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バルサ仲本の「うちなー蹴人紀行」

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元アルビレックス新潟で、ビーチサッカー日本代表・河原塚毅インタビュー

 9月1日からイタリアで開催される「第6回FIFAビーチサッカーワールドカップ・ラベンナ大会」。ラモス瑠偉監督率いる日本代表は、今年2月に行われたアジア予選で開催国オマーンを破り、6大会連続でのワールドカップ出場を決めた。

 第1回大会はベスト4、そして前回の第5回大会ではベスト8と世界でも戦えることを証明している日本代表だが、その中でもビーチサッカー界のパイオニアとしてチームを支えて続けているのが、沖縄ソーマ・プライア所属のFP河原塚毅、37歳。アジア予選では8得点を挙げ、得点王に輝いている。アルビレックス新潟から沖縄のクラブチーム「沖縄かりゆしFC」、「FC琉球」を経て、ビーチサッカー界へと飛び込んだ河原塚に、これまでの経緯とワールドカップについて聞いた。

-本題の前にお聞きしたいんですが……風邪ですか?
「8月の代表候補合宿を終えた後から調子が悪くて・・・でも大丈夫ですよ。大会当日までには間に合わせますから(笑)」

-5度もワールドカップに出場しているだけあって、檜舞台には慣れてらっしゃいますね(笑)。ちなみに今回が第6回大会になるわけですが、FIFAの主催大会に5度の出場は日本人最多?
「そうかもしれないですね。2007年の第3回大会の時はすねを骨折したので出られなかったのですが、それ以外は出場しています。ただそういう意味では、ほんとそろそろ結果を出さなくてはいけない。なでしこがチャンピオンになったことで女子サッカーブームが生まれたわけじゃないですか。結果を残すことでみんな興味を持ってくれる。ビーチサッカーを普及させるためにはやはり大きなことをやり遂げて、目立たせないといけない。そう思います」

-アジアにおける日本代表の存在感は非常に大きいように感じますが。
「2大会連続でアジア予選を制覇しワールドカップに出場できたことは、結果的に日本が先頭を走っているということを証明できたと思います。けど世界から見ればまだまだ。どの国も日本を強豪国として見てくれていません。前回はベスト8でしたから、今回はそれ以上が求められているし、それが達成できれば注目度は変わると思っています。一歩一歩成長は感じていますが、もっと飛躍的に強くなりたい。そのためにも今回結果を残して、ビーチサッカー文化の礎を築きたいですね」

-ところで、ビーチサッカーはどのようなプレーが求められますか?
「芝とは異なり、ボールコントロールの正確性に欠けるビーチサッカーでは常に自分の足ですくい上げる『スコップ』と呼ばれる浮き球のプレーが求められます。あと、1チーム5人で戦うことと、フィールドの大きさがコンパクト(縦37m×横28メートル。一般的サッカーグラウンドのおよそ7分の1)なので、常にシュートチャンスが生まれます。10本のパスよりも、10本のシュートを見るほうが楽しいじゃないですか(笑)。そういうシーンが何度も生まれるのがビーチサッカーの醍醐味でもあり、面白いところですよね。海をバックにボレーやオーバーヘッドといったアクロバティックなシーンが生まれ、見ていて飽きないと思います」

-ただ、ビーチという爽やかなロケーションとは裏腹に、フィールドが狭いことで接触プレーも多いし、相手に飛ばされるシーンも多いですよね。
「まぁ、見ている人はそういうところが格闘技っぽくて面白いと言ってくれていますので、これもひとつの魅力なのかなと。あと、引っ切り無しに攻守が変わるので、非常に頭を使いますね。炎天下でのゲームの後は体も頭もぐったりですよ(笑)」

-そもそもビーチサッカーを始められるきっかけは何だったんですか?
「沖縄のクラブチームに所属していた2000年にポルトガルでビーチサッカーの世界選手権があって、出ないかという誘いがあったので出場しました。それがきっかけです。実際プレーしてみて楽しめたし、これからはビーチサッカーも盛り上がっていくんじゃないかなと、そういう予感はありました。その後芝に戻りプレーしていたんですが、一線を引こうかと思った時に、新たなチャレンジというか刺激を求めていく中でビーチサッカーの存在がずっと引っかかっていて、2004年にビーチ専門のチーム『ソーマ・プライア』を立ち上げ、本格的にスタートさせました」

