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Jを目指せ! by 木次成夫

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第210回「天皇杯群馬県予選準決勝 tonan前橋対上武大学」
by 木次成夫

群馬県前橋市の暑さは格別でした。13時キックオフ。気温37度(公式記録)。TVで気象予報士が『東京の熱風が行くので、よけいに暑い』と言っていましたが、だとしたら、都市計画を根本的に考え直してほしいものです。例えば、密集地域での超高層ビル建築→エアコン室外機による熱風“撒き散らし”。日本全国、異常気象は致し方ないとはいえ、経済を優先するあまり、人工的に“より暑く”してしまった面もあるわけですから。ましてや、車社会の地方で高齢化が進み“交通弱者”が増えたら……。

●8月22日
天皇杯群馬県予選準決勝
tonan前橋 3-0 上武大学

tonan(となん)は今季、関東1部昇格1年目を5位で終えました。対する上武は昨季、関東大学2部に昇格したものの、12チーム中11位で降格し、今季は群馬県大学リーグ所属。天皇杯予選は、tonanがアルテ高崎に次ぐシードで準決勝から登場なのに対して、上武は1回戦からの参加。3回戦でザスパ草津U-23に、4回戦(準々決勝)で前橋育英高校に、それぞれ2-1で勝って、準決勝進出を達成しました。

[ザスパ草津U-23の現状]
Jリーグのサテライトリーグが廃止されたため、ザスパU-23は今季、群馬県4部に加わりました。リーグ戦は合計8試合のみ。対戦相手のレベルという面でも、Jリーグの“セカンドチーム”に適した環境では、ありません。

[上武大学の守護神は元U-16日本代表]
上武大学GK、比嘉翔平(20歳=3年生、前・沖縄県立美里高校・写真)は06年、U-16日本代表に選出された実績があります。水沼宏太、柿谷曜一朗、廣永遼太郎らU-17W杯で活躍した選手と同学年です。
「(高卒後)Jリーガーになることができなかったら、サッカーを辞めようと思っていたのですが、(上武大学の)コーチが沖縄県出身ということもあり、声をかけてくれました」(比嘉)

[試合総括]
猛暑下、『サッカーの質で勝る』社会人が、『スタミナで勝る』学生に敗れる(あるいは苦戦する)のは珍しいことでは、ありません。その一方で、社会人が『経験の差』を見せつけることも、あります。果たして、30代のベテランが複数いるtonanは、いかに?

上武大学は前半、積極的に動き、ボールを素早く動かすスタイルで健闘しました。中でも、ボールをキープした選手の外側からオーバーラップしたり、ボールを落とさせてクロスを入れたり、サポートの良さが目立ちました。スタンドで応援するチームメイトからは「練習通り!」という声、度々。シュート本数はtonanの半数、4本ながらも決定的シーンも――。また、守備面では比嘉の堂々としたプレーも印象的でした。

しかし……後半、状況は一変。「予想よりも早く、相手の動きが落ちた」(tonanの菅原宏監督)ところを、tonanは逃しませんでした。

≪得点経過≫
50分 1-0 得点:FW反町一輝(23歳=今季加入、前・早稲田大学)
*左SB林田光祐(25歳=今季加入、前FC琉球←神奈川大学←国見高校=平山相太らと同学年)のクロスをダイレクト

65分 2-0 得点:FW大塚俊之(25歳、前・粕川コリエンテ)
*スローイン→パス→後半出場の大塚がファーストタッチをフリーでダイレクト。

67分 3-0 得点:FW大塚俊之
*右SB柳澤宏太(28歳、前アローズ北陸)がGK比嘉の飛び出しよりも一瞬早く、クロス→フリーで無人のゴールにシュート。比嘉にとっては、痛恨のプレー。

終わってみれば、tonanの快勝。後半のシュート本数はtonan=10本に対して、上武=2本。大学生に走り勝った上に、90分の試合運びという面でも『格の違い』を見せつけました。

[エースは早稲田大学5年生]
tonanのFW反町一輝は群馬県出身で、図南ジュニアユースから前橋育英高校に進みました。05年と08年には特別指定選手としてザスパ草津の公式戦に出場した経験も、あります。tonan加入後はクラブ下部組織のスクールでコーチをしながら、「(大学を)留年しているので、就活(就職活動)をしていました。来年からはサラリーマンになります」とのこと。ということは、tonanを1シーズンで去る? いずれにせよ、『クラブ悲願のJFL昇格』に向けて、モチベーションは格別かもしれません。

[国民体育大会→全社]
tonanは群馬県代表として国体予選を勝ち抜きました。国体(1回戦=9月26日)は16チームが参加し、決勝まで4連戦。いわば“仮想”全社(1回戦=10月16日、決勝まで5連戦)と位置づければ、非常に意義があります。また、たとえ数日間であっても、共同生活することは、選手どうしのコミュニケーション強化という面でも効果が期待できます。クラブ運営面で見ると、国体は遠征費や強化費などがサッカー協会から出ることも魅力。いわば「他人の金でチーム強化できる」のですから。ちなみに、「もう、全社の際の宿泊先も決めました」(菅原監督)とか。

[大学教育としてのスポーツ]
近年、スポーツ部活動を強化しつつ、スポーツ関係の個性的な学部(学科、コース)を設けた大学が増えています。上武大学も、そのひとつ。『少子化時代に地方大学(新興大学)が生き抜くための常套策』といえるかもしれません。日本各地、チェックして見ました。例えば、

上武大学:ビジネス情報学部スポーツマネジメント学科
仙台大学:体育学部スポーツ情報マスメディア学科
新潟経営大学:スポーツマネジメント学科
新潟医療福祉大学:健康スポーツ学科
平成国際大学(埼玉県):法学部スポーツ福祉政策コース
作新学院大学(栃木県):経営学部健康スポーツマネジメント・コース
流通経済大学(茨城県):スポーツ健康科学部
桐蔭横浜大学:スポーツ健康政策学部
静岡産業大学:経営学部スポーツ経営学科
東海学園大学(愛知県):人間健康学部スポーツコーチ・コース(スポーツ教育コース)
吉備国際大学(岡山県):社会学部スポーツ社会学科
環太平洋大学(岡山県、今年度天皇杯岡山県代表):次世代教育学部乳幼児教育学科ジュニアスポーツ教育コース
徳山大学(山口県):経済学部ビジネス戦略学科スポーツマネジメント・コース

[試合を全学的イベントにすれば?]
例えば、tonan戦の日、上武大学は『オープンキャンパス』でした。せっかく、スポーツ関係の仕事に就くことを意識した学科があるにもかかわらず、試合を実習として位置付けないのは“もったいない”と思いました。他の学部生や受験生を応援に巻き込んで、全学的イベントにするのもアリだったのでは? 

「人気がない」あるいは「レベルが低い」から面白くないと感じるとしたら、実習としては“逆に”大チャンスとも言えます。ましてや、「地方は退屈」なら、なおさら幸い。壮大な目標(夢)が“ある”ということですから。

<写真>上武大学GK比嘉翔平
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