第164回「全社特別編3」
by 木次成夫
by 木次成夫
10月19日、全国社会人選手権(以下、全社と略)準々決勝の結果は以下の通りです。
AC長野パルセイロ 1-0 九州INAX
[得点]24分、要田勇一=PK
INAX(イナックス)は佐賀県のチームで、今季、九州リーグ6位。2回戦で九州リーグ王者の沖縄かりゆしFCに快勝したパルセイロは、主力の多くを温存して臨みました。かりゆし戦もスタメンだったのは、DF大島嵩弘、MF大橋良隆、MF野澤健一の3人だけ。
無難に勝った上に、“重鎮”FW要田勇一(32歳、前・ジェフ)がフル出場を果たすなど、“順調すぎるのが怖い”ほどの状況で準決勝進出を果たしました。
カマタマーレ讃岐 1-2 ツエーゲン金沢
[得点経過]
42分 0-1(ツエーゲン=CB込山和樹、22歳、前・大阪体育大学)
*FWデニスのクロス→ヘディング
59分 1-1(カマタマ=FW森田栄治、25歳、前・東海大学)
*左SB下松裕(29歳、前バンディオンセ加古川)のクロス→ヘディング
73分 1-2(ツエーゲン=CB諸江健太、24歳、前FC刈谷)
*CK→ヘディング
ツエーゲンの得点を決めたのは共にCBということが、試合を象徴していると思いました。シュート本数は、カマタマーレ=9本(前半5本、後半4本)に対して、ツエーゲンは4本(前半は0本)。ポゼッション重視のカマタマーレが、スピーディかつシンプルなサッカーを狙うツエーゲンを組織力で抑えつつ、最終的に“個の力”で敗れたという印象です。
羽中田昌監督がカマタマーレを率いて2シーズン。4-3-3フォーメーションをベースにしたポゼッション・サッカーは、バルセロナ留学経験のある人らしいです。攻撃を急がず、“一見、豪快ながら、実はカットされる可能性が高い”パスは自重して、その一方で、パスワークは素早く――。シャビを中心にゲームを造るFCバルセロナを彷彿させるスタイルです。豪快なサッカーが好きな人なら「消極的すぎる」と感じるかもしれません。
実際、この試合、もう少し“勇気を持って”チャレンジすれば……と思ったシーンが散見した一方で、安易にクリアせずに“勇気を持って”つなぐシーンも多々ありました。
できることなら、来季も羽中田監督に率いてほしいです。2年間で“ここまでできる”なら、3年目は“どこまでできる”のか? プロ野球で“再生工場”と評される監督がいますが、羽中田さんも同様です。選手個人能力比チーム完成度(成長度)という点では、JFL以下随一だったと言っても過言では、ありません。
栃木UVA 1-1(PK3-5) 松本山雅
[得点経過]
31分 1-0(UVA=MF前田和也、25歳、前・山形)
*FW三輪宏真(27歳、前・専修大学)のパスを、FW高橋駿太(20歳、前・山形)が胸トラップで落とし→走り込んだ前田がフリーで豪快に!
78分 1-1(山雅=CB山崎透、29歳、前・栃木)
*FW小林陽介(26歳、前・熊本)のクロス→ヘディング
UVAは今季関東1部2位。“地域決勝”一次ラウンド敗退の昨季の印象は、堅守速攻。今季は元U-18日本代表の高橋が加入し、堅守を維持しつつ、速攻の部分でパワーアップ。
ただ、“地域決勝”出場権があるため、“モチベーションが低いかも”と思いきや……、真剣勝負を挑んできました。そして、山雅は大苦戦。キーマンの高橋に“教科書通りの”トラップをさせて、フリーでシュートを打たれたシーンには、唖然としました。“一瞬の隙”としか言いようがないですが……。
[PK戦のドラマ]
PK戦は、山雅が先蹴り。GK原裕晃(31歳、前。栃木)がUVA4人目(石堂俊介、24歳、前tonanサテライト)のシュートをセーブ。そして、山雅5人目は、昨季の“地域決勝”一次ラウンド3戦目、レノファ戦でPKを外した阿部琢久哉(24歳、前TDK)でした。
「(監督の)吉澤さんが信頼してくれて、最初から5人目の予定でした。でも、去年ことを主出しちゃいまいしたよ」(阿部)。
天皇杯のレッズ戦で1得点1アシストを決めて、勝利の立役者になった時よりも、嬉しそうなのが印象的でした。
tonan前橋 1-0 横浜カルチャー&スポーツクラブ
[得点]
65分=MF山田智也(29歳、前ツエーゲン)
*CK→FW松永康司(22歳、前tonan前橋サテライト)ヘディング→GK=こぼれ球→ヘディング
関東2部2位のtonanが関東1部1位のYSCCに勝利。07年、群馬1部所属時代に天皇杯予選でJFLのアルテ高崎に勝った実績もある“謎の強豪”ならではの快挙です。ちなみに、主将はゴールデンエイジ(99年ナイジェリアWユース代表)のMF氏家英行(30歳)。
[20日、準決勝対戦カード]
パルセイロ(北信越1部2位)対山雅(同4位)
ツエーゲン(同3位)対tonan(関東2部2位)
千葉県市原市で平日昼間開催するのが“もったいない”カードになりました。
[実は千葉県人が活躍中]
例えば、
ツエーゲン=広庭輝(柏日体高校卒)
山雅=阿部琢久哉(流通経済大学柏高校卒)、原裕晃(敬愛学園高校卒=千葉市。市原市育ち)
パルセイロ=高野耕平(千葉県八街育ち)
<写真>PKを決め、歓喜する阿部琢久哉
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本コラム紹介クラブリスト09年
紹介クラブリスト08年以前