沢MF三原雅俊(21歳、神戸からレンタル)

 3人共、熊本県の強豪、ルーテル学院高卒3年目。07年にJリーガーになったものの、今季は、北信越リーグ所属クラブでプレーしています。三原はレンタル移籍中ですが、園田が昨季末に東京Vの戦力外になり、栗山は去る6月に鳥栖から完全移籍。つまり、園田と栗山は、「元Jリーガー」です。

 奇しくも新潟県で再会……。熊本弁で話しているのが、印象的でした。

 彼らに限らないことですし、「プロ(Jリーグ)の世界は厳しい」というのは簡単ですが、選手が期待通りに成長しなかったのか、それとも、Jクラブ強化担当者の能力が低いのか? Jクラブの“やり方”には、疑問を感じます。成績不振でも辞めないJFA(日本サッカー協会)のユース代表などの指導者を含めて、“数少ない大人は人生安泰、夢見る子供は自己責任”で良いのでしょうか?

[全国社会人選手権]
 全国地域リーグ決勝大会(以下、“地域決勝”と略)の出場権を「各地域のリーグ枠」で獲得できなかったチームにとって、全国社会人選手権(通称、全社)は、“もうひとつの”チャンスです。例えば、昨季は、全社枠で3チームが、“地域決勝”出場権を得ました。

 ただ、全社にも出場枠があるわけで……、地域リーグ随一の激戦区である「北信越」は、全社・北信越大会(8月14日から16日まで新潟県で開催)も熾烈でした。全社出場枠は3チーム。つまり、3位以内。大会前の注目点は、まず、リーグ優勝を果たして、“地域決勝”出場権を得ているジャパン・サッカーカレッジ(以下、JSCと略)がベストの布陣で臨むか否かでした。

●8月14日:1回戦
サウルコス福井(リーグ5位) 0-5 ツエーゲン金沢(同3位)
ヴァリエンテ富山(同8位)0-5 松本山雅(同4位)

●8月15日:準決勝 
松本山雅 3-2 長野パルセイロ(同2位)
ツエーゲン 2-0 JSC

 結果的に、JSCは「天皇杯の新潟県予選も控えているので」(JSCコーチの辛島啓珠氏)という理由で、ツエーゲン戦は主力の多くを温存。つまり、ツエーゲンにとっては、ラッキーな面もありました。

●8月16日:全社・北信越大会 3位決定戦
JSC 0-0(PK1-4) パルセイロ

 準決勝でパルセイロは山雅に2点先制しながら、逆転負け。対するJSCは、ツエーゲン戦とは対象的に、ベストと思われる布陣。その上、気温は32度(公式記録)。いわば“崖っぷちに立たされた”パルセイロにとっては、過酷な状況でした。

[試合展開]
 前半、パルセイロはスタミナ切れを意識したとしか思えない、良く言えば“無理のない”サッカーを展開しました。ところが後半は……、勝負に出るどころか、徐々に運動量が落ち、GKノグチ・ピントの神がかり的なセーブで、失点を免れるシーンも――。

 JSCが“夏休みゆえ、普段以上にサッカーに集中できる”状況に対して、パルセイロは“多くの選手が仕事とサッカーを両立させている”わけですから、“ありえる”展開とも言えますが……。

●8月16日:全社・北信越大会決勝
ツエーゲン金沢 2-0 松本山雅 

 ツエーゲンのチーム熟成に驚き、その裏返しとして、山雅の熟成不足(としか思えない出来)に唖然とした試合でした。

[ツエーゲン・スタメン]
4-4-2
GK、田代祐平(24歳=3年目、前・金沢星稜大←星稜高)
右SB、ビジュ(34歳=今季加入、前・水戸)
CB、諸江健太(24歳=今季加入、前・FC刈谷←中京大←グランパス)
CB、込山和樹(23歳=今季加入、前・大体大←星稜高)
左SB、園田清次(7月上旬加入)
ボランチ、三原雅俊(6月下旬加入)
ボランチ、広庭 輝(24歳=3年目、前・柏)
右MF、根本裕一(28歳=今季加入、前・大分)
左MF、山道雅大(23歳=今季加入、前・大体大←初芝橋本高)
FW、クリゾン(21歳=今季加入、前AAフランカーナ=ブラジル)
FW、古部健太(23歳=開幕後の4月下旬加入、横浜FMからレンタル←立命館大)

[得点]
3分 1-0(広庭)
43分 2-0(クリゾン=PK)

 リーグ2節のグランセナ新潟戦(4月19日)を見た際は、いわば“新生チーム”ゆえの熟成不足を実感しましたが、この試合は、そのチームの“4ヵ月後”とは思えないほどの出来。中盤のスピーディなパスワークをベースに、状況に応じて、果敢に個人突破を狙うスタイルは、まさに“人もボールも動く”サッカー。チーム加入が最も遅かった園田すら溌剌と持ち味を発揮。昨季後、Jリーグ合同トライアウトなどに熊本から夜行バスを利用して参加した当時と比べると、体の締まり具合が、まるで別人。「今年が一番、体のキレが良いです」(園田)。

[全社、及び“地域決勝”展望]
●JSC=9月下旬には、地元開催の国体(国民体育大会)があり、JSCは新潟県チームの主力。当然、優勝が期待されています。また、専門学校ゆえの学校PRという点では、全国規模でアピールできる天皇杯も重要。はたして、選手がモチベーションとコンディションを維持できるか? 

●ツエーゲン=チームの“今後の伸びしろ”という点では、日本各地の地域リーグ所属クラブで、おそらく随一。ただ、園田は移籍時期の問題(遅かったという意味)で、“地域決勝”に出場できません。

●パルセイロ=昨季は、リーグ優勝を果たし、その後の全社を圧倒的な強さで制したものの、“地域決勝”予選ラウンド敗退。「全社後のチーム作りが、うまくできなかった」(エース的存在のMF土橋宏由樹)とか。肝心の時期に、チームのピークを持って行けなかったという意味でしょう。油断? 予断? そういう観点でいえば、危機的状況を奇跡的に脱した現状は、上々ということでは?

●山雅=チーム作りの難しさを実感させてくれる点では、日本随一。この際、HPで“公務員の答弁”のような文章を掲載するのは辞めて「苦戦の要因。戦術、予算など様々な面から見た山雅の現状」というテーマで監督、GMらが講演会をすれば、ファンだけでなく、地域のサッカー愛好者や、教育関係者の参考になると思うのですが……。
 個人的な印象では、昨季から今季にかけて、最もレベルアップしたのは、大太鼓と小太鼓に合わせた、金管打楽器のリズム。是非、全社に向けて、トランペットなどホーン・セクションを地元の高校生なども募って、加えてほしいものです。“地域決勝”決勝ラウンドは、ホームのアルウィン開催ですし――。

※本コラムは毎週火曜日更新予定です。感想やあなたの地元クラブの情報をこちらまでお寄せください。

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本コラム紹介クラブリスト09年
紹介クラブリスト08年以前

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