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南アフリカW杯便り

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日本を熱烈に応援する南アのタクシー運転手

[6月26日午前3時@ヨハネスブルク]

 デンマーク戦の歴史的勝利から一夜明けた25日、勝利の余韻に浸る間もなく、ラステンバーグをあとにし、ヨハネスブルクに戻りました。そのまま、すぐにプレトリアへ移動。夜のスペイン対チリの試合を取材し、先ほどヨハネスブルクのホテルへ帰ってきました。

 今回の移動はすべてタクシーでした。以前のコラムで南アフリカの航空事情について書きましたが、今回はタクシーについて。南アフリカにはもちろん、バスや鉄道など公共交通機関もありますが、治安の問題などもあり、まだ一度も利用していません。

 タクシーと言っても、“流し”のタクシーを止めるわけにはいきません。基本的にはホテルのフロントで、そのホテルと契約しているタクシー会社のタクシーを呼んでもらうことになります。

 ところが、一度タクシーに乗ると、運転手は必ず自分の名刺を渡してきます。そこには携帯電話の番号が書かれていて、「次はここにかけろ」と言うのです。要はホテルを介してタクシーを呼ぶと、ホテル側にマージンを取られるため、自分の取り分が少なくなってしまうのでしょう。「直接電話して呼べ」というのが彼らの考えです。そんなわけで僕の財布の中には、すでに5枚ほどタクシードライバーの名刺が入っています。

 南アのタクシーは料金メーターがありません(あってもメーターを回す人はいません)。乗るときの言い値で料金が決まります。この「言い値」が運転手によって変わるから困りものです。なんとなくの相場はあるのですが、人によって違う。報道陣の間ではタクシーを利用した人同士で「そっちはいくらだった?」みたいな情報交換が頻繁に行われています。より安いタクシーを利用したいと思うのは当然ですよね。

 とはいえ、そこはW杯。基本的にはかなりの高額料金を請求されます。例えば、ヨハネスブルクのホテルから空港まで片道約30分で450ランド(約5200円)、ヨハネスブルクからラステンバーグまで片道2時間の距離で往復2700ランド(約3万1400円)、ヨハネスブルクからプレトリアまで片道1時間の距離で往復1000ランド(約1万1600円)などなど…。

 南アフリカのタクシー運転手にとっては、まさに「W杯特需」。特に日本の報道陣が金払いの良い“上客”であるのは間違いありません。

 明日はラステンバーグでアメリカ対ガーナの取材ということで、今日ヨハネスブルクとプレトリアを往復してもらったドライバーに、ラステンバーグまでの往復もお願いしました。長距離ドライブにはなりますが、2日間で大金を稼げるとあって、それはもう満面の笑みでした。

 ビクトルという名前のこの運転手は日本代表チームのことも応援してくれているそうです。「Japan must win(日本は勝たなければならない)」。そう力説した彼はきっと、日本が負けたら、お金を落としてくれる報道陣がみんな帰ってしまうと思っているのでしょう。思わず笑ってしまいましたが、そんなよこしまな気持ちであっても、日本を応援してくれるのであれば、それはそれでありかもしれませんね。

(文 西山紘平)

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