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Jを目指せ! by 木次成夫

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第181回「JFL入替戦 第2戦 ツエーゲン金沢「JFL昇格」達成!」
by 木次成夫

長野県に続いて石川県で、県内初のJFLチームが誕生しました。以下、整理すると――、

Jリーグ・クラブがある都道府県(27):北海道、宮城、山形、栃木、群馬、茨城、埼玉、東京、千葉、神奈川、新潟、山梨、富山、静岡、愛知、岐阜、京都、大阪、兵庫、岡山、広島、愛媛、徳島、福岡、熊本、佐賀、大分

トップ・チームがJFL所属の県(8):秋田、長野、石川、滋賀、鳥取、長崎、宮崎、沖縄

トップ・チームが地域リーグ所属の県(11):青森、岩手、福島、福井、三重、奈良、香川、高知、島根、山口、鹿児島

トップ・チームが県リーグ所属の県(1):和歌山

●12月19日
JFL入替戦 第2戦
FC刈谷 1-1 ツエーゲン金沢 

13日に行われた第1戦はホームのツエーゲンが1-0で辛勝。当然ながら、刈谷は序盤から攻勢に出ました。第1戦はスタメンだったFW姜暁一(21歳、FC岐阜からレンタル)に代えて、コーチ兼任のFWアマラオ(43歳、前アルテ高崎、元FC東京など)を起用。170㎝の切れ味とスピード(姜)よりも、183㎝の高さと豊富な経験で培われた勝負強さ(アマラオ)に賭けたわけです。

対するツエーゲンは第1戦以上に堅守速攻のスタイルで対抗しました。“引き分ければ昇格決定”ですから、常套策とも言えますが――。

[得点経過]
31分 0-1(ツエーゲン得点=MF根本裕一、28歳、前・千葉、アテネ五輪予選代表)
*左SB園田清次(21歳、前・徳島ヴォルティス・セカンド、元・東京V)が縦にフィード→FW古部健太(24歳、横浜Fマリノスからレンタル)が左サイドをフリーでドリブル後、クロス→相手クリア→こぼれ球を根本が左足ダイレクト。

87分 1-1(刈谷得点=MF日下大資、25歳、前・東海学園大学)
*FK直接ゴール

[試合総括]
刈谷の浮氣哲郎監督は、昨季後に多くの主力がチームを去ったことを不振の要因に挙げました。JFL17位という成績に関しては、その通りだと思います。ただ、入替戦に関しては、個人能力の差が出てしまったという印象です。第1戦の得点は、MF三原雅俊(21歳・神戸からレンタル)のCKに合わせた古部のシュート。つまり、結果として、現役(及び、元)Jリーガーが実力を見せつけたゆえに――。

シュート本数:刈谷=12本(前半=4、後半=8)、ツエーゲン=8本(前半3、後半4)。

右MFで起用された根本は先制点を決めるまで、攻撃面では“ほぼ”機能していませんでした。こぼれ球のコースとスピードは運しだいという面もありますが、チャンスを逃さないセンスとシュート能力は、アテネ五輪予選代表だった名選手ならではとも言えます。

[ツエーゲン流チーム作り]
スタメンのうち新加入選手は刈谷が4人だったのに対して、ツエーゲンは10人。北信越リーグ開幕前、トレーニングを始めた頃は「チーム全体で7人だけでした」(スタメン出場したMF広庭輝=加入3年目、24歳、元・柏レイソル)。そして、リーグ1節のヴァリエンテ富山戦(4月12日)はスタメン全員が新加入選手という布陣で臨み、その後はピンポイントで補強を続行。古部は4月下旬、三原は6月下旬、園田は7月上旬に加入し、それぞれ大貢献しました。

短期的チーム強化の“手本”になりえる成功例ですが、誰でも模倣できるほど単純では、ありません。サンフレッチェ広島や京都サンガなどで指導経験のある上野展裕監督と、石川県のクラブならではのチーム作りとも言えます。例えば、

GK木寺浩一(37歳、前・広島)
CB諸江健太(24歳、前・刈谷、元・名古屋グランパス←グランパスU-18、石川県出身)
CB込山和樹(23歳、前・大阪体育大学←星稜高校=日本代表の本田圭祐と同学年、北海道出身)

実績のある木寺は期待通りですが、諸江と込山は期待以上。開幕から入替戦まで不動のコンビを組み、リーグ戦(14試合)、全国社会人選手権(5試合)、全国地域リーグ決勝大会(6試合)、そして、JFL入替戦(2試合)にフル出場を果たしました。リーグは3位に終わったものの、14試合でリーグ最少の9失点。その上、JFL昇格達成に至るまで、得点力も活かしてチームの危機を度々救ってきました。例えば、

全社社会人選手権ベスト8、対カマタマーレ讃岐(2-1、得点=込山、諸江)
“地域決勝”一次ラウンド、対ヴォルティス・セカンド(2-1、得点=込山X2)

夢を抱いて石川県を離れた諸江、同様に石川県を経由した込山。その2人が石川県に戻って、県初のJFLチーム誕生に貢献するとは……、出来すぎだとすら思います。

[刈谷の今後]
試合後、競技場の外では、早速、来季に向けた募金活動が行われていました(冒頭の写真)。デンソー・サッカー部がNPO法人運営クラブに移行して4シーズン。浮氣監督は試合後の会見で「チームがなくなるわけでは、ありません。刈谷という地で夢を持って活動する点は同じです」と語りました。そして、その翌日には浮氣監督の退任と、アマラオの監督就任が発表されました。来季は刈谷にとって、初めての地域リーグです。

[MIOびわこ草津セレクション]
入替戦前日の18日、MIOびわこ草津のセレクションを見に行きました。参加者は大学生、サッカー専門学校生、地域リーグ・クラブから戦力が通告を受けた選手など合計69人。その中には、セレクションの数日前に退団が発表された選手や、昨季末までJリーガーだった選手も、いました。

MIOは、ほとんどの選手がアマチュアで、仕事と夜間練習の日々を送っています。つまり、セレクションに参加した選手たちは、参加費、移動費、宿泊費(MIOのセレクションは2日連続)などを支払って、“仕事とサッカーの両立”を目指しているわけです。

“教育としてサッカー”に力を入れる高校(大学)とJリーグ・クラブ=同下部組織の増加により、プロサッカー選手を“夢見て、夢破れ、それでも、夢を追い続ける”選手が増えているということでしょう。一般的な仕事に夢を見いだせない“裏返し”かもしれません。ビジネスとしての学校法人と指導者の“あり方”に疑問も感じます。

[名古屋駅にて]
2人のビジネスマンがきしめん店で領収書作成を依頼しているシーンに遭遇しました。「上様で良いですか」という店員に「会社名を入れてください」と言い、「XXX……テクノ」と合計10字ほどの社名に加えて、「あと株で」。言うまでもなく、株式会社という表記の略が「XXXX(株)」となるという意味です。

“経費で落とす”(自費で払わない)のは、「日本の伝統的企業文化」ですが、“立ち食い”店で見たのは、個人的には初めて。“打ち合わせ”名目でしょうが、喫茶店などとは違い、食後は即、出ざるをえない店で……。ましてや、時間帯は昼時。店員は明らかに戸惑い、客は怪訝な表情でした。

“人生いろいろ”とはいえ――。夢を抱いて再チャレンジする“ワーキング&プレーイング・プア”の選手たちに幸あれ! 

<写真>試合後、FC刈谷の募金活動

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