メンタルの不思議、強み。
みなさんこんにちは!澤穂希です。
アメリカでのシーズンを終えて、帰国してから日本の良さを再確認していましたが…、11月にあるアジア大会に向けての合宿が始まりました!
日本のチームワークでアジアの頂点に立つべく、またサッカーに集中したいと思います。
今回は、メンタルについてのお話をしたいと思います。
具体的な技術というのは見ているとわかりますが、メンタルは内にあるもの。選手達がどんな準備をし、気持ちを昂ぶらせて試合に臨んでいるかは知られることの方が少ないですよね。
でも「心技体」という言葉があるように、メンタルは勝負するうえでとても重要な要素です。
例えば試合前。スポーツを経験したことのある方なら少なからずやったことがあると思いますが、私にもルーティーンというか、いつも同じ事をする「習慣」みたいなものがあります。
私の場合、ユニフォームに着替えた瞬間に緊張感が出てきて試合モードに入ります。そして必ずするのはチームメイト、相手チームの選手にケガ人が出ないよう、心の中で祈るのです。
もちろん勝負ごとですから勝ちたい。でもそれよりも、みんなでサッカーを楽しみたいという思いが強いからなのか…、自分でも具体的な動機ははっきりしないんですが、必ずしてますね。そうするとスッと試合に入っていける気持ちに持っていけます。
集中力を高めるのには音楽が欠かせません。
音楽って人の心に凄く響くので大好きです!
アメリカでも大好きな「ケツメイシ」さんの曲は聞いていましたし、最近はファンキーモンキーズさんの歌も聞いてテンションを上げていました。音楽は集中するのはもちろん、リラックスするにも有効なので、サッカーの試合前でなく移動中でも部屋でも聞く感じです。
ここまでは試合前の話、ここからは試合中の話をしましょう。
今までのコラムでも書いてきましたが、サッカーをプレーするうえで、チームの意識、そして仲間の存在はとてつもなく大きいものです。
選手も人間ですから、1人だと常にポジティブな気持ちでい続けることは困難です。
どんなに強気に考えていても空回りしてしまうこともある…。
そんなときメンタルを回復させてくれるのは、やはり「仲間」です!
特に日本のチームだとチームワークというか、まとまってる気が伝わってくる。例えば北京オリンピックの時もピッチ上だけでなくあそこにいたメンバー全員に支えられました。
どうしてそう言いきれるか?
試合に出てる選手だけではなく、ベンチにいた全員が声を出し合ってひとつになっていたからです。
投げかけられる言葉はもちろん、仲間全員の姿が私の背中を押してくれるし、私も押します。
団結力の「強さ」とはそういう目に見えない部分に大きく作用していると実感します。
だからなでしこのチームは大好きなんです!
そして盛り上がった気持ちが極限に達するとどうなるか?
みなさんは経験したことがあるでしょうか?私が思い返してみたとき、1試合だけ「この感覚がそうなのかな?」って思った試合があります。
2004年のアテネオリンピックアジア最終予選、国立競技場での北朝鮮との準決勝(編集部注※それまで対戦成績7連敗中だった天敵・北朝鮮に3-0で快勝し、アテネオリンピック出場権を獲得したなでしこジャパン伝説の試合)です。
あの時は、本当に手術が必要とされるぐらい大きなケガを負っての出場でした…。
そして、あまりの膝の痛みと集中力で試合開始の1発目のプレー以外はほとんど覚えてないんです。
大げさでなく、ホイッスルが鳴った時に試合が終わってた!みたいな感じでした。そのくらいアドレナリンも出ていたのか…、自分の膝のこともいっぱいいっぱいでしたし、「勝たなくてはいけない!」っていうプレッシャーや集中があったのか…。
あれは「思い出せ!」って言われても思い出せない、自分にとってとても特別で不思議な感覚のあった試合でした。
ここまでメンタルの話をしてきましたが、常に同じ精神状態でどの試合でも臨めるようになったのは(まだそこまで言い切れない部分も、自分としてはあるのですが)、敢えて言うならここ3年くらいだと思います。
正直、具体的な時期はわかりません。でも、20歳の時に初の海外挑戦でいろいろな事を経験しました。
壁に当たることもありましたし、たくさんのことを肌で感じてメンタル面も強くなっていったのではないか、やっぱり経験を積むということはそういう面でも必要であり、重要なのではないかな、と思います。
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澤選手自身が女子サッカーのすべてを説き明かした自著『直伝 澤穂希』
※本コラムは隔週更新予定です。サッカーをしている女性で澤選手への特に技術的な質問を大募集中。こちらまでお寄せください。