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直伝 澤穂希 in USA

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楽しいサッカーとは

こんにちは!
先日(9月6日)、誕生日を迎えた澤穂希です。

年齢を重ねるごとにサッカーが楽しくなっているのを感じますが、これからまた1年、大好きなサッカーに明け暮れたいと思ってます!

経験を積むほどサッカーを複雑に考えそうですが、不思議なもので、私の場合は単純にサッカーが好きになっていって、単純にサッカーが楽しくなっていくんです。

今は1年1年をきっちりプレーしていきたい、完全燃焼していきたいと願ってます。

2009年にWPS(アメリカ女子プロサッカー)のワシントン・フリーダムに来てからもうすぐ2度目のシーズンが終わろうとしています。
そして誕生日を迎えて今、改めて思うのは「なでしこジャパン」のサッカーがやっぱりいちばん楽しい!ということです。

アメリカでプレーしていると、身体能力の高さや自己主張の強さといった、「なでしこジャパン」とはまた違う特徴を肌で感じることができます。

例えば昨シーズン、ゴールデンブーツ賞を獲得したマルタ(ブラジル代表/現FCゴールドプライド)。
彼女を見ていると、とにかく周りがよく見えていて判断が早い。
相手がどこから来るか、あらかじめ分かっているのでしょう。
フィジカルやスピードといった身体能力の高い選手が多い中、マルタはプラス視野の広さ、判断の早さという能力も持ち合わせています。
ここまでの選手はこれまで見たことがありません。
おそらく「男子サッカーの世界でもやっていける」、そう思わせるほどのプレイヤーです。

そのようなスペシャルな選手をリーグ戦で間の当たりにする一方、日々の練習ではチームメイトの自己主張の強さに驚かされます。
以前も少し書きましたが、ワシントン・フリーダムにはアメリカ、フランス、オーストラリア、ノルウェー、さらにカナダ、イングランド、オーストラリアに日本とじつに多くの国籍の選手が所属しています。

アメリカ人選手もそうですが、フランス人選手など、自己主張の強さが特に際立ちます。
それはもう、「ちょっと強すぎない?」と思ってしまうほど(笑)。
だから練習中に衝突することもあるわけです。
それがプラスに働く場合もありますけど、マイナスに働く場合もある。
チームとして見ると、コミュニケーションを深めることになる一方で、良くも悪くも振れ幅が大きくなってしまう面もあるんです。

アメリカではより選手個々に目が向く。そう感じます。

その点、なでしこジャパンはよりチームに目が向きます。
日本では「もっと個人能力を伸ばそう」とよく言われます。
もちろん個々のレベルアップは必須ですが、海外という環境に身を置いていると今のなでしこジャパンのよさ、強さも痛感します。

例えば先日U-20女子ワールドカップがありました。
アメリカでも日本戦を中継していて、私はあまり見られなかったのですが、観戦したチームメイトは日本チームを「戦術、技術はほかのどのチームよりも優れている」と評価していました。
正直、U-20の選手たちとはあまり練習したことがないので、分からない部分もありますが、やはり日本の戦術、技術は世界に通ずる長所だということは言い切れると思います。

身体能力や自己主張が前面に出た「個」のサッカーと、技術、戦術をいかした「チーム」のサッカー。
みなさんはどちらがより楽しいと感じるのでしょう?

両方を経験した私は、やっぱり「チーム」のサッカーが楽しいし好き。
みんなで共通認識を持ってカバーしあって、ひとつの「形」を作っていくすばらしさに私はひかれます。
だから、それができている「なでしこジャパン」のサッカーがいちばん楽しく感じるのです。

15歳の時から代表に呼ばれてきましたが、今になってアメリカに渡ったからこそ再確認できたこの気持ちは、私にとってとてつもなく大きな経験なのかもしれません。

▼関連リンク
澤選手自身が女子サッカーのすべてを説き明かした自著『直伝 澤穂希』

※本コラムは隔週更新予定です。サッカーをしている女性で澤選手への特に技術的な質問を大募集中。こちらまでお寄せください。

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