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SAMURAI密着日記

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パラグアイのナイスガイ、バルデズ

[7月3日26時@ヨハネスブルク]

 試合終了の笛が鳴ると、既にベンチに下がっていた背番号18は、ゆっくりとピッチに出て行きました。スペインの決勝点を挙げたビジャから声を掛けられ、ユニホームを交換。そして向かった先には、泣きじゃくるカルドソがいました。

 PKを外し、先制のチャンスを逃した仲間を抱きしめる姿は、6月29日にあった日本戦での光景を思い出させるものでした。

 背番号18とは、日本との試合でPK戦を制してベスト8入りを果たした、パラグアイのFWバルデズです。

 涙の駒野友一に歩み寄り、何かを話しかけていた様子が日本で注目を浴びていると聞き、彼のことを調べてみました。

 1983年11月28日生まれ。出身地のサンジョアンは、首都アスンシオンから240キロ離れた人口1万7000人の小さな町です。パラグアイは今大会の出場32カ国中、GDPが32番目。その中でもサンジョアンはひときわ貧しい村で、パラグアイの女性記者、モレルさんによると、「車も灯りも何もないようなところ」だそうです。

 15歳でパラグアイのクラブに入ったのですが、当時はスタジアムの周辺を寝床にするホームレス状態。ところが01年にドイツに渡り、ブレーメンで活躍したことで、その名が知られるようになりました。

 06/07年からドルトムントに在籍しています。ドイツリーグでも対戦経験のある長谷部誠は「ハードワークしてたくさん走るFW。すごくいい選手です」と評していました。

 家族はドイツ人の奥さんとお子さん2人(女の子と男の子)です。モレル記者は「彼はたとえ0-5になってもファイトする。ナイスガイで、国では一番人気のある選手です」と絶賛します。

 やはり気になるのは、駒野に何と言ったのか。モレル記者に聞くとパラグアイではその話題は出ていなかったそうで、「サッカーにはこういうこともある。再び強い気持ちを取り戻せと言ったんじゃないかしら」とのことでした。

 残念ながら真相は依然謎です。けれども、史上初のベスト8という歓喜に沸き上がる中で敗者を思いやることのできる心の持ち主ですから、きっと素敵な言葉を駒野に送ったのでしょうね。
(文・矢内由美子)

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