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Jを目指せ! by 木次成夫

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276回 地域決勝展望その2 東京23FC
by 木次成夫

10月15日から19日まで岐阜県で開催された全社(全国社会人選手権)は、東京都1部リーグ所属の東京23FCが優勝を達成しました。準優勝はSC相模原で、3位決定戦はshizuoka.藤枝MYFCが愛媛FCしらなみに勝利。東京23は全社枠で地域決勝(全国地域リーグ決勝大会)出場権を獲得し、同大会“最後の1枠”は、『前年度社会人連盟登録チーム数が多い順より巡回』という規定で、関西1部2位のバンディオンセ加古川へ。また、“しらなみ”の出場辞退により、黒潮FC(四国2位=高知県)の参加が決定しました。


●10月19日 全社・決勝
SC相模原 0-1 東京23FC 

[得点経過]
68分 0-1(得点:田村聡、22歳、前・神奈川大学)

[試合総括]
5日連戦の5日目。疲労ゆえか、試合内容は低調でした。相模原はFW斎藤将基(31歳、前・沖縄かりゆし、元・東京V)、東京23はFW山本孝平(25歳、前・水戸)、共にエース的存在が欠場(累積警告)したことも影響したのでしょう。『格上』相模原はリズム感に欠け、パスワークも単調。その一方で、『格下』東京23は堅守速攻狙いで粘るので、精一杯。ギリギリの攻防、あるいは消耗戦とも言えますが……。

≪シュート本数≫
相模原:7本(前半3本、後半4本)
東京23:3本(前半1本、後半2本)

決勝点は連係ミスが発端でした。東京23GKが蹴ったボールに対応すべく、相模原GKが前に出たものの、東京23MF田村が先に奪って、無人のゴールへシュート。数少ないチャンスを逃さなかったのは、モチベーションの高さゆえか? 全社は勢いが重要な大会だと、改めて痛感しました。


≪東京23・スタメン≫
GK斯波薫(28歳、前・浦安ジュニアSC、元アルテ高崎)
DF中山友規(23歳、前・ガイナーレ鳥取←駒澤大学)
DF伊藤龍(24歳、前ジェフリザーブズ←駒澤大学)
DF山村和士(23歳、前・拓殖大学)
DF天野徹(22歳、前・専修大学)
MF安東利典(28歳、前・横河武蔵野FC)
MF猪俣聖哉(23歳、前・亜細亜大学)
MF山下亮介(22歳、前・福島ユナイテッド)
MF田村聡(22歳、前・神奈川大学)
MF飯野大造(23歳、前・駒澤大学高校)
FW山本恭平(23歳、前・尚美学園大学)

監督はFC東京などで活躍したアマラオ。また、サブの中には、DF三澤慶一(23歳、前・草津←神戸)、MFマルキーニョ(35歳、前tonan前橋、元・水戸など)、FW岡正道(22歳、前・横河武蔵野←湘南ユース)ら、上のカテゴリーで実績がある選手も――。

チーム発足は2003年。東京都4部からスタートして、06年に1部昇格。今季はリーグ2連覇を達成しました。

[東京23の躍進の要因]
社会人になった後も「サッカーで上をめざしたい」と思う学生は多々います。見方を変えると、『JFL以下』も大卒アマチュアは貴重な即戦力です。ただ、学生にとっては、『Jリーグに近いカテゴリー』が魅力である一方、現実問題として『報酬などの待遇』も重要な問題。では、強豪大学が多い東京都(及び首都圏)のクラブが、地方クラブよりも相対的に好条件を提示すれば……。東京23は、その典型例と言えます。

いわば、カテゴリーは下とはいえ、中小企業(あるいは大企業の子会社)の主軸として上を目指すことと似た魅力もあるのでしょう。近い将来、地方クラブとっては、驚異的存在になるかもしれません。


例えば、CB伊藤龍。東京都出身で、大学4年時は主力としてインカレ(全日本大学選手権)ベスト4に進出した実績があります。大卒後はジェフ・リザーブズに加入したものの、シーズン途中に東京23へ移籍し、今季が2年目。先に加入していた大学時代の同期(山崎健太=大学4年時は背番号10)から誘われたのが“きっかけ”だとか。

アルバイトとサッカーの両立という状況と、結果的に現実になった『ジェフリザ解散』の噂も、選択に影響したようです。現在は、チーム・スポンサー企業勤務で、「サッカースクールで指導をしています。サッカー関係の仕事に就きたいと思っていました」(伊藤)。

今大会、東京23は5試合無失点でしたが、CBコンビを組んだ中山とは、「大学時代、4年間、一緒にやっていました」(伊藤)。つまり、連携が良くて、当たり前。また、チーム全体としては、JFLで100試合以上出場の実績を誇る「安東さんが、まとめてくれています」(伊藤)。実際、学生のノリを残した若手を活かしつつ、引き締めるリーダーシップは際立っています。また、三澤のように、大学生ながらも大学サッカー部に所属しない選択をした選手が複数所属しているのも、東京23の特徴です。

[東京23と東京都への期待]
現在、東京23の練習環境は厳しく、「平日の練習は週3日ですが、(グラウンド外での)走り込みがメインの日もありますし、フットサルコートを利用することもあります」(伊藤)。

東京ならではの悩みと言えるでしょう。今後、東京都には、是非、東京23をケアしてほしいです。J2のFC東京と東京V、そして、JFLの町田ゼルビアと横河武蔵野は本拠が『23区外』。また、強豪が群雄割拠するロンドンなどに比べると、『首都・東京』は“はるかに”サッカー後進地域。そもそも五輪招致以前に、他競技を含めて、世界に誇れる『スポーツの都』を目指すのが先決ではないでしょうか? 

[地域決勝一次ラウンド組み合わせ]
≪A組・福井県開催≫
ジャパンサッカーカレッジ(北信越1位)
Y.S.C.C.(関東1部1位)
バンディオンセ加古川(関西1部2位)
Shizuoka.藤枝MYFC(東海1部1位)

≪B組・兵庫県開催≫
ノルブリッツ北海道(北海道1位)
奈良クラブ(関西1部1位)
福島ユナイテッド(東北1部1位)
SC相模原(JFA優遇措置)

≪C組・高知県開催≫
デッツォーラ島根(中国1位)
HOYO AC ELAN大分(九州1位)
黒潮FC(四国2位)
東京23FC(全社枠)

少なくとも、東京23は抽選運に恵まれました。初戦の黒潮クラブ勝って勢いに乗れば、決勝ラウンド進出のサプライズも“ありえる”と思います。

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