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バルサ仲本の「うちなー蹴人紀行」

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「輝きを再び放つとき」

 ご無沙汰しています。3ヵ月ぶりのコラムの更新です。滞ってしまい申し訳ありません。いろいろありまして・・・(苦笑)。本業に費やす時間を頂いておりました。ただその間、サッカーに関わる新たな経験をしてきましたので、追々この中でご報告できたらなと思っています。

 そんな私のことはさておきまして……JFL参戦6シーズン目のFC琉球。昇格して以来、最も活きの良い戦いを見せています。6月25日、前期最終節の横河武蔵野FCとのアウェー戦ではFW高橋駿太の2ゴールにより2-1で競り勝ったFC琉球。勝ち点を21に伸ばし、首位に立ちました。

 また今節、ホンダロックSCが引き分け、カマタマーレ讃岐が敗れたことにより、リーグ戦11試合終了時点で上位2チームに与えられる天皇杯のシード出場権も獲得しました。JFL枠での出場は今回が初めて。結果、今年は沖縄から2チーム天皇杯に出場する権利を得たことになります。これは沖縄サッカー界初の快挙です。

 2003年に創立したFC琉球。過去に4度、天皇杯に出場しています。県1部リーグに所属していた2004年、初出場を果たしたチームは、県勢初の3回戦まで進出。当時J2のモンテディオ山形を相手にがっぷり四つの展開に持ち込んだFC琉球は、延長戦の末に2-3で惜敗するものの、期待以上の結果を残したことで後のFC琉球フィーバーが巻き起こるきっかけとなりました。

 翌年も出場したチームは、前線にFW藤吉信次(現ギラヴァンツ北九州U-18監督)と、現在もチームに所属するMF永井秀樹を擁し、細かいパス回しと全員攻撃で快進撃を見せ、3回戦まで進出。京都サンガに0-3敗れたものの、県内におけるFC琉球の存在、そして選手の自信は揺ぎ無いものとなり、大きな輝きを見せていました。

 しかし、JFLに昇格してからはその勢いはパッと消滅してしまいます。3年連続で天皇杯出場権を逃すとともに、リーグ戦も14位・17位・16位と低迷……まさに暗黒の時代に突入してしまいます。当時はダメ虎ならぬ「ダメC琉球」と揶揄されたほど……極みだったのは2008年。フィリップ・トルシエが総監督として招かれた初年度。県予選で沖縄大学と対戦したFC琉球は、FW上原慎也(現コンサドーレ札幌)に4ゴールを奪われ大敗。チームがどんなに苦境に立たされながらも何とか保っていた県民のサッカー熱を一気に冷ますきっかけとなり、地元メディアも「負けてもいいから勝ちに行け!」と相矛盾する表現を出してしまう始末……。トルシエが革命を唱え、かつての自民党のようにチームをぶっ壊して活路を見出そうとするものの、気迫・自信を失ったチームは輝きを失くし、負のスパイラルへと陥る。

 そして一歩間違えるとジェンガの様にすべてが崩れてしまうことも……。同じ年、bjリーグの琉球ゴールデンキングスが優勝を果たす快進撃も重なり、県民の関心は移行してしまいました。プロスポーツは「強い」か「魅せるか」、どちらかが必要です。

 うちなーんちゅは「熱しやすく冷めやすい」と言われています。しかしそれは、相手への興味・情熱が消えてしまったから。輝きは自分自身でしか発することはできません。輝きを失ったものから一度離れたら、元サヤに収まることは容易ではありません。

 今シーズン快進撃を見せるFC琉球ですが、ホームの平均入場者数は3000人に満たっていません(公式発表・平均2230人)。JFLでと思う方もいるかもしれませんが、確かにJFLの中では集客があるほうに数えられます。しかし、Jリーグ加盟を目指すチームにとってこの数字は落第点なのです。

 Jリーグに昇格するためには準加盟申請に通る必要があり、様々なハードルを乗り越えなくてはなりません。そのひとつに「観客動員平均3000人以上を達成する」という項目が存在します。スタジアムの建設、自治体の協力、チームの経営体系において解決の見通しがある今、観客動員は最も重要なハードルとなっているのは間違いありません。かつては5000人以上も集めていたチームです。

 元日本代表FW我那覇和樹を獲得しても、永井兄弟が揃って出場しても、チームが結果を残しているのにも関わらず、お客さんがこない。要するに、県民にとってまだFC琉球というチームが「見えていない」ということ、未だ輝きを放っていないというわけです。
 
 しかし、望みは存在します。チームの歴史をゼロから知っている新里裕之監督、彼の経験です。チーム創立初年度は選手として、その後はコーチへと転身、2009年シーズンから監督に就任しました。与那城ジョージ(前ギラヴァンツ北九州監督)の下でコーチ経験を積んだ新里監督。そのせいか、戦術のみならず性格も受け継いだようで、いわば「ハロゲンヒーター」。存在は静かだけど、熱の度合いが高い!また吉澤英生(前松本山雅FC)、ジャン・ポール・ラビエ(元ブルキナファソ代表監督)、そしてトルシエの右腕としても経験を積み、現在に至っている。酸いも甘いも知っているというわけです。
 
 そんな新里監督、見定めているところははるか上にあります。「今、歴史の基礎を作っているところ」。そう話す監督の眼差しはJリーグ昇格という結果だけでなく、沖縄のサッカーの礎を築こうとしています。

 沖縄のサッカーとは何なのか。その答えを見出すことが出来たとき、FC琉球は再び輝きを取り戻せることでしょう。そう、かつて琉球が輝きを見せた天皇杯の結果次第で……。最後に「勝ちたい」「勝つんだ」「勝つ」「勝てば」「勝った!」という勝利五段活用をつぶやき残しておきます(笑)

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