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Jを目指せ! by 木次成夫

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第17回 JFL アルテ高崎
by 木次成夫

「Jを目指すクラブ」の中で、最も苦戦しているクラブではないでしょうか。このままでは消滅してしまうのではないかと不安になってしまいます。

 クラブとして活動を開始したのは2000年。群馬県の学校法人、堀越学園が運営母体になり、JFL昇格までは破竹の勢いでした。2000年、群馬県リーグ2部全勝優勝。01年、群馬県リーグ1部全勝優勝。03年、関東リーグ優勝。全国地域リーグ決勝大会では準優勝(優勝は同じ群馬県のザスパ草津)ながら、JFL入れ替え戦で「FC京都BAMB1993」に勝利して、JFL昇格。そして04年はJFL8位ながら、天皇杯4回戦でJ1の柏レイソルに勝つ快挙も達成しました。

 振り返ると、04年が最盛期になってしまいました。05年8位、06年10位。今季は4月28日の第8節、ホームのYKK AP戦に0-1で敗れた時点で通算1勝1分6敗。18チーム中17位です。
観客数も低迷しています。例えば今季の開幕、ホームのガイナーレ鳥取戦は876人(公式発表)。昨年度の1試合平均482人よりは多いものの、栃木対FC琉球(第1節=栃木ホーム)の1万2539人、FC岐阜対アルテ高崎戦(第2節=岐阜ホーム第1戦)の5082人とは比較になりません。4月28日のYKK戦は高崎から電車で約40分の埼玉県熊谷市で開催したのですが、140人程度しかいませんでした。公式発表は280人でしたが……。クラブ名が度々変わったため、まだ馴染みがないのかもしれません。当初の名前は群馬FCフォルトゥナ、01年に群馬FCホリコシ、05年にFCホリコシ、06年にアルテ高崎。ちなみに、アルテ(ARTE)は英語のART(芸術)に相当するスペイン語です。
 ちなみに、翌29日に見た北信越リーグの松本山雅FC対長野パルセイロ(信州ダービー)は入場料無料ながら6399人(主催者発表)が集まりました。クラブの勢いの差に唖然としました。

 元Jリーガーを積極的に獲得した短期的強化が結果的に失敗した点も、低迷の要因でしょう。勢いに乗っている間に、スポンサーが増えるなどクラブが潤沢になれば問題なかったのでしょうが、そうはなりませんでした。同じ群馬県のザスパ草津の存在も影響しています。ザスパは02年に本格的スタートをしたクラブで、アルテ同様に元Jリーガーを積極的に補強しました。JFL昇格は同じ04年ですが、ザスパは同年3位になり、Jリーグ入りを決めたのです。つまり、アルテは“後発クラブ”に追い抜かれたわけです。そして、ザスパはホームタウンを拡大して、ホーム試合を高崎市の隣、前橋市で主に開催しています。自治体の目がザスパに向いてしまった点も、アルテにとっては誤算だったと思います。
 もっとも、そういう経験をしたからこそ、腰を落ち着けてリスタートする意思表示も含めて、「高崎」という名前にしたのでしょうが……。ユニフォーム胸スポンサー「創造学園大学」は学校法人?抉朿惘犒弍弔任宏附属高校は長野県の松本市にあり、去る選抜高校野球大会に出場しました)。つまり、自社広告のようなものです。大学の宣伝効果はありますが、クラブの利益にはなりません。
クラブ予算も影響しているのでしょうが、選手の出入りも激しいです。例えばYKK AP戦はスタメンのうち7人が新加入でした。残る4人にしても、昨季を通して活躍した主力ではありません。GKの岡田大の12試合出場が最多です。監督のピポ(アルゼンチン人)も新任です。ただ、11人中4人が群馬県出身でした。また、サテライト的な位置づけの創造学園大学サッカー部からトップチームに昇格した選手も複数います。こういった点は、地味ながらもクラブの魅力になりえると思います。
 ちなみに昨季リーグ戦33試合に出場し、主将も務めた貞富信宏(元ベルマーレなど)は今季、格下の北信越リーグ、長野パルセイロに移籍。29日の松本山雅戦では勝利に貢献しました。また、かつてFC東京で活躍し、05年から同クラブに在籍していたアマラオは4月末に引退発表をしました。
 現在、アルテにはU-12、U-15、女子チームがあります。今年からU-18も始動しました。フットサルコートの運営にも参画しています。失敗を糧に、地道に長い目でJリーグを目指していこうという意気込みが感じられます。
 ただ、マスコミの応援が足りません。「Jを目指すクラブ」のある都市の中で、例えば栃木、長野(松本)、長崎、岐阜などに比べると、地元マスコミの報道が少なすぎます。自治体がサッカーを利用した地域活性化に積極的にならないのは“もったいない”と思います。高崎は歴史的に「交通の要所」です。高崎駅前は現在、再開発ラッシュです。新幹線効果でしょうか、大「ベッドタウン」になりそうな雰囲気です。
 そんな町で、アルテは「高崎の顔」になりえると思うのですが……。もし、Jリーグに上がれば……、例えば、浦和レッズやアルビレックス新潟のファンにとてってはアクセス抜群です。

PS 今まで紹介した「Jを目指すクラブ」の動向

北信越リーグ
4月29日 第4節
松本山雅FC 0-1 長野パルセイロ
JSC 2-1 ツエーゲン金沢
ヴァリエンテ富山 0-3 フェルヴォローザ石川・白山FC

長野パルセイロが4戦全勝で1位。松本山雅とツエーゲン金沢はともに3勝1敗ながら得失点差で山雅が2位。ツエーゲンは4位(3位はJSC=ジャパンサッカーカレッジ)。フェルヴォは2勝2敗で5位。ヴァリエンテ富山は4連敗で最下位。今後の注目カードは、5月13日のツエーゲン対山雅、20日のツエーゲン対長野。

関西リーグ
4月28日 第3節
FC Mi-Oびわこ草津 6-0 ASラランジャ京都

バンディオンセ神戸がアイン食品に敗れたため、3連勝のMi-Oが単独首位。今後の注目カードはバンディオンセ神戸とMi-Oの直接対決(5月26日)

中国リーグ 
4月29日 第3節
ファジアーノ岡山 6-0 JFE西日本

ファジアーノは3連勝で首位。

九州リーグ 
4月29日 第6節
沖縄かりゆしFC 1-0 V・ファーレン長崎

まさかの敗退で、5勝1敗になり、V・ファーレンは2位に落ちる。1位は6連勝の新日鐵大分。ニュ-ウェーブ北九州は、試合ナシ。今後の注目カードはNW北九州対V・ファーレン長崎(5月19日)

JFL
4月29日 第8節
栃木SC 0-1 FC岐阜

FC岐阜は7勝1分けで単独首位。今後の注目カードは、3位(勝ち点差3)のロッソ熊本対FC岐阜(5月20日)。

<写真>高崎名物”だるま”。高崎駅名物”だるま”弁当にもアルテバージョンを作ってほしいものです

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