遠藤が流した涙
[6月30日24時@ヨハネスブルク]
南アフリカで確かな足取りを残した日本代表が30日午後、南アを後にし、帰国の途に就きました。
とは言え、コラムがすぐに終わってしまうのは寂しい感じ。向こう数日間は雄々しきサムライブルーたちの話をお届けしたいと思います。
6月29日、パラグアイ戦後のミックスゾーン。ほとんどの選手の取材が終わった後も、大勢の報道陣がそこに残っていました。
どうしても聞きたかった選手が、ドーピング検査のため(FIFAは抜き打ちでこの検査を行います)まだ出てきていませんでした。
遠藤保仁です。
飄々としたプレー、飄々とした受け答えが持ち味である遠藤が、パラグアイに敗れて涙を流した姿は、本当に意外でした。
初戦のカメルーン戦から毎試合、応援に駆けつけていた御両親も「保仁が泣いているのを見たのは初めて」と驚いていたくらいです。
そのことを尋ねられると、遠藤は「そうかな。小学生のときは泣いていましたよ。高校でも泣いたことがあったんじゃないかな」と、いつもと変わらぬ飄々とした口調で答えました。きっと、照れくさかったんだろうなぁという印象でした。
面白かったのは、守備的に戦った今回のやり方が定着すると思うかと聞かれたときの答えです。
「どうでしょうね。監督次第ですかね。ある程度この戦いで世界と戦えるということを示せたのは間違いないと思いますけど、監督が代わることによって変わる可能性はあると思います」
きわどい答えだなと思いつつ、この人はきっとチームでも忌憚のない意見を出してきたのだろうと確信しました。
「現役でいるうちは代表は目標ですし、代表の試合で得るものはすごく大きい。しびれる試合をいっぱいしたので、またしたいなと思っています。その気持ちを持ち続けると思います」
30歳にして“初出場”したワールドカップ、遠藤は次に向けて大きなモチベーションを手に入れました。
(文・矢内由美子)