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バルサ仲本の「うちなー蹴人紀行」

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「未来のなでしこ誕生の可能性」

 眠い目をこすりながら書く今回のコラム。油断して目を閉じてしまうこともしばしば……。しかし、まぶたの向こうには、鮮烈な光りを放つ「なでしこ」の姿が! 深夜から早朝にかけ、日本列島が歓喜に沸いた7月14日。今もなお余韻が残っているという方きっといらっしゃることでしょう。

 準決勝当日自宅で観戦した私は、川澄の2ゴール、そして澤の日本歴代ゴール数更新のシーンが画面に映ると、口を枕に押さえつけながら周りに迷惑がかからないよう絶叫しておりました。そして試合終了後、チムドンドン(胸がドキドキするという意味)しつつ、いつの間にか頬に心の汗が……。しかし、窓から射し込む日光に気づいた瞬間、間近に迫る出勤に焦りを覚えながら冷や汗をかく私がいました。

 間近に迫る決勝、当日はいきつけのスポーツバー「カンプノウ」に足を運び、存分に絶叫できればと考えています。ただ気になるのは台風の動向……。頼むからCL決勝の日のように停電だけにはならないでくれ!頼むから……。

 夢と希望を届け続ける日本女子サッカー界。沖縄でも非常に関心が高く「未来のなでしこ」を目指すべく、多くの選手が奮闘しています。

 7月16日から「第29回九州女子サッカー選手権大会沖縄県大会」が開催されます。県内16チームが集結し、トーナメント戦でしのぎを削る一発勝負。中学一年生から出場でき、事実上の沖縄一を賭ける大会として毎年熱い戦いを展開しています。

 今大会注目チームは、今年度の県高校総体を制した「名護高校」。準優勝校の「美里高校」。古豪クラブチームの「琉邦クラブ」。そして成長著しい「ヴィクサーレ・ナヴィータ」と「うないFC」。この5チームが優勝候補といってもいいでしょう。

 名護高校は6月に行われた県高校総体で昨年の覇者、美里高校と決勝で対戦。延長戦の末3-1で勝利し、5年ぶり6度目の優勝を果たしています。豊富な運動量で相手チームからボールを奪取し、100m12秒7の俊足フォワード、島袋瑠意の快速を生かしたカウンター攻撃が持ち味の名護。決勝戦ではその島袋が同点、そして逆転のゴールを立て続けに決め、一躍ヒロインとなりました。

 一方、準優勝に終わった美里高校。しかし、沖縄サッカー界において今一番乗りに乗っているチームといえば真っ先にこの美里が挙げられます。4月に開催された「九州なでしこサッカー大会沖縄県予選」ではノーシードから勝ちあがり、準決勝で名護を4-1で退けると、決勝では連覇を目指す第1シードの琉邦クラブを相手に2-0、優勝を果たします。

 そして、県高校総体を経て名護高校とともに出場した「九州高校女子サッカー選手県大会」では3位の好成績を収め、7月22日から静岡県磐田市で開催される全国大会への出場権を獲得しました。これは沖縄県として2度目の快挙です。

 県内では珍しくパスサッカーを持ち味とする美里の攻撃の核は今年入学したフォワード、仲松叶実。中学時代には全国トレセンにも選ばれた経験もある仲松は中学時代、うないFCのメンバーとして出場した「全日本女子ユース(U-15)フットサル大会」で準優勝に導く原動力として活躍。美里高校でもすでにエースとして存在感を示しています。

 1991年に沖縄初の女子サッカーチームとして産声をあげた「琉邦クラブ」。ディフェンディングチャンピオンとして出場する琉邦は、高校・大学・専門学校・社会人を受け入れ、嘉数飛鳥といった元U-16日本代表をも輩出しています。

 2007年まで大会11連覇を果たし、黄金時代を築き上げてきた琉邦。しかし近年はヴィクサーレやうないFCといった新興チームの台頭、そして4月の大会では美里高校にも敗れるなど、かつての常勝チームにも陰りが見え始めてきています。各年代、全国でも活躍したプレイヤーが多く所属する琉邦クラブ。古豪の復活なるかが注目です。

 ヴィクサーレ・ナヴィータは、元京都サンガ監督の加藤久氏が立ち上げたユースチーム「ヴィクサーレ沖縄フットボールクラブ」の女子チームとして2006年に発足。小・中・高までの一貫指導体制で活動し、近年では各カテゴリーにおいて県代表の常連チームとして頭角を現すようになっています。

 昨年の大会では18歳以下の年代で臨み、琉邦クラブに敗れるものの準優勝。まだ手に出来ていない女王の座まであと一歩と迫ってきています。

 そして最後は、2003年に発足した「うないFC」。日本サッカー協会公認の資格を持ったスタッフが指導し、全国大会出場を目指した活動を展開しています。年齢制限はないものの、主に中学生プレイヤーが多く所属しているのが特徴。先ほど紹介した美里高校の仲松も昨年まで在籍し、過去に彼女を含めた5人がナショナルトレセンに参加。そして2006年にはゴールキーパーの金城加代子(現うないFC選手兼GKコーチ)がU-16日本代表に選出されています。

 県内では各年代の大会で無類の強さを誇り、2008年には大会11連覇中の琉邦クラブを決勝で破り初優勝。また昨年は全日本女子ユースフットサル大会で準優勝という結果を残し、全国の舞台でも名を轟かせています。

 この5チームを加えた全16チームで行われる「九州女子サッカー選手権大会沖縄県予選」。7月16日(土)に1回戦、17日(日)に2回戦、18日(月)に準決勝が行われ、沖縄ナンバーワンチームを決める決勝は8月28日(日)に開催されます。

 ビーチサッカー日本代表監督を務めるラモス瑠偉氏は「沖縄の選手は独特のリズムがある」と話します。今沖縄には多くのチームが凌ぎを削り、女子サッカーという文化が確立しつつあります。その環境から選手それぞれの個性が磨かれ、県外にはないラテン的なリズムが沖縄で生まれる。それが世界の舞台で花開く瞬間、そう遠くないように感じます。

 未来のなでしこ誕生の可能性を秘める沖縄。ここを舞台にまもなく、プライドをかけた女性たちの熱い戦いが始まります。

[写真]2008年8月に行われた九州女子サッカー選手権県予選決勝「琉邦クラブ対うないFC」の一こま

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