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Jを目指せ! by 木次成夫

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274回 JFL後期8節 松本山雅対アルテ高崎
by 木次成夫

274回 JFL後期8節 松本山雅対アルテ高崎

後期7節終了時点で山雅は8位(勝ち点30)、アルテは16位(同13)。Jリーグ参入条件の4位と山雅の勝ち点差は、3。つまり、山雅は絶対に負けられない状況でした。

しかし、結果は山雅の逆転負け。Jリーグ参入を目指して積極的な補強をしてきたチームが、一般アマチュア・チームに“コンビネーションで崩されて”敗北。山雅にとっては、今季『最悪』どころか、加藤善之監督がGMとして加入した09年シーズン以降『最悪』の結果と評しても過言ではないでしょう。

●9月18日 JFL後期8節
松本山雅 1-2 アルテ高崎

[得点経過]
38分 1-0(得点:山雅MF弦巻健人=加入2年目、24歳、前・東京V←東京Vユース)

43分 1-1(得点:アルテMF益子義浩=加入2年目、24歳、前・国士舘大学←駒場高校)

90+2分 1-2(得点:アルテFW土井良太=今季加入、24歳、前ジャパン・サッカー・カレッジ←新潟シンガポール←神戸)

[試合総括]
接戦とはいえ、山雅のチーム熟成不足は明らかでした。アルテが組織的な“寄せ”からの展開などチームとして連動していたのに対して、山雅は守備陣と攻撃陣のバランスが不安定。ボランチ須藤右介(25歳=加入2年目、前・横浜FC)のパスから、ボランチ弦巻が決めた先制点は、理想的な『押し上げ』でしたが、結果的に単発。チーム全体として、縦にせよ、横にせよ、選手が選手を効果的に追い越す動きは皆無。その上、「3人目の動きが良くなかった」(弦巻)。つまり、アルテが対応しやすいサッカーに終始してしまいました。

≪シュート本数≫
山雅12本(前半7本、後半5本)
アルテ10本(前半6本、後半4本)

山雅は今夏、4人の選手を獲得しました。しかし、この試合にスタメン出場したのはFW船山貴之(24歳、栃木SCから期限付き移籍)だけ。MF大島正博(30歳、前・江原FC=韓国、元・横浜FMなど)は62分に交代出場したものの、共にパフォーマンスは低調でした。

試合後の記者会見で、山雅の加藤監督は補強の成果を問われ、「活性化に、つながっている」と答えました。その通りかもしれません。ただ、レギュラー争いは活性化しても、チーム熟成が進むとは限りません。オプションが増えただけという印象も否めません。

当たり前のことですが、お互いの良さだけでなく、欠点も理解し合うことで、チームワークは高まります。つまり、『新人』起用は、チーム全体のコンビネーション面では、マイナスからのリスタート。それまで熟成したことの一部を捨てるということですから。既存選手のコンバートも『新人』起用と似たようなもの。問題は、いかに短期間でマイナスからプラスに転じるかですが、選手の仕事の都合などで十分な練習時間が取れないチームには、限界があります。

アルテの1点目は、この試合を象徴していたと思います。それまで何度か右サイドからチャンスを演出していたMF白山貴俊(26歳=加入5年目、前・東洋大学←東京Vユース)がクロスを入れ、それまで「スペースが空くので、狙っていました」というMF益子が華麗なボレー・シュート(写真)。

山雅がDFとボランチ間のスペースを狙われたのは、この試合に限ったことではありません。つまり、課題を修正できなかったということになります。

≪アマチュアの潜在能力≫
アルテは試合当日に高崎からバスで松本入りしました。遠隔地は前日移動ですが、近場は当日移動。宿泊費など経費を削減するためです。

選手は全員がアマチュア。例えば、1得点を決めた益子は「飲食店でバイトをしています。僕は試合前日にはバイトをしないようにしていますし、仕事が終わるのは早いですよ。夜9時半くらいですから」。

居酒屋などで24時過ぎまでバイトをしている選手に比べると「早い」という意味です。山雅戦で健闘できたのは、バイト・シフトの遣り繰りと、近場のアウェーという条件も影響したのかもしれません。

≪地域リーグ時代からの因縁≫
「また、土井でしたね」。試合後、北信越1部所属の09年シーズンを知る山雅サポーターが呟きました。同年、優勝はジャパン・サッカー・カレッジ(JSC)で、山雅は4位。JSCとはリーグ2戦2敗。2戦目で山雅の優勝の可能性が消滅。決勝点を決めたのは、2戦とも現アルテの土井良太でした。つまり、今回の決勝点は山雅にとって、「3度目の屈辱」なのです。

[JFL後期8節終了]
Jリーグ準加盟チーム関係の順位は以下の通りです(9月20日時点)。

1位:SAGAWA SHIGA(勝ち点40、21試合)
2位:長野パルセイロ(39、20試合)
3位:V・ファーレン長崎(36、21試合)=J準加盟
4位:町田ゼルビア(35、20試合)=J準加盟
5位:ツエーゲン金沢(35、21試合)
6位:琉球(32、20試合)
7位:Honda(31、20試合)
8位:山雅(30、21試合)=J準加盟
9位:ホンダロック(30、20試合)
10位:カマタマーレ讃岐(30、20試合)=J準加盟

山雅は厳しい状況に陥りました。すでに上位4チームとの対戦は終えています。

振り返ると、山雅は「補強→停滞→危機→劇的展開」を繰り返してきました。この際、苦戦の要因を含めて相互理解を深めるためにも、来季以降を見据えた緊急サポーター・ミーティングを開催するくらいの配慮が欲しいところです。また、4位以内は『他力』本願でも、観客増は『自力』で可能。目標の「平均観客数7000人」を大幅に上回る記録達成に期待しています。
 

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