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Jを目指せ! by 木次成夫

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241回 地域&県リーグ「合同セレクション」
by 木次成夫

地域リーグ所属の12クラブと、県リーグ所属の1クラブが集った『合同セレクション』が1月30日に兵庫県内で開催されました。

主催はNPO法人アミティエ・スポーツクラブ(トップチームのアミティエSC京都は昨季関西2部2位。今季1部に昇格)。参加選手は約50人。地域リーグでプレーしていた社会人と、今春卒業予定の大学生及びサッカー専門学校生が主流で、前・所属が“JFL以上”の選手は0人でした。

●視察クラブ(カッコ内は昨季のリーグ成績)

福島ユナイテッドFC(東北1部2位)
アンソメット岩手八幡平(岩手県4部1位→今季3部昇格)
Y.S.C.C.(関東1部1位)
サウルコス福井(北信越1部5位)
アルティスタ東御(北信越2部1位→今季1部昇格。東御は「とうみ」と発音。長野県の東御市がホームタウンです)
shizuoka藤枝MYFC(東海1部1位)
FC鈴鹿ランポーレ(東海1部4位)
奈良クラブ(関西1部4位)
ディアブロッサ高田(関西2部3位)
FC大阪(大阪府1部1位)
デッツォーラ島根(中国2位)
ヴォルカ鹿児島(九州2位)

セレクションは11対11の試合形式で、プレー後は即、『勧誘タイム』。選手はアンケート用紙に感想(自己PR、希望チームなど)を記入してから帰路へ。様々なクラブが揃ったため、選手たちは「何を重視するか」悩んだかもしれません。以下、気になったクラブを挙げると……。

[県3部としては異例のアンソメット]
最も積極的に選手へ声を掛けていたのは、アンソメット岩手八幡平でした。09年に発足したクラブで、ホームタウンは岩手県八幡平(はちまんたい)市。リーグ所属1年目の昨季は、岩手県4部を圧倒的な強さで制覇。『地域リーグ未満』しか出場できない全国クラブチーム選手権も優勝。つまり、県4部ながらも、『都府県リーグ以下では日本一』になったということになります。

クラブ代表者が温泉宿泊施設を経営していることもあり、選手の待遇も異例です。居住環境は保証されている上に、室内練習場などの環境も充実。栄養費など金銭的補助のある契約も“ありえる”他、「たとえ、仕事とサッカーの両立であっても、できる限り、選手の負担を軽減したい。日々の食事提供なども考慮しています」(丸山富洋監督兼選手)。

とはいえ、『今季は県3部』という状況は、声を掛けられた選手にとって、悩み所だったようです。岩手県リーグが『飛び級』を認めれば幸いですが、例えば今季、東北2部に昇格するガンジュ岩手は、毎年、圧倒的な強さで昇格を重ねて、現在に至りました。

ちなみにアンソメットは昨季のリーグ戦10勝0敗、119得点0失点。際立って強いチームの存在は、対戦相手も面白くないでしょうから、『飛び級』を認めた方が、お互いのためだと思いますが……。

[生まれ変わったヴォルカ]
『Jリーグを目指す』クラブとして、最も勢いがあったのは03年(九州2位)。その後、経営難に陥るなど、停滞していた時期もありましたが、再び、上昇気流に乗りつつあるようです。セレクションは、昨年末に加入が発表された前田浩二氏(元・横浜フリューゲルスなど)が視察。いただいた名刺には、

2014年Jリーグ参入を目指します!
ヴォルカ鹿児島
GM(兼ヘッドコーチ)
前田浩二


と――。昨季はHOYOアトレチコ・エランに次ぐ2位。現状としては「選手全員がアマチュア」(前田氏)ということですが、将来性という観点で、魅かれる選手は多いかもしれません。

近い将来、フリューゲルス時代のチームメイトでもある薩川了洋さん(長野パルセイロ監督)との対決が実現すれば……。そんな妄想も膨らみます。

[仕事との両立で“飯が食える”デッツォーラ]
旧称、セントラル中国。07年の中国リーグ2位(全国地域リーグ決勝大会一次ラウンド敗退)を頂点に、その後は停滞したものの、昨季はレノファ山口に次ぐ2位。選手はクラブ代表が経営している会社の契約社員として派遣業務に就くのが原則(自分で独自の仕事を探すのは自由)。社員寮(選手寮)も完備しているため、引越しの手間がかからないのも魅力です。

[子供指導との両立で“上を目指す”アミティエ]
06年に京都4部参戦。その後、順調に昇格を重ね、09年2部1位。1部昇格も決めたものの、関西1部最下位の『FC京都BAMB1993』と合併し、昨季、関西2部でリスタート。京都1部所属のチームは『セカンド・チーム』として活動継続中です。サッカー・スクール運営が主な業務のクラブで、選手は原則的にスクール・コーチ兼任。午前練習で、午後はスクールで指導。つまり、指導とプレーの両立ながらも、『サッカーで飯が食える』わけです。

[地域密着していないスポーツ施設]
今回の合同セレクションは兵庫県立三木総合防災公園陸上競技場で開催されました。バックスタンドにも固定席が整備されています。同公園には天然芝2面と人工芝1面の球技場の他、野球場など様々な施設が揃っています。

初めて訪れたのですが、広大な公園と、豪華な施設に唖然。最寄り駅から徒歩で約1時間。公共バスの便があるものの、1日数本程度だけです。三木に限らず、なぜ、日本国にはアクセスが悪い競技場が多いのか、改めて疑問に感じました。

総合的都市計画という概念が欠如していることも、『地域密着していないスポーツ施設』が多い要因だと思います。そして、今や大問題は、国家が財政危機にもかかわらず、各地のスポーツ施設(教育施設)維持のために、多額の税金が使われ続けるということ。「子供の夢」をアピールしつつ、子供が気軽に楽しめない施設のために――。

そもそも、「地方は自動車文化」ということは理解できますが、やがて高齢者になり、自動車が運転できなくなれば、どうなるのか? ニュータウンも、やがてはオールドタウンになります。

日本各地で『上を目指す』サッカークラブが増えている今こそ、都市作りとリンクした本質的な「100年構想」をすることが大事ではないでしょうか? 

[写真]三木総合防災公園陸上競技場。例えば、滋賀大津市の皇子山、町田市の野津田よりも、はるかに豪華です。ここをホームにした「上を目指すクラブ」がないのは、もったいない!!

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