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南アフリカW杯便り

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Brazil is calling you.

[7月12日午前10時@ヨハネスブルク]

 31日間に及んだW杯南アフリカ大会は、スペインの初優勝で幕を閉じました。6月11日、南アフリカ対メキシコの開幕戦から数えること64試合目。数々のドラマを生んだ大会は8万4490人の観衆が見守る中、フィナーレを迎えました。

 4年に一度のサッカーの祭典。個人的には、生でW杯の試合を観戦したのは98年のフランスW杯以来でした。当時はまだ学生で、チケット騒動に巻き込まれて日本対アルゼンチンの試合を見ることはできませんでしたが、クロアチア戦を含む4試合を現地で観戦し、今だにチケット問題には複雑な思いもありますが、すべてをひっくるめればいい思い出です。

 日本と韓国で共催した02年大会が行われたのは社会人1年目のとき。とあるスポーツ新聞社の新入社員として、パブリックビューイングを取材したり、スタジアムの周りで試合前後のサポーターの声を拾ったり、いわゆる“周辺取材”に追われた1ヵ月でした。

 そして4年前のドイツ大会。当時もスポーツ新聞で働いていましたが、“国内居残り組”としてテレビで夜通し試合を観戦し、現地の記者が書き切れない試合の原稿をひたすら書き続けました。当時は千葉の担当だったこともあり、日本代表の帰国会見で川淵三郎キャプテンが「あ、オシムって言っちゃったね」と発言して以降は、千葉のクラブハウスがあった市原・姉ヶ崎、合宿地の岐阜・飛騨古川で朝から晩までオシム監督に張り付く日々。そのため、決勝トーナメントの試合はほとんどリアルタイムで見ることができませんでした。

 そして、今回の南アフリカW杯。前の会社を辞め、ゲキサカで原稿を書かせてもらうようになってから2年余り。幸運にも現地でW杯を取材する機会を与えてもらいました。

 12年ぶりに生で観るW杯。そして、記者として初めて取材するW杯。日本戦4試合を含む19試合を取材し、あらためてW杯が特別な大会であることを思い知りました。

 国の誇りを背負った選手の意地と気迫のぶつかり合い。1つのゴールが生み出す歓喜と絶望のコントラスト。母国の勝利に沸き、敗戦に打ちひしがれるサポーター。大会が進むにつれ、数多くのチームが去り、サポーターも帰国していきました。その中で最後まで残ったスペインとオランダのサポーターの姿はどこか誇らしげで、うらやましくもありました。世界中を熱狂させるサッカーの魅力のすべてが、この1ヵ月間につまっていました。

 「Brazil is calling you(ブラジルがあなたを呼んでいる)」。南アフリカでは、すでに4年後のブラジルW杯に向けたキャンペーンが始まっています。“サッカー中毒”となった人々は4年に一度、吸い寄せられるように熱狂の渦に身を投じます。自分もまた、そのひとりです。

 日本代表のスイス合宿から始まった本コラムも今回が最終回です。南アフリカW杯は終わりましたが、サッカーはもちろん続きます。14日にJ1未消化分が行われ、17日にはJリーグが本格的に再開します。僕も週末からJリーグの取材に戻ります。W杯期間中、日本はとても盛り上がっていたと聞きます。その熱がJリーグにもつながっていくことを願っています。長い間、ご愛読ありがとうございました。また、Jリーグでお会いしましょう! 今後もゲキサカをよろしくお願いします。

(文 西山紘平)

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