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Jを目指せ! by 木次成夫

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270回 全社・東北予選
by 木次成夫

今年の全社(全国社会人選手権)は10月14日から岐阜県で開催されます。各地域予選の中で最も注目していたのは、8月20日から22日まで山形県総合運動公園サッカー場・ラグビー場で開催された東北予選。『リーグ優勝が絶望的な』グルージャ盛岡(東北1部)、『飛び級を目指す』ヴァンラーレ八戸(東北2部)などが、全社出場枠『2チーム』を争いました。

≪東北1部の現状≫
7チームが2回戦総当たり(順位は8月22日時点)
1位:福島ユナイテッド(勝ち点27=9勝0敗)
2位:グルージャ盛岡(勝点17=5勝2分け1敗)
*昨季優勝のグルージャは福島ユナイテッド(以下、福島Uと略)に敗れ、NECトーキンと盛岡ゼブラと引き分け。福島Uとの直接対決が残されているものの、優勝は絶望的。

≪東北2部の現状≫
1位:ヴァンラーレ八戸(勝ち点18=6勝0敗)
*ヴァンラーレは2位ガンジュ岩手との直接対決も制して6連勝中。ただ、東日本大震災の影響でリーグ戦出場を辞退したチームを配慮して、2部から1部への昇格(1部から2部への降格、2部から県リーグへの降格)はナシ。

●8月22日 全社・東北予選3回戦・第1代表決定戦
福島ユナイテッド 1-0 ヴァンラーレ八戸

[1~2回戦結果]
福島Uは1回戦シード、2回戦は秋田カンビアーレ(東北1部)に4-0で勝利。対するヴァンラーレは1回戦でNECトーキン(東北1部)を2-1、2回戦でFCプリメーロ(東北1部、今季リーグ欠場)を6-0で破って、3回戦進出。

[得点経過]
99分 1-0(得点:FW時崎塁、28歳、前ラスティング郡山)
*試合は40分ハーフで、延長戦は10分ハーフ

[試合総括]
リーグ優勝(=地域決勝出場権獲得)の可能性が高い福島Uに対して、全社出場が目標のヴァンラーレ。序盤から、福島Uはスピードなどフィジカル面で勝りまがらも、攻めあぐみました。対するヴァンラーレは堅守をベースに、スピーディなパスワークで対抗。CB照井篤(32歳、元・栃木)を中心にした守備陣は、スピードへの対応で危ういシーンが散見したものの、組織力でカバー。そして、ボールを奪った後は、ボランチ小島暢明(写真=24歳、前・国士舘大学)が長短織り交ぜたパスで攻撃を演出。精度の高い左足は地域リーグレベルとは思えないほど、際立っていました。

「(小島は)効いていましたよね」(福島UのFW時崎塁)

実は、08年の天皇杯で福島Uが国士舘に1-4の完敗をした際、国士舘の主力として活躍した1人が当時3年生の小島で、その試合、時崎塁はDFとして出場していました。

決勝点は時崎塁のミドル・シュート。「フリーの選手もいたんですが、(パスではなく)思い切って打ちました」(時崎)。地元の東邦銀行に勤務しながら、福島Uのために戦い続ける28歳は今季も健在。「(今大会は月曜日の)1日だけ有休を取って参加しました。夏休みは全社の時に取る予定です」(時崎)。

シュート本数:福島12本(前後半各5本、延長後半2本)、八戸7本(前後半各3本、延長前半1本)

ヴァンラーレは3連戦の疲労も影響したのは明らか。最後の最後に力尽きたとはいえ、今後に向けて、期待できる内容でした。リーグ規定を変更して「優勝をした際は1部昇格」としてほしいほどです。

[ヴァンラーレ流チーム作り]
以下は、福島U戦のスタメンです。今季加入選手が7人。『上を目指す』チームを作る際のモデルケースとも言えるでしょう。端的にいえば、閉塞気味の社会下で。夢に挑戦する若者を”いかに”活かすか――。

GK山田賢二 (22歳=今季加入、前・国士舘大学、北海道出身)
DF 佐藤邦祥(23歳=今季加入、前・国士舘大学、岩手県出身)
DF成田諒介(22歳=今季加入、前・富士大学=岩手県、青森県出身)
DF照井篤 (32歳、前ガンジュ岩手、元・栃木など、遠野高校卒=岩手県、北海道出身)
DF菅原康平 (23歳=今季加入、前・仙台大学、北海道出身)
MF小島暢明(24歳、前・国士舘大学←遠野高校、青森県出身)
MF新井山祥智(26歳、前・八戸大学、青森県出身)
MF岩崎大輔(22歳=今季加入、前・国士舘大学、山梨県出身)
MF高橋太樹(22歳=今季加入、前・道都大学、北海道出身)
FW先崎勝也(24歳=今季加入、前・国士舘大学、神奈川県出身)
FW三田和典(26歳、前・八戸大学)

地元出身の“ファンタジスタ系”新井山主将と小島を軸に、東北・北海道に縁がある選手が多いのも特徴です。国士舘大学出身が多いのは、山田松市監督が同大卒で同大サッカー部指導歴もあることが関係しているようです。もちろん、選手どうしの“つながり”もあるでしょうが……。

●8月22日 全社・東北予選3回戦・第2代表決定戦
盛岡ゼブラ 0-3 グルージャ盛岡

[得点経過]
34分 0-1(得点:MF西洋祐、28歳、前ソニー仙台)
*FW加藤浩史(27歳、前カマタマーレ讃岐)のクロス→ダイレクト

53分 0-2(得点:加藤浩史)

79分 0-3(得点:加藤浩史)
*MF鈴木翔平(24歳、前・尚美学園大学)のクロス→ダイレクト

[試合総括]
グルージャは序盤こそ攻めあぐんだものの、徐々にペースを掴んで、結果的に快勝しました。勝利の立役者はFW加藤。相手陣内深くまで切れ込むドリブルなど持ち味を発揮して、2得点1アシスト。3点目をアシストした鈴木の突破も効いていました。

シュート本数:ゼブラ4本(前半1本、後半3本)、グルージャ23本(前半9本、後半14本)

今後、チーム浮沈のカギを握るのは、この日のゼブラ戦で見せた、積極的な『仕掛け』だと思います。見方を変えると、危機的状況は『ポゼッションで上回っても勝ち切れない』サッカーから脱皮するチャンスです。

[頑張れ東北]
チームの命運を賭けた試合にもかかわらず、2試合とも観客数は“わずか”30人(公式記録)。平日開催とはいえ、あまりに寂しい光景でした。例えば、Jリーグ・クラブがない福島県、青森県、岩手県は『復興のシンボル』として、福島U、グルージャ、ヴァンラーレなど『Jを目指すクラブ』を支援するのも良い策だと思うのですが……。

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