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Jを目指せ! by 木次成夫

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264回 JFL後期2節 讃岐&長野「昇格組の健闘」
by 木次成夫

 JFLではナイターを開催するクラブは少数派です。以下のような理由が考えられます。

(1)メイン・ホームの競技場に夜間照明設備がない(横河武蔵野、栃木ウーヴァなど)。
(2)夜間照明設備があるが、照明使用料を支払う余裕がない(照明使用料を払う価値があるほどの集客が期待できない)。
(3)相手チームの都合(仕事に支障がないよう、休日中に帰宅したい、など)。
(4)運営に関わるボランティアスタッフを確保しにくい。
(5)節電。

 もちろん、ナイターの方が質の高いプレーを期待できます。ただ、過酷な条件下の消耗戦には、ナイターとは違った面白さがあります。

●7月9日 JFL後期2節
横河武蔵野 0-1 カマタマーレ讃岐

[得点経過]
90+3分 0-1(讃岐:MF李賢珍=24歳=今季加入、前・江陵市庁/韓国)
*右からのクロスをGKがパンチング→逆サイドに流れたボールを左SB雨羽良輔(27歳=今季加入、前ソニー仙台)がクロス→李がドンピシャのヘッド。

[試合総括]
 15時キックオフ。気温33,6度(公式記録)。どちらかというと守備力に比べると得点力が課題のチームどうし。消耗戦の末に引き分け濃厚と思いきや、劇的な結末に――。横河守備陣が崩壊したというよりは、カマタマーレが出来すぎ。勝利への執念、高度なテクニック、チームの連動性が土壇場で奇跡的に合致したスーパー・ゴールでした。

[カマタマーレ大健闘の要因]
 後期2節終了時点でカマタマーレはSAGAWA SHIGAに勝ち点2劣る2位。昇格1年目ながら、就任2年目の北野誠監督のもと、『2年目の熟成』を感じさせるサッカーを実践していることが、好成績に結びついていると思います。横河戦のスタメンで、今季加入選手は5人。FW西野泰正(28歳=今季加入、前・京都)をクサビに使い、サイドアタックを多用するサッカーは、一見して、『昨季の進化形』。その上、昨季までは主力MFだったものの、今季は控えが多かった吉澤佑哉(25歳、前・鹿島)が右SBで活躍したり、今季加入の李が“慣れない日本で”結果を出したり――。選手掌握術にも定評がある北野監督らしい“流れ”です。

[消耗戦に勝つ方法]
 試合後、北野監督に猛暑対策を問うと、答は「相手を走らせて、消耗させるサッカーをすることです」。つまり、自分たちのリズムで試合を進める方が、相手のプレーへのリアクションで動くよりも疲れないということであり、一見『省エネ』のカウンター狙いが有効とは限らないという意味。そういう観点では、李を含めてサイドアタックが得意な選手が多いことも、効果的な猛暑対策と言えるでしょう。

[15時キックオフの意味]
 カマタマーレは今回の東京遠征に際して、往路は飛行機、復路は新幹線を利用しました。経費削減も大事な中、格別の配慮かもしれません。例えば、6月18日(土)の前期16節、アウェーのV・ファーレン長崎戦は、「行きは大阪から福岡までは飛行機でしたが、帰りは長崎から高松までバスでした。休憩も入れて10時間くらい。今までで一番キツかったです」(選手のひとり)。

 今回、復路を新幹線にしたのは、羽田発高松行きの最終便(19時45分発)よりも、クールダウンや武蔵野からの移動に余裕が持てるから。例えば、東京駅20時30分発でも、岡山経由で高松に帰ることが可能。見方を変えると、15時キックオフという設定は、13時キックオフよりも猛暑対策になる上に、試合同日深夜帰宅が可能な点で、良い意味で妥協点だったということです。

[真夏の正念場]
 今後、JFLは震災の影響で延期になっていた前期1~6節までの代替開催も加わり、厳しい戦いが続きます。例えばカマタマーレは、以下2試合までが目先の正念場です。

後期6節、8月7日、(A)対ブラウブリッツ秋田(15時KO)
前期4節、8月10日、(A)対アルテ高崎(14時KO)

 香川県からのアクセスを考慮して、「秋田戦後は香川に戻らずに、アルテ戦に向けた調整をする予定」(カマタマーレ関係者)とはいえ、中2日で猛暑には定評がある群馬県(会場は前橋市)――。まさに消耗戦です。

●7月10日 JFL後期2節
栃木ウーヴァ 0-2 長野パルセイロ

[得点経過]
55分 0-1(長野:MF向慎一、26歳=今季加入、前・東京V)
90+3分 0-2(長野:FW富所悠、21歳=今季加入、前・東京V)

[試合総括]
 14時キックオフ。気温34.5度(公式記録)。暑さのピークと疲労を考慮すると、14時キックオフと15時キックオフでは大きく違うと実感した試合でした。もちろん、後者の方がベターです。パルセイロの勝因は元Jリーガーの『個の力』。全体的な出来は良くなかったものの、まずまずの順当勝ちと言えるでしょう。その一方で、ウーヴァは主力の負傷やコンディション不良などでベストの布陣で臨めなかったとはいえ、後半、一気に失速。ペース配分を含めて、戦い方が未熟だった面は否めません。

[パルセイロ流・消耗戦に勝つ方法]
 ボランチでゲームメーカーの土橋宏由樹(33歳、前・松本山雅)が普段よりも引いたポジションでのパス交換を多用していたのが印象的でした。「もっとリズム感を持って、やりたかったんですけど」(土橋)ということですが、(1)ポゼッション率が高まり、(2)視野を広く持てるゆえにチャンスを狙いやすく、(3)相手は焦れる上に、(4)自分たちは体力を消耗しにくい、という点で効果的。ウーヴァ戦を含めて最近のパルセイロは『個の力』に依存しがちなだけに、今後の熟成に期待したいです。

[後期2節終了時点の順位(上位10チーム)]
1位:SAGAWA SHIGA(25)
2位:カマタマーレ讃岐(23)=Jリーグ準加盟
3位:松本山雅(22)=Jリーグ準加盟
4位:ツエーゲン金沢(22)
5位:琉球(22)
6位:長野パルセイロ(21)
7位:V・ファーレン長崎(21)=Jリーグ準加盟
8位:ホンダロック(21)
9位: Honda(21)
10位:町田ゼルビア(20)=Jリーグ準加盟

 カマタマーレの北野監督いわく「我慢の試合が続くだろう」。それは他チームにも言えることですし、試合を観る側も同様でしょう。ただ、猛暑ならではの駆け引きと攻防も「JFLの醍醐味」だと思います。

[写真]カマタマーレ右SB吉澤佑哉(左)と横河FW小林陽介(28歳=今季加入、前・松本山雅←熊本←横河←浦和)の攻防

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