-普段ソーマ・プライアではどのような活動が行われているのですか。
「日本サッカー協会が主催する全国大会への出場、そして所属選手が代表に選ばれるよう日々練習を重ねています。と同時に、ビーチサッカーの普及をチームの理念に掲げているので、沖縄県内数あるビーチを回り、子供たちに参加を呼びかけ、無料のサッカースクールを行っています。沖縄だと冬場でも出来るのでそこがメリットですよね」

-ちなみに所属している選手は全員プロ?
「プロの区切りが難しいのですが……。ビーチサッカーだけでメシが食えているかどうかと言われれば、食えてないです。選手それぞれ、仕事の合間を縫ってチームに参加しています。そういう意味ではプロじゃないかもしれない。ただ僕たちは、ビーチサッカーを専門としたプロフェッショナル集団としての心意気を持って活動しているので、そこはプロ意識を持ってやっています。苦しいこともあるけど、それ以上に喜びの価値は何倍も大きい。これからもそれを何度も感じていきたいし、そうなるためにも覚悟を持って行動しています」

-さて、今回のワールドカップ。結構厳しいグループに入っちゃいましたね
「初戦のメキシコは中南米チャンピオン。2戦目ウクライナはヨーロッパチャンピオン。そして3戦目のブラジルは南米チャンピオン、というか世界チャンピオンですからね(笑)。メキシコとは2008年に対戦しているのである程度戦い方はわかっています。身体的、戦術的に日本と似ているかなと。前線に身長の高い選手がいるんですが、そこをどう抑えるかがポイントになると思います。ウクライナは・・・実際試合を見たことがないので正直よくわからないです。ただ激戦のヨーロッパのグループを1位で通過しているので、油断は絶対しちゃいけないし、気を引き締めて戦いに臨みます。ブラジルとは7月の遠征(ブラジル)で対戦し、2対4で負けましたが、一昔前なら10点以上取られている相手。そのブラジルと接戦できたのは、これまでの経験の積み重ねであり、自信にもなりました。決して勝てない相手ではない。がむしゃらにチーム一丸となって相手のリズムを崩せれば必ず勝機はあります」

-日本代表・ラモス瑠偉監督の印象は?
「まぁ、ほんと厳しいですよ(笑)。でも言い換えれば、僕らに出来ないことに対して檄は飛ばさないだろうし、出来ることに対して出来てないから檄を飛ばされている。そこは選手の落ち度だと思っているので。監督のやりたいビジョンの中で期待に応えないといけないなと。けど、絶妙なところで良いところは良いと言ってくれるし、修正ポイントも教えてもらっているので、その飴と鞭の使うタイミングはスゲーなと思います」

-日の丸を背負う意義は
「ラモスさんの日の丸に対する思いはほんと日本人以上だなと感じます。そしてその思いは選手みんな受け継がれています。また今回、大震災を経験したことで、より一層強く、日本代表としての誇りを感じています。自分のために戦うのではなく、国のために戦う。日の丸を頂点に輝かせたいですね」

-今大会の目標は?
「これまでベスト4が一回、ベスト8が二回という成績を残してきた。次はメダルへのチャレンジだと自覚しています。でも、なでしこが世界一になり、女子サッカーが盛り上がっているのを見ていると、ただメダルを獲るだけじゃダメだなと。僕らも不可能ではない……。絶対優勝して帰ってきます。なでしこのように僕らもビーチサッカーを通して日本に元気を与えたいですね」

 2004年、芝に別れを告げてソーマ・プライアを立ち上げた河原塚毅。この時から始まった世界への挑戦。結果はすぐに出た。翌年の第1回大会、代表チームの過半数をチームから送り出し、見事世界第4位に入った。しかし世界の水準は、ビーチサッカーというスポーツが知られるにしたがって高くなっている。ベスト4の壁も年々ぶ厚くなっている。

 けれども彼は、沖縄の優位性を知っていた。沖縄は日本で唯一、白い砂の上でビーチサッカーが出来る場所。そして世界中のビーチサッカーのピッチは、ほぼすべて白い砂である。
今年もまたワールドカップが始まる。ソーマ・プライアからは6人が代表に選ばれた。

沖縄から世界へ。未知への挑戦が未来を変える。

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