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バルサ仲本の「うちなー蹴人紀行」

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「ゆいまーるの心」

 先月、JFLの全日程が終了。FC琉球の2010年シーズンは10位という結果に終わった。14勝14敗6分の勝ち点48。シーズン5年目にして最多勝ち点、最多勝利数、そして最高順位をマークした。

 しかし誰もが納得していない。どんなに最高という言葉を並べても充実感に浸ることはまずありえない。Jリーグを目標としてきているのだから、毎年、優勝争いをするようなチームでなくては。悲しいかな、琉球と同じシーズンにJFLに加入した熊本、そしてそれ以降に入った栃木・愛媛・岐阜・岡山・富山・北九州・鳥取はもうJへと巣立っていってしまった。ついには来シーズン、Jを目指すチームとしては一番長くリーグに在籍するチームとなる。年月は残酷までにも県民の熱意を冷まし続けている。

 JFLに昇格した初年度は平均3000人の入場者数を動員、リーグ屈指の数を誇っていた。しかし現在は1000人を超えるのがやっと。体育館で行われるバスケ(bjリーグ)の方が客入りが良い。確かに沖縄はバスケの文化が根付いているし、bjリーグで優勝できる力を保持している。ただ、強い弱いだけで観客数が上下動するわけではない。現にFC琉球は今年、これまでにない成績を残し成長の跡を見せた。が、観客数は過去最低だった。この現実は重く受けとめなくてはいけない。

 ところで沖縄には「ゆいまーる」という言葉がある。「助け合い」を意味するゆいまーるは、県民性を表す言葉としてよく用いられる。沖縄県民は、人と人とのつながりをとても大事にする。家族、親戚、隣組、友達など。チームはこの県民性を理解する必要がある。選手はもっとファンとの距離を縮めるべきだ。特に子供たちと。

 それは何故か。沖縄には「うちなーんちゅ(沖縄の人)」と「やまとぅーんちゅ(内地の人)」という言葉が存在し、子供達はやまとぅーんちゅに対しコンプレックスを持っている。だから永井秀樹のような知名度のある選手と言えど、接するチャンスがなければ自ら寄ってくることもないし、全く興味を示さない。目標とする選手がいないチームを誰が応援するだろうか。だからこそコミュニケーションを図ることは必要不可欠なのだ。

 積極的に行うことでこのような期待が生まれる。選手は練習後、各学校でスクールを開き、プロの技を体感させる。それを見た子供達は好奇心を持ち、身近に接してくれた憧れの選手見たさに競技場へと足を運ぶ。もちろん子供一人だけでは行かせられないので親がついて行く。そして祖父母も孫の喜ぶ顔見たさに競技場へと足を運ぶ。運動会や彼岸、披露宴などに多くの家族親戚が集まるように、ゆいまーるが存在する沖縄ではよくある光景だ。

 また試合を見て心の琴線に触れるようなことがあれば、今度は他の人達に対して観戦を薦めるようになる。ネットワークは更に広がる。伸び悩む観客動員。しかし県民性を理解することが解決への糸口となるだろう。観客が増えることでチームの存在意義も高まり、いつかは郷土愛として文化となる。決して無茶な話ではない。

 クラブチームは子供達のためにあるもの。そして大人はそのチームを守る義務がある。関わる人それぞれが「ゆいまーる」で結ぶことによりアイデンティティが生まれる。今、子供たちの力が必要だ。さらなる発展を築くために。

(文 バルサ仲本)

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