アメリカ人選手もびっくりの日本の強み
みなさん、こんにちは!1週間の遠征からただいま戻りました澤穂希です。
前回まで日本の強みといえる「ていねいさ」について話してきましたが、今回はいかに日本の練習が「ていねい」か、私がアメリカで直に感じていることをお伝えしたいと思います。
ワシントンで日々トレーニングしていて感じるのは、「練習がワンパターン化してるな」ということです。
その日どんな練習をするか聞いていなくても、チームにずっといると、今日は何の練習をするのか、なんとなく予想がつくようになってくるんです。
ベレーザでプレーしているときはそんなことありませんでした。松田(岳夫)監督のときなどは、「今日はどんな練習をするんだろう」と毎日ワクワクしていたものです。
そういったきめ細かな練習メニューがワシントンではあまり見られません。するとチームが徐々におおざっぱになっていきます。
例えば、ベレーザでは狭い範囲の中に多くの選手が入ってプレスをかけ合う練習があります。
すると、ボールに触れる回数も増えるし、ボールを保持しているときも奪うときも常に動いて、周りと協力しあってサポートをする習慣が身についていきます。
この練習のメリットは、個々では判断力が伸びること、狭い局面なのでファーストタッチの重要性が学べること、そしてチームとして連動する意識が高まることなどが挙げられます。
一方、ワシントンでは同じ練習でもグリッドの広い中での練習をします。
すると選手間の距離が広がるので、狭い範囲のときよりも判断を下すまでに余裕ができますし、サポートもおろそかになりがち。
それでもみんな、持ち前の身体能力でなんとかしてしまうのですが、実戦ではそううまくいきません。
試合で「チャレンジ&カバー」ができていないのです。
味方同士が連動してカバーをするという意識が薄くなると、どうしてもスペースが生まれます。
身体能力の高い選手にスペースを与えれば、その選手が能力を生かす=強みを発揮する機会を与えてしまうことになります。
やはり練習から意識を高め身体に染みつかせていかないと、と思うのですが、チームは気づいていないかもしれません。
なぜか。練習では身体能力でこの問題をなんとなくクリアしてしまっているからなのですね。
日本の女子サッカーは、練習メニューから「ていねい」に組み立てられてる。私はそう思うのですが、チームメイトの中にもそのことに気づいている選手がいます。
レベッカという、昨年WPS(アメリカ女子プロサッカー)のオフ中、2ヵ月だけベレーザの練習に参加していたアメリカ人選手です。
彼女はボールタッチが得意とはいえない選手だったのですが、ベレーザでの2ヵ月を経て戻ってきたらタッチ技術が格段に向上していました。
ベレーザの練習メニューをとても気に入っていて、今でも「日本が恋しい。ファーストタッチをよくするために日本で練習したい」と言っています。
このことからも、世界の女子サッカーの中で、日本がいかに「ていねい」なサッカーを心がけているか、わかっていただけると思います。
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澤選手自身が女子サッカーのすべてを説き明かした自著『直伝 澤穂希』
※本コラムは隔週更新予定です。サッカーをしている女性で澤選手への特に技術的な質問を大募集中。こちらまでお寄せください。