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ブラジルサッカー通信 by 藤原清美

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"風の子"エウレル、39歳の猛勉強
by 藤原清美

 先週、リオデジャネイロで国際サッカーフォーラムが開催された。94年ワールドカップ優勝監督のパレイラが主催し、監督同士の情報交換の場としてスタートしたこのフォーラムも、今年で7回目。スポーツ医学やクラブ運営、審判、サッカービジネスなど、多岐に渡る内容で、講演や討論会が行なわれている。その会場で、熱心に聴講しているエウレルに会った。

 元ブラジル代表。ヴァスコ、アトレチコ・ミネイロ、サンパウロ、パウメイラスなど、ブラジルのビッグクラブの他、日本でも、ヴェルディ川崎(当時)、鹿島アントラーズでプレーしたエウレル。スピードを武器としたそのプレースタイルにより、両国で“風の子”の愛称で親しまれた彼が、39歳にして、現役引退を発表したのは今年10月のことだ。

 エウレルは22歳の時、ブラジル全国選手権2部のアメリカ・ミネイロでプロとしての経歴を始めた。その古巣が6年前に3部降格して以来、2部に戻れずにいるのを見て、昨年復帰、2部昇格の原動力となった。さらに今季は2部で4位。クラブにとって10年ぶりの1部昇格にまで貢献した。

「アメリカ・ミネイロとの初めての契約の時、僕のパスは、お金ではなくスパイク1足と、ボール1つ、ベッド1台で交渉成立した」と、懐かしい秘話を語るエウレルは、2012年のクラブ創立100周年まで頑張りたかったが、最近は度重なる故障にも苦しみ、「この年齢になると、どうしても思うようにプレーするのが難しくなる。“その時”が来た」と、来年7月の引退を決意した。

 すでに現役生活と並行して、監督のライセンス講座も終了しているそうだが、第2の人生は、所属するアメリカ・ミネイロのディレクターとして、出発することになった。そのため、「セカンド・キャリアも、選手としての経歴と同じように、多くを達成できるプロフェッショナルになりたい。だから、しっかりした準備をするために、勉強に来た」と語るエウレル。

 数々の実務面の講演はもちろんのこと、彼の心に響いたのが、元ブラジル代表キャプテン、カフーの講演だ。テーマはまさに「セカンド・キャリア」。最も好きだった、サッカー選手という人生を手放し、1日のスケジュールも、食事も、金銭面も、すべてが変わる引退後の暮らしを、ユーモラスに披露するカフー。一方で、乗り越えるべきことを乗り越え、自分が新たに取り組もうと決めたことを愛し、情熱を注ぐことだと力強く語る彼の講演は、サッカー選手でなくても、自分の職業への夢を、もう1度思い起こさせ、勇気をくれるものだった。

 講演後、エウレルはカフーと旧交を温めると共に、何やら話し込んでいた。人生の分岐点を前に、猛勉強する彼にとって、得るものの多いフォーラムになったようだ。

[写真]エウレル、12月の国際サッカーフォーラムで

※本コラムは不定期更新です。このコラムの感想をこちらまでお寄せください。

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