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バルサ仲本の「うちなー蹴人紀行」

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沖縄から初のJリーグチームを

 11月ももう後半。この時期になりますと放送業界では12月用の番組制作に備え、クリスマスソングや広瀬香美さんの曲をチェックし(別にそれに限っているわけではないんですが)、準備します。スタジオ内では既にジングルベルが鳴り響いていて、気持ちは一気に年末モード。年々感じることなんですが、時の流れの早いこと早いこと! そう思う度、何となく気が重くなってしまう・・・独り身の泣き言といえばそれまでなんですが。

 去る10月7日、沖縄サッカーの未来を築くために立ち上がった「沖縄初のJリーグチームを誕生させる会」の2度目の会見が那覇市内のホテルで行われた。8月に発足したこの会が中心となって実施された署名活動の結果を報告するためです。

 署名活動の内容は、「Jリーグ規格のスタジアムを早期に誕生させるため、工事を求める」というもの。規約ではJ1で15000席、J2では10000の座席が必要と明記されているが、県内には存在しない。加えてピッチサイズ、芝、ナイター設備も不十分。耐震強度の問題もある。

 Jリーグ準加盟規定にある「規約に定める基準を満たすスタジアム」が存在しない今、Jリーグ進出を目的に創設したFC琉球がJFLで4位以内(J2昇格条件)に入ったとしても、昇格することはできない。早急に作る理由がそこにある。

 実はスタジアムの建築構想が生まれたのは今回が初めてではない。かつて沖縄県サッカー協会は「奥武山の社」構想を打ち立て、那覇市の奥武山陸上競技場をサッカー兼用施設として再整備する計画を提唱。そしてFC琉球も「城(グスク)」をイメージしたサッカー専用スタジアムを建設する構想を発表した。しかしどちらも頓挫しました。

 また昨年には中城村長がスタジアム建設にあたり、総事業費100億円を見込んで整備する計画を村議会に提出したものの「住民の合意を得てない中、税の無駄使いだ」とし、否決となった。単独行動でスタジアム構想は出てくるものの、協会・チーム・経済界・そして県民が三位ならぬ、四位一体とならない状況の中、夢は二次元から三次元へと変わることは無かった。

 そんな中、今回誕生した「沖縄初のJリーグチームを誕生させる会」は初めて、四位一体となって誕生した団体として大きな注目を浴びている。協会は子供たちに夢を与えるために、チームはJリーグ昇格のために、経済界は新たな観光資源を開発するために、そして県民は身近にプロのプレーを観るために。計画では、沖縄市にある県総合運動公園陸上競技場(県総)を改修し利用するというもの。これまでのスタジアム構想に比べると、かなり現実的な計画だ。

 会見が行われた当日、1カ月で集めた署名用紙がテーブルに山積みにされ、16万4856人分の民意が集約されていた。当初5万人を目標に掲げていた関係者も「よく集まったね」と目を輝かせ、子供のように無邪気に笑っていた。

 この結果を得て会は沖縄県知事に要請書を提出。「速やかに完成させたい」との回答を得た。また県土木建築部によると、すでに県総の改修実施を計画しており「12月に芝の張替えを行う予定で、スタンドについても改修を検討する」と話している。

 「沖縄からJリーグチームを」

 その実現に向け確かな一歩を踏み出したわけだが、まだまだやらなきゃいけないことはたくさんある。FC琉球のチーム力の向上がそうだ。現在9位は寂しすぎる。チームが強くなければ意味が無い。成績がつくことで人々は理解を示す。来シーズン以降に向け、血の入れ替えが必要だ。

 また、自治体主導で改築させるのもいささか危険。公共の競技場は、プレーする場所であると同時に「見せる場所」であることを強く意識していただきたい。将来を見据えて専門家の意見、そして県民の意見にも耳を傾け、観光都市としていい意味での「商売感覚」を自治体には持ってほしい。

 それにしても、沖縄でサッカーの話を熱く真剣に話す環境が生まれるなんて・・・10年前までは考えられないこと。時の流れは常に早く感じるが、日々進化している。そう考えると年を取るのも悪くない。

[写真]県総の改築実現に向け集まった16万4856人分の署名

(文 バルサ仲本)

